第一句座
梅室忌または当季雑詠
・鬼川こまち選
【特選】
富士山の解けては氷る小春かな 長谷川櫂
一山をころがす勢ひ猪の鼻 酒井きよみ
猿面の老ゐて味はひ梅室忌 山本桃潤
てつぺんに止まりて鵙の天下かな 橋詰育子
ごつごつと一本の道栗羊羹 飛岡光枝
稲妻を手斧で切つて花入に 長谷川櫂
一弾の谺や秋の水に罅 松川まさみ
彗星の尾がふれゆきし金木犀 安藤久美
悴んで地球は重し鉄の玉 長谷川櫂
【入選】
竹箒一夜の秋を掃き集む 稲垣雄二
白徳利もて月待たん梅室忌 田村史生
鮒の影掠める障子洗ひけり 玉置陽子
枯れゆきて光となりぬ蝦夷りんだう 梅田恵美子
「ぐりとぐら」いまだ手元に秋惜しむ 川上あきこ
どんぐりも地球も回れ二十日月 駒木幹正
帰り咲く一木もあれ梅室忌 酒井きよみ
梅室忌一本松は色変へず 藤倉桂
ラフランスの詩を遺してゆかれしよ 近藤沙羅
異国のオオトカゲ来る梅室忌 近藤沙羅
破案山子軽トラックの助手席へ 藤倉桂
角伐るや一頭つひに逃げ通す 田村史生
大拙の思索の海へ木の実落つ 趙栄順
・長谷川櫂選
【特選】推敲例
花の芽のころより愛でし花梨捥ぐ 清水薫
猿面に老ゐて候ふ梅室忌 山本桃潤
鮒の影掠める障子洗ひけり 玉置陽子
ふり払ふ露はなやかや梅室忌 飛岡光枝
小菊からこぼるる水も梅室忌 梅田恵美子
【入選】
初雁や妻を恋ひつつ五十年 宮田勝
白山の水脈々と梅室忌 安藤久美
青畳のごとく海原梅室忌 間宮伸子
梅室忌白徳利は月を待つ 田村史生
猪の鼻山をころがす勢ひかな 酒井きよみ
金沢は松吊るころか梅室忌 越智淳子
たましひを震はせて鳴く虫一匹 趙栄順
梅室忌枯萩起こす碑のうしろ 松川まさみ
梅室忌その手になりし翁像 泉早苗
凍らんとせし菊の露梅室忌 玉置陽子
帰り咲く一木もあれ梅室忌 酒井きよみ
新蕎麦や水響き合ふ音高し 宮田勝
古九谷の盃選ぶ梅室忌 密田妖子
梅室忌一本松は色変へず 藤倉桂
傘の露乾かぬ一世梅室忌 飛岡光枝
夕映て白山炎ゆる梅室忌 梅田恵美子
盥ほどの田も豊作や千枚田 稲垣雄二
かぶら鮓仕込み始まる梅室忌 梅田恵美子
水を吹く松の根榾や梅室忌 玉置陽子
白山を眺めつ京へ梅室忌 花井淳
みな白髪にてつつがなく梅室忌 泉早苗
梅室忌砥石に氷る指のさき 梅田恵美子
角伐るや一頭つひに逃げおほす 田村史生
一刀に露のはしるや梅室忌 飛岡光枝
梅室忌初めてつけし椿の実 間宮伸子
第二句座
席題:「鹿」、「大根」
・鬼川こまち選
【特選】
鹿の目の濡るるは子鹿思ひてか 田中紫春
種まきて今朝も通ひし大根畑 梅田恵美子
寂寂と月染み入るや掛大根 玉置陽子
巫女さんの朝の仕事や鹿の糞 飛岡光枝
鹿憩う松葉の上に膝折りて 間宮伸子
鹿に会い見つめられたる山のなか 梅田恵美子
この里も地割れをまたぐ掛大根 花井淳
桃源の翁と嫗大根干す 長谷川櫂
【入選】
いつも辛き夫の大根おろしかな 氷室茉胡
一揆村晴れそくばくの大根干す 泉早苗
防人の島や身を寄す月の鹿 泉早苗
この道を行けば白峰鹿が鳴く 清水薫
角伐つていよいよかろき鹿の声 安藤久美
太りだす大根の葉の茂りかな 趙栄順
鹿の群見送りてわれも帰りけり 橋詰育子
吾も欲し鹿の瞳と細き足 間宮伸子
禅寺に山と積まれし土大根 清水薫
大根煮ることから始む独居かな 氷室茉胡
神鹿もすさびし眼近寄り来 藤倉桂
渋滞の先頭をゆく牡鹿かな 田村史生
浅間山ひと筋赤し鹿の声 玉置陽子
・長谷川櫂選
【特選】推敲例
彗星の落ち行くさきや大根畑 梅田恵美子
恋の頬大根当てて冷ましけり 稲垣雄二
あふるるや大根の水まな板に 藤倉桂
竿鹿に見つめられたり山の道 梅田恵美子
大根の穴日の差して健やかな 間宮伸子
【入選】
懸大根里の道来る選挙カー 駒木幹正
伐られたる角が痛しと啼く鹿よ 安藤久美
鹿憩う松葉の上に膝折りて 間宮伸子
せんべいに頭を下ぐる鹿哀れ 稲垣雄二
大根煮て始める一人暮らしかな 氷室茉胡
波寄せる浜に鹿たち何思ふ 近藤沙羅
子を中に一群れの鹿霜に寝る 稲垣雄二
