【特選】
出羽路来て天空自在桐の花 宮城 長谷川冬虹
古りてこそ風やはらかき簾かな 和歌山 玉置陽子
戦火経し芭蕉布ひそと畳紙に 長崎 ももたなおよ
【入選】
枕辺に未読の新書梅雨に入る 北海道 村田鈴音
ぬばたまの黒ゆり生えよ摘めるほど 北海道 芳賀匙子
まうまうと樹は雄花たれ日雷 北海道 芳賀匙子
打ち上がる波の高さに夏来たる 茨城 袖山富美江
新茶汲む少し机上を整へて 茨城 袖山富美江
遠雷や一晩たてばみんな駄句 埼玉 上田雅子
日盛りや水菓子の皿ひんやりと 千葉 菊地原弘美
限りある身には過ぎたる五月の陽 千葉 麻生十三
金婚にあと一年や薔薇百輪 東京 神谷宣行
青嵐手握り合う手術室 東京 長尾貴代
トマト苗はるかに高き支柱かな 東京 畠山奈於
もう二度と振り返らない夏帽子 神奈川 三玉一郎
しづかなる句集を胸にハンモック 神奈川 三玉一郎
夏落葉踏みつつ迷ふのもいいか 神奈川 中丸佳音
父の日や差しつ差されつ夢の中 神奈川 土屋春樹
ばうばうと三十路の我に青嵐 新潟 安藤文
茄子漬の刻一刻の青の色 長野 大島一馬
羽抜鶏高らかに朝告げにけり 岐阜 夏井通江
湯上りの乳房に使ふ団扇かな 愛知 稲垣雄二
草笛や兵にそれぞれ故郷あり 愛知 稲垣雄二
多分この歯では囓れぬ実梅かな 愛知 臼杵政治
リヤカーで在所祭のふれ太鼓 京都 佐々木まき
豌豆剥く日常茶飯といふ安らぎ 京都 佐々木まき
エメラルド記念日来る五月かな 京都 佐々木まき
初夏や草で結びし笹だんご 京都 諏訪いほり
なにものも持たずに生まれところてん 京都 諏訪いほり
言ひたきことぐつと押へて心太 京都 氷室茉胡
われを呼ぶ兄の草笛はるかより 大阪 安藤久美
早すぎる死を悼みけり絹扇 大阪 木下洋子
十薬のますます元気売家札 大阪 澤田美那子
田の神の水口開く夏は来ぬ 大阪 齊藤遼風
青葉木菟肥前一国雨のなか 大阪 齊藤遼風
不意の雨日傘ひとつに寄添える 兵庫 髙見正樹
どくだみと茶筒に記す母の文字 奈良 喜田りえこ
竹串の焦げも芳し焼あまご 和歌山 玉置陽子
竹皮を脱ぐや尖端撓ひそむ 香川 曽根崇
大雨のあと悠然と夏落葉 香川 曽根崇
わが胸の邪鬼を鎮めるん心太 香川 曽根崇
新樹光むかし登りし楠よ 長崎 ももたなおよ
とうすみの腸透ける軽さかな 長崎 川辺酸模
亡き人の喝に覚めけり大昼寝 長崎 川辺酸模
思ひ切り脱ぎ散らかせよ竹の皮 大分 竹中南行