古志仙台ズーム句会(2024年9月23日)
第一句座
長谷川冬虹選
【特選】
指と指広げて洗ふ今朝の秋 佐伯律子
昼の月真白く高く大花野 甲田雅子
死ぬまでのほんの一生鉦叩 三玉一郎
人間を見定めてゐる秋の蜂 平尾 福
【入選】
父母のにはかに恋し鰯雲 齋藤嘉子
新豆腐予後の味覚を確かめん 上 俊一
細首を斬れとばかりに曼殊沙華 上 俊一
刷新も古びもせずに秋また来 三玉一郎
蚯蚓鳴く地下に燻ぶる核デブリ 武藤主明
鬼やんま空を破つて現れき 長谷川櫂
日に二升食ふて出世の相撲かな 臼杵政治
桐一葉この世の苦悩降りてくる 三玉一郎
長谷川櫂選(推敲例)
【特選】
指と指広げて洗ふ今朝の秋 佐伯律子
力無き口に吸はする黒葡萄 谷村和華子
けふの月ほどしづかなるもの知らず 上村幸三
【入選】
下校の子らにおしろいの花盛り 平尾 福
塩チョコを二人でつまむ良夜かな 及川由美子
手遊びに酢飯を扇ぐ団扇かな 臼杵政治
封人の舘の土間に差す秋日 宮本みさ子
ひそと咲く花に声掛け秋手入 谷村和華子
尿前の関は谷底初もみぢ 宮本みさ子
核デブリ燻ぶる地下に蚯蚓鳴く 武藤主明
母のシチュー野菜たくさん月の秋 臼杵正治
四十年この地に暮らし萩に花 長谷川冬虹
木犀や猫歩みゆく塀の上 平尾 福
根こそぎにされし鶏頭なほ赤し 上 俊一
第二句座(席題:新米、鈴虫、唐辛子)
長谷川冬虹選
【特選】
年に二十日にはか百姓今年米 川村杳平
荷台から父の声する今年米 佐伯律子
天地にくがね響かす今年米 上村幸三
今宵星は空にあふるる唐辛子 三玉一郎
【入選】
新米を炊いて香りを椀に盛る 甲田雅子
主なき家に棲みつく月鈴子 佐伯律子
一斉に髭靡かせて月鈴子 及川由美子
大谷の栄えある年の今年米 長谷川櫂
新米は一合足して研ぎにけり 武藤主明
鈴虫鳴かす昔の父の得意顔 川村杳平
今年又冷凍にする唐辛子 阿部けいこ
鈴虫やだんだん雄がゐなくなる 臼杵政治
新米研ぐこれが最後の米作り 齋藤嘉子
長谷川櫂選(推敲例)
【特選】
今年米一合足して研ぎにけり 武藤主明
抱き直すひかりの重み今年米 三玉一郎
新米の袋のけぞりては進む 宮本みさ子
【入選】
年に二十日にはか百姓今年米 川村杳平
老犬も鈴虫を聴く宵の庭 青沼尾燈子
天地にくがね響かす今年米 上村幸三
今年又冷凍にする唐辛子 阿部けいこ
十キロの新米のごと子ども抱く 平尾 福
脱穀の埃はやまず今年米 上村幸三
靴下や五本の指に唐辛子 臼杵政治
新米研ぐこれで最後の米作り 齋藤嘉子
積み上げし新米さへも土砂の下 齋藤嘉子