古志金沢ズーム句会(2021年4月18日)
第一句座
・鬼川こまち選
【特選】
目瞑れば花鳥匂ふ虚空かな 玉置陽子
籐椅子は白き渚へつづきけり 長谷川櫂
葉桜や城の復興着々と 田中紫春
涅槃図を見上げる猫の老いにけり 密田妖子
東京のかるさ明るさ春の雷 篠原隆子
畦塗るや千の曲がりの千枚田 稲垣雄二
【入選】
茫茫の花塵となり葉となりぬ 泉早苗
ざわざわと鬼の声する花の闇 梅田恵美子
いつしかにほぐれゆく心春の雨 高橋慧
桜蕊降るや大地の芳しき 田村史生
とと楽の能登にうまれて蕨摘む 中野徹
木瓜満開少年少女合唱団 清水薫
卯波のやう心の波の絶えざりき 越智淳子
春愁はたたみて沖へ流さうか 松川まさみ
鳥になる少年ブランコ漕ぎつづけ 松川まさみ
雲南は雲の上なる茶摘唄 篠原隆子
茹で上がる蕨古代の深みどり 密田妖子
風に醒め風に眠れる柳かな 趙栄順
わが町は二人静の倍しづか 間宮伸子
天の掌のかすかに触れて花散れり 趙栄順
芹の水ささ濁りてはなほ澄みつ 玉置陽子
・長谷川櫂選
【◎特選】
飴山忌あなたを真似て妻愛す 山本桃潤
【特選】
相撲取に抱かれて笑ふ桜鯛 間宮伸子
ざわざわと鬼の声せり花の闇 梅田恵美子
蛇出でて風に吹かれてゐたりけり 趙栄順
花びらの中より覚めて乳を吸ふ 安藤久美
わが村へ一直線に来る燕 酒井きよみ
牡丹のぐぐと忿怒の芽吹きかな 泉早苗
西行の庵の先へ花の道 氷室茉胡
初蝶に大冒険の御空あり 稲垣雄二
渦をときまた渦となり花筏 梅田恵美子
【入選】
山笑ふそのふところの蕎麦屋へと 清水薫
目瞑れば花鳥の舞ふ虚空かな 玉置陽子
大連をなつかしむ母柳絮飛ぶ 間宮伸子
父の葬あの日も晴れや初燕 酒井きよみ
搗き立ての草もち一塊赤子かな 酒井きよみ
すれちがふ背負子の匂ふ蕨かな 酒井きよみ
一碧の空に高々松の花 佐々木まき
大藤の間にぬつと男かな 近藤沙羅
とと楽の能登にうまれて蕨摘む 中野徹
春光の白山まこと白きかな 中野徹
山桜妹はムラサキヤシオかな 酒井きよみ
ここからの島が一番茶摘笠 篠原隆子
ひと晩に花仕舞ひたり紀三井寺 玉置陽子
木の芽味噌のせて焼きけり桜鱒 宮田勝
天を衝くメタセコイアも新樹かな 近藤沙羅
根上りの松の真中へ鶯来 花井淳
春愁はたたみて沖へ流さうか 松川まさみ
山伏の法螺に応へて花吹雪く 氷室茉胡
鈴の音と峠を越ゆる遍路かな 稲垣雄二
雲南は雲の上なり茶摘唄 篠原隆子
茹で上げて蕨古代の深みどり 密田妖子
大岡信詩論耽読遅日かな 山本桃潤
角なしの栄螺のどかにころがりぬ 篠原隆子
ほの朱き白えび豊か能登の春 越智淳子
ざくざくと刻む香りや花山葵 梅田恵美子
唐崎の松も花咲く湖の空 佐々木まき
風に醒めて風に眠れる柳かな 趙栄順
涅槃図を見上ぐる猫も老いにけり 密田妖子
つつがなく老いし夫へ若芽汁 趙栄順
塗る畦の千の曲がりも千枚田 稲垣雄二
ポンと鳴く君に喝采紙風船 清水薫
第二句座(席題:晩春、別れ霜)
・鬼川こまち選
【特選】
金閣寺天下の春の極まりぬ 長谷川櫂
狐うどん永き晩春なりしかな 長谷川櫂
晩春の日暮れが水に遊びをり 宮田勝
晩春やこんぺいたうは花の色 趙栄順
晩春や伝言板のありしころ 田村史生
平成も昭和も遠く別霜 田中紫春
【入選】
けもの道光さし込む霜の果 梅田恵美子
月花美人外に忘れし忘れ霜 酒井きよみ
晩春のキリンの長き睫かな 趙栄順
晩春のサーカスの子のまた別れ 山本桃潤
晩春の雲のとろりと夕茜 松川まさみ
晩春の赤子泣かして渡さるる 安藤久美
晩春や捨て置かれたる植木鉢 松川まさみ
晩春や哲学の道ぶらぶらと 氷室茉胡
友とゐて霜の名残の茶碗酒 花井淳
・長谷川櫂選
【特選】
晩春の加太千軒の甍かな 玉置陽子
晩春の津軽より来る花信かな 宮田勝
晩春やこんぺいたうは花の色 趙栄順
【入選】
うなだれし花を返せよ忘れ霜 越智淳子
馬の仔に風まばゆしや春の果て 間宮伸子
畑に手を入れなほしけり忘れ霜 酒井きよみ
晩春のからす目で追ふ病窓に 密田妖子
晩春の影より黒き揚羽蝶 山本桃潤
晩春の鯉一の字に浮かみをり 篠原隆子
晩春やかつてありたる学びの舎 中野徹
晩春や捨て置かれたる植木鉢 松川まさみ
晩春や伝言板のありしころ 田村史生
晩春や鍋に煮出して草木染 玉置陽子
晩春や墨をながして池の鯉 篠原隆子
晩春や無花果に敷く残り藁 稲垣雄二
晩春や野に別れ道右左 梅田恵美子
別れ霜早くも母の七回忌 清水薫
夜半の風あすの遅霜うたがはず 佐々木まき