古志広島ズーム句会(2020年9月6日)
・第一句座
【特選】
一歳の引き揚げ者われ草の絮 石塚純子
冷やかや窓に映れる夜の顔 ストーン睦美
水の香を二つに切つて新豆腐 城山邦紀
母その日一人の少女終戦日 河本秀也
送られて我が家遠しや精霊会 米山瑠衣
よべ咲きてけさはまぼろし月下美人 菅谷和子
爽やかや家族の中のダイニング 大平佳余子
【入選】
暇ごとに磨いてやらん瓢かな 矢野京子
開かんと月下美人の揺らぎそむ 神戸秀子
放たれて草原に馬肥ゆるなり 大場梅子
オリーブの白き葉裏を秋の風 原京子
物言はぬ語り部あまた震災忌 大平佳余子
結願へひとふんばりや走り蕎麦 丸亀葉菜子
けふ燕帰るや日誌閉ぢにけり 大場梅子
予定表真白のまま秋暑し 城山邦紀
金魚をり布袋葵の花のかげ 飛岡光枝
若鷹の水浴びの声秋の川 林弘美
差し込める秋日を浴びて母ゐます 矢野京子
もてあます骨身軋むや敗戦日 長井亜紀
八月や空のふかみに観覧車 神戸秀子
もう一度嬰児を産みたし猫じやらし 石塚純子
一息も二息もつく残暑かな 城山邦紀
目蓋を猫の踏みゆく昼寝覚 飛岡光枝
初百舌鳥や我もちかぢか床払 丸亀葉菜子
新しき水に馴染めぬ金魚かな 飛岡光枝
香りよき石鹸おろす九月かな 矢野京子
べんがらの土器の一片秋の風 高橋真樹子
・第二句座(席題=玉蜀黍、鹿)
【特選】
よく匂ふ鹿の糞なる秋暑し 丸亀葉菜子
草原へたうもろこしを焼く煙 斉藤真知子
鹿鳴くや大仏殿をこだまして 大平佳余子
【入選】
さ牡鹿の角もてあます旨寝かな 飛岡光枝
たうもろこしの葉がはみだせり段ボール 長井亜紀
玉蜀黍きのふもけふももぎて山 菅谷和子
木漏れ日の鹿の眠るや風のなか 飛岡光枝
玉蜀黍青空を風駆けめぐる 長井亜紀
一族が集ふ夕暮れ神の鹿 ストーン睦美
摩周湖よもろこし一粒づつ齧る 河本秀也
放り込み唐黍ゆでるドラム缶 飛岡光枝
木の影にまじりてうごく恋の鹿 長井亜紀
もろこしの焼く香たなびく両隣 城山邦紀
仕事夜やコーンスープのやさしさよ ストーン睦美
もろこしの皮積み上げて草の上 斉藤真知子
なまぬるき風吹き渡り黍畑 矢野京子