古志金沢ズーム句会(2021年5月16日)
第一句座(当季雑詠)
・鬼川こまち選
【特選】
去り去られ気楽なりけりアマリリス 松川まさみ
百代を寺住みの蛇あをあをと 泉早苗
母の日や嬉しきときに母は泣き 宮田勝
この地球転げ落ちたり蟻地獄 山本桃潤
藤垂るる野点の真下活断層 密田妖子
大いなる滴りとなり磨崖仏 玉置陽子
梁の裏大工の名こそ涼しけれ 安藤久美
空豆は口をそろへて歌ふなり 長谷川櫂
【入選】
薫風よがさがさの世に吹き渡れ 間宮伸子
漂ひて海の嘆きを聞く海月 山本桃潤
新緑へ大鼓の音のあふれ出る 密田妖子
蛇の衣たびたび脱ぐは羨まし 松川まさみ
メロディとともに湯の沸く古茶新茶 佐々木まき
蘊蓄を傾け新茶そそがるる 佐々木まき
落し文院の衰亡明らかに 酒井きよみ
籠に摘む五月の森の言葉たち 山本桃潤
籠らねばならぬ簾をあをあをと 安藤久美
今年竹青天井をまだ知らず 田村史生
侘住みも長者ぶりなり柿若葉 酒井きよみ
上げ潮や植田千枚波打てり 梅田恵美子
端居して昭和に消えぬ闇いくつ 趙栄順
物置に眠り続ける鯉幟 密田妖子
代る代る母のエプロン母の日よ 氷室茉胡
烏賊釣火に怒りの墨の届かざる 氷室茉胡
漁師町夏の香りの醤油蔵 花井淳
岩はしる蜥蜴ときどきよそ見せり 梅田恵美子
夏鶯さよならの無き死別かな 間宮伸子
蚊帳吊つて蒼き地球に眠るかな 趙栄順
登山靴の紐締め直す八合目 氷室茉胡
・長谷川櫂選
【特選】
滴滴と深山のこゑ新茶汲む 玉置陽子
皺の手に大吉相や夏来る 田村史生
蚊帳吊つて蒼き地球に眠るかな 趙栄順
【入選】
化粧箱に母の遺せし蛇の衣 密田妖子
籠に摘む五月の森の言葉たち 山本桃潤
咲き初めてもの云ふごとし薔薇 近藤沙羅
あつらへしごとき夕月冷し酒 篠原隆子
母の日や嬉しきときに母は泣き 宮田勝
田植どき雨もきよらか大八州 酒井きよみ
初つばめ加賀には千の美田あり 安藤久美
新緑や奈良漬三切れ麦飯に 花井淳
代る代る母のエプロン母の日よ 氷室茉胡
今出でし蓮の浮葉に水の玉 間宮伸子
大いなる滴りとなり磨崖仏 玉置陽子
ぼうたんのねむしねむしと打ち崩れ 鬼川こまち
細胞がきらきら目覚む五月かな 間宮伸子
カーネーション朝一番の卓上に 宮田勝
まぼろしの尖塔へ舞ひ夏の蝶 玉置陽子
岩はしる蜥蜴ときどきよそ見せり 梅田恵美子
木の花の白さ松本たかしの忌 篠原隆子
第二句座(席題:梅酒、白)
・鬼川こまち選
【特選】
白といふ大いな力夏来る 山本桃潤
日のしづく月のしづくの梅酒かな 趙栄順
梅の実のみな酔うてゐる梅酒かな 長谷川櫂
陽を浴びて卯の花白き小山めく 密田妖子
汗かいて子にほとばしる乳白し 安藤久美
黄金の梅酒飲まずに逝かれしか 稲垣雄二
【入選】
集ふ日へ梅酒の琥珀深みゆく 安藤久美
風まとうやうにふはりと白シャツを 酒井きよみ
深沈と梅酒の醸す未来かな 梅田恵美子
白シャツの内灘の夏射撃跡 宮田勝
老年にいくばく壮気白きシャツ 越智淳子
さりげなく白シャツで来る男かな 酒井きよみ
まつさらに晒せ白服も魂も 篠原隆子
白靴の汚れは今日の練習量 氷室茉胡
地の神の宿りて白し冷奴 清水薫
・長谷川櫂選
【特選】
梅酒けさ梅一粒の沈み初む 越智淳子
京都へは行かず仕舞ひの白絣 花井淳
老年にいくばく壮気白きシャツ 越智淳子
【入選】
白といふ大いな力夏来る 山本桃潤
集ふ日へ梅酒の琥珀深みゆく 安藤久美
日のしづく月のしづくの梅酒かな 趙栄順
還暦の真白きシャツをぬける風 篠原隆子
大瓶の梅酒賜るよき日かな 近藤沙羅
白薔薇の氷のつぼみ香るかな 趙栄順
遺産分け梅酒一瓶貰ひけり 稲垣雄二
雨安居やすずしの白の僧坐せり 泉早苗
梅酒飲む女性ホルモン末永く 間宮伸子
汗かいて子にほとばしる乳白し 安藤久美
白服や物干竿も色めかん 田村史生
白靴に心も足もうきうきす 佐々木まき
風通す母のなじみし白絣 佐々木まき
大仏の胎内めぐる白きシャツ 間宮伸子