古志広島ズーム句会(2021年7月4日)
第一句座
・矢野京子選
【特選】
やさしさをたたんで落つる花木槿 夏井通江
古書の山愛に迷ふかきらら虫 林弘美
縮緬の風呂敷丸き西瓜かな 飛岡光枝
大瑠璃は歌ふ私は詩を書かむ 石塚純子
髪切虫ひげ邪魔な日のありにけり 斉藤真知子
【入選】
あらなんと箱庭に立つ目覚めかな 城山邦紀
サングラスけふは悪女にもなれる 斉藤真知子
その男うなじ美し宵祭 夏井通江
びは剥けば光の玉となりにけり 夏井通江
覚えなき一冊のある曝書かな 斉藤真知子
荒梅雨や生きてゐるものみな流し 飛岡光枝
今日もまた長茄子を求む故郷の 伊藤靖子
天花粉喧嘩しながら大きくなれ 大場梅子
父の日や丸太のごとき父の腕 安藤文
立花隆ファイルは錆びず黴寄せず ももたなおよ
冷やかに梅雨を愛する心あり 長谷川櫂
恋は夏どこまでが空どこまでも海 長井亜紀
楸邨の硯の海を泳ぎたし 土谷眞理子
・長谷川櫂選
【特選】
むしてくる夜をひそひそと梅雨茸 大平佳余子
死にさうな自由歌へよ貝風鈴 ももたなおよ
大瑠璃は歌ふ私は詩を書かむ 石塚純子
【入選】
あらなんと箱庭に立つ目覚めかな 城山邦紀
覚えなき一冊のある曝書かな 斉藤真知子
堅苦しい挨拶いらぬ夏炉かな 高橋真樹子
口惜しげな虎魚のかほや活造り 矢野京子
山歩きぬれて明るき夏至の雨 石塚純子
足裏を踏んでくれる子麦の秋 神戸秀子
逃れきし信者の島や枇杷熟るる 大場梅子
白団扇睡魔にわれを明け渡す 神戸秀子
病衣より涼しき管が五六本 長井亜紀
夕焼へ帰つてゆきぬ豆腐売 矢野京子
第二句座(席題:炎天、出水)
・矢野京子選
【特選】
この川の何に怒れる出水かな 斉藤真知子
わが人世炎天につぐ炎天ぞ 大平佳余子
炎天に影を失ひ立ちすくむ 城山邦紀
炎天の道をゆかねばならぬかな 斉藤真知子
【入選】
まず足の指よりあらふ炎天下 高橋真樹子
ワクチンの列ながながと炎天下 安藤文
炎暑なりオランダ坂を上り来て ももたなおよ
身ひとつになつてしまひし出水かな 夏井通江
風鈴のしんとしてゐる炎天下 菅谷和子
・長谷川櫂選
【特選】
町すべてゆらりと煮たて炎天や ストーン睦美
湯の町を脱兎のごとく出水かな 城山邦紀
黙々と家飲み込みし出水かな 安藤文
【入選】
ワクチンの列ながながと炎天下 安藤文
一夜さに伊豆山を呑む大出水 大場梅子
炎天に影を失ひ立ちすくむ 城山邦紀
炎天の道をゆかねばならぬかな 斉藤真知子
炎天をさまよふ民の群れいくつ 菅谷和子
炎天をものともせずに京の街 上松美智子
幾たびの出水に耐へなばならぬかな 菅谷和子
子蛙の溺れし屍出水後 米山瑠衣
地球は丸く炎天は限りなく 河本秀也
梅雨出水テレビ画面の泥泥泥 石塚純子
梅雨出水寺も神社も芥かな 米山瑠衣
流されしマスク幾万出水後 安藤文