古志広島ズーム句会(2021年3月7日)
第一句座
・矢野京子選
【特選】
ほんたうのこと告げる日よエイプリルフール 高橋真樹子
一年の命ながらへ紅梅煮 長谷川櫂
藻塩焼く黒がねの釜かぎろへり 飛岡光枝
幾千の魂吞み込みし海や春 ストーン睦美
春潮は人恋ふ音や震災忌 斉藤真知子
【入選】
お水取りらうべん椿さくころか 大平佳余子
かみしめる生老病死蕗の薹 上松美智子
さあ行けと牧ひろびろと開きけり 大場梅子
つつぬけに裏山見ゆる雛の家 飛岡光枝
犬は背で直滑降やスキー追ふ 岡村美紗子
糊こぼし椿咲くころお水取 大場梅子
香る木の一の香や沈丁花 大平佳余子
春眠といふ大波の裏がへる 長谷川櫂
杉の葉の燃えさしもらふお水取り 菅谷和子
卒業や空弁当の中に文 ももたなおよ
退出ボタン押せばたちまち句座朧 神戸秀子
蝌蚪の群れ澱みの水が全世界 ストーン睦美
・長谷川櫂選
【特選】
かみしめよ生老病死蕗の薹 上松美智子
さへづりの一羽はげしき震災忌 石塚純子
も一人の我の遊ぶや春の夢 米山瑠衣
荒波に向かひてつばき崖一面 伊藤靖子
春の雪震災十年余震六強 林弘美
田の畔のペンペン草をブーケにす 夏井通江
罹つたらお別れぞとや草の餅 米山瑠衣
【入選】
あらなんと血管喪失春疾風 城山邦紀
いつまでも朝寝の夫や憎々し 大場梅子
このちさき命頂くほたるいか 伊藤靖子
さあ行けとひろびろと牧開きけり 大場梅子
かき分けて切つて三寸山の独活 石塚純子
もう我をわからぬ人や雛あられ 飛岡光枝
藻塩焼く黒がねの釜かぎろへり 飛岡光枝
寒鰤のあら炊き盛りて夕餉かな 伊藤靖子
幾千の魂呑み込みし海や春 ストーン睦美
蟻出でてすぐに子供に見つかりぬ 斉藤真知子
熊笹の揺れて雪解の山浮かぶ 高橋真樹子
交差点空の広さや風光る 夏井通江
桜待つおもひつのるや桜餅 大平佳余子
三枚の葉もて包みぬ桜餅 斉藤真知子
山焼きや火の神とうと駆け抜けよ ストーン睦美
十年は節目とならず蓬餅 斉藤真知子
水温む肌荒れの手をしみじみと 大場梅子
朝粥で六腑いたはれ春の雪 矢野京子
二ン月や動作起すにどつこいしよ 上松美智子
煩悩を焼き尽くしたき野焼かな 土谷眞理子
鵯くぐるたびに杏の花こぼれ 神戸秀子
第二句座(席題:磯巾着、葱坊主)
・矢野京子選
【特選】
乙姫の髪飾らんや磯巾着 神戸秀子
レストラン裏の畑は葱坊主 ももたなおよ
磯巾着ゆらりゆらゆら何掴まん ももたなおよ
【入選】
葱坊主夕日落ちゆく関東平野 飛岡光枝
葱坊主やがて天下を取る日まで 大場梅子
俳句してほつたらかしや葱坊主 土谷眞理子
空の下ワクワクしてる葱坊主 高橋真樹子
太陽がくすぐつたいぞ葱坊主 飛岡光枝
龍宮の話きかせよ磯巾着 長谷川櫂
葱坊主何も考えたくなき日 斉藤真知子
・長谷川櫂選
【特選】
うつとりと小魚入りぬいしぼたん 石塚純子
潮だまり磯巾着は指を吸ふ 上松美智子
荒波やいそぎんちゃくをもてあそぶ 伊藤靖子
わが足もイソギンチャクも揺らめきぬ 夏井通江
上げ潮や磯巾着は歌うたふ 飛岡光枝
けふ一日いそぎんちやくを友だちに 矢野京子
【入選】
立ったまま居眠りしてる葱坊主 城山邦紀
イソギンチャク触れれば指の吸ひこまれ 岡村美紗子
太陽がくすぐつたいぞ葱坊主 飛岡光枝
誤つて石を捉へし石牡丹 土谷眞理子
指先に海なまぬるし磯巾着 神戸秀子
波の手の日がな撫でゐるいしぼたん 米山瑠衣