古志金沢ズーム句会(2021年6月20日)
第一句座
・鬼川こまち選
【特選】
蚊柱のその大きさや政 篠原隆子
過ぎし日は光のなかへ夏帽子 趙栄順
いつそ全て捨ててかからん雲の峰 松川まさみ
太陽の落し子ならん裸の子 趙栄順
夏燕ワクチン接種の列すすむ 近藤沙羅
白山の水脈を利く冷し酒 花井淳
あかあかと反骨の皮パイナップル 玉置陽子
【入選】
長生村の福とどきたる団扇風 酒井きよみ
こきこきと共に古びし扇風機 田村史生
あはあはと水かためてや葛桜 長谷川櫂
月読の曳きこぼしゆく水母かな 篠原隆子
外つ国の教え子何処雲の峰 田中紫春
白南風やタンスに遊ぶドル紙幣 間宮伸子
我ら泣き黙して浮かぶ夏の月 田中紫春
もの狂ふ火柱となり恋蛍 泉早苗
湧水は藻の味したる初蛍 泉早苗
日と月に後は任せて梅酒かな 稲垣雄二
田水張り千の青空千枚田 稲垣雄二
亡き父が端居の端にゐるらしく 趙栄順
夏萩や郡上名代の鮎の竿 篠原隆子
鳳凰も麒麟も雲や梅雨晴間 田村史生
動かざる水の余白や花菖蒲 佐々木まき
打水や白山の風通ひける 山本桃潤
億光年前の星影梅雨の空 氷室茉胡
・長谷川櫂選
【特選】
虹消えてまた立つ空の機嫌かな 松川まさみ
手に重き水茄子漬を割き始む 花井淳
かくも濃き百合の香に死者覚まさんか 趙栄順
【入選】
こきこきと共に古びし扇風機 田村史生
外つ国の教え子何処雲の峰 田中紫春
きりきりと三人掛り茅の輪結ふ 安藤久美
まつたりと夏の走りや蓮根羹 鬼川こまち
夏色の水平線に船の影 清水薫
新婚の蚊帳は二人で吊りにけり 稲垣雄二
老残を養ふ酒盗端居かな 宮田勝
第二句座(席題:夏至、苔の花)
・鬼川こまち選
【特選】
たつぷりと水吸うところ苔の花 宮田勝
水孕む夜空重たし苔の花 松川まさみ
雨にねむり雨に目覚めぬ苔の花 安藤久美
夏至の朝紙一枚で店を閉じ 稲垣雄二
ひとすじに一つの仕事苔の花 中野徹
【入選】
夏至の朝観察日記始まりぬ 田村史生
磨崖仏へすべらぬやうに苔の花 酒井きよみ
夏至の日はおおかたは雨加賀平野 泉早苗
生き抜いて御百度参り苔の花 田中紫春
苔の花じかんが止まる森の中 山本桃潤
飛び石は苔に沈みぬ苔の花 長谷川櫂
塹壕の底に見上げし夏至の空 山本桃潤
ひたひたと水湿り出す苔の花 宮田勝
舌を出すアインシュタイン夏至夕べ 氷室茉胡
・長谷川櫂選
【特選】
苔の花いのちの水をとこしなへ 玉置陽子
サンドレス夏至の女となりにけり 趙栄順
夏至の日やパソコンに登る蟻一匹 近藤沙羅
【入選】
口笛や夏至の日暮れの淋しさに 松川まさみ
空襲を逃れし庭に苔の花 稲垣雄二
夏至の日はおおかたは雨加賀平野 泉早苗
夏至の日の蕗あをあをと炊きにけり 酒井きよみ
歳月を重ねて今日の苔の花 中野徹
夏至の夜や水ぬめぬめと鯉の群 玉置陽子
夏至の雨山河瑞しき音たてて 梅田恵美子
夫の愛す庭も古りけり苔の花 佐々木まき