ネット投句(2020年11月15日)選句と選評
・投句のさい、これでわかってもらえるか、他人の目でご確認ください。自分の目ではなく他人の目。これができないといつまでも自立は無理。
・説明(理屈)は俳句からもっとも遠い。説明しようと思っていないか、チェックを。
・できるかぎり動きがでるように言葉を選ぶように。「片手の家路」よりは「片手に家路」。
・言葉を無理に押し込まない。削ること。秋小道→秋の道
・不必要な漢字を使わない。等、共など
【特選】
雪の夜を己が雪に変はるまで 01_北海道 柳一斉
・惜しいのは「を」。これが説明的精神の働き。雪の夜や
冬籠と思へば楽し入院日 13_東京 長井亜紀
父母の手のぬくもりや七五三 23_愛知 臼杵政治
・を、あるいは、の
漉きし紙人の温みの残りけり 26_京都 氷室茉胡
枯れ枯れて立つは菩薩でありしかな 27_大阪 安藤久美
蟷螂の石ごと枯れて石の上 27_大阪 古味瑳楓
冬苺見つけてはづむ山路かな 42_長崎 川辺酸模
襤褸布を繋ぎ詩にせん冬籠 42_長崎 百田直代
山茶花に鼻くつつける老いもよし 44_大分 山本桃潤
冬立つやここを栖の石たたき 44_大分 竹中南行
山茶花の咲きそろはんと蕾かな 44_大分 竹中南行
龍の玉仏の在す胸の中 44_大分 土谷眞理子
【入選】
はしゃぎ来る子らよ綿虫こそばいか 01_北海道 高橋真樹子
・はしやぎ。
初冬の人間しんと位置に着き 01_北海道 芳賀匙子
・着く
西国の空と光のみかん食む 01_北海道 芳賀匙子
・食ぶ
かな文字を大書したるや秋の雲 04_宮城 長谷川冬虹
・か
いくばくか日の差す方へ返り花 05_秋田 佐藤一郎
・上五ダメ。
町ぢゆうに熊の手配書うそ寒し 05_秋田 佐藤一郎
・季語再考。
車座に来よ亡き父母も蟋蟀も 07_福島 渡辺遊太
吊し切らる鮟鱇の科言ふてみよ 11_埼玉 園田靖彦
・言うて。「て」の前に「ふ」は来ないとでも覚えてください。
背文字まで陽のとどきをり冬の書庫 11_埼玉 佐藤森恵
・背表紙に
暁のむささび飛びて山眠る 11_埼玉 佐藤森恵
・暁や
池昏れて水鳥もみな昏れにけり 11_埼玉 上田雅子
うつし世の見飽きぬものに鳰 11_埼玉 上田雅子
此処母の終の棲家よ小鳥来よ 11_埼玉 藤倉桂
ジョギングで憂さを晴らすや鰯雲 12_千葉 谷口正人
・晴らさん
あらうれし冬立つ湯屋の掛け流し 12_千葉 池田祥子
・湯舟掛け流し
ヘルニアの膨らみ愛す小春かな 12_千葉 麻生十三
はやすでに疎ましきかな冬籠り 13_東京 いかいあつし
ちょい悪に見せる夫の冬帽子 13_東京 岡田栄美
・ちよい
腹立てど夜は揃いのちゃんちゃんこ 13_東京 岡田栄美
・揃ひ、ちやんちやんこ
日向ぼこ医院の前に椅子が出て 13_東京 岡惠
冬深き鮫の歯一つぺンダント 13_東京 岡惠
網棚にみやげの大根寛げリ 13_東京 市村さよみ
・くつろぎぬ
湯たんぽや今日も安堵の足三里 13_東京 市村さよみ
ボージョレのワイン片手の家路かな 13_東京 森徳典
・ボージョレの新酒、片手に
汗油落とす柚子風呂夜勤明け 13_東京 神谷宣行
・ゴリ押し俳句。ここのところ勘を喪失?
入院の我に届けよ金屏風 13_東京 長井亜紀
みどりの手空にさしいれ松手入 13_東京 長井亜紀
寒風や揺れる吊橋こはごはと 13_東京 楠原正光
・寒風に。や、とするほどの場面ではない。
冬めける行き交ふ人も早足に 13_東京 楠原正光
・冬めいて、冬めくや
冬あたたかゆつたり揺れるもやい船 13_東京 楠原正光
・もやひ
小春日や園帽の子等あそこにも 13_東京 堀越としの
夜の街も終電もなし年送る 13_東京 櫻井滋
黄落やことばは土に戻りけり 14_神奈川 越智淳子
熱の身を癒すりんごの力かな 14_神奈川 遠藤初惠
凩や久々に観る西部劇 14_神奈川 遠藤初惠
青空の真中に秋の女郎蜘蛛 14_神奈川 金澤道子
読み返す本に紅葉の栞かな 14_神奈川 三浦イシ子
日向ぼこみるみる老いてゆきにけり 14_神奈川 三玉一郎
そしてまた月曜がくる日向ぼこ 14_神奈川 三玉一郎
降り立ちて小春の中へ旅鞄 14_神奈川 松井恭子
吠えかかる見知らぬ犬よ短日よ 14_神奈川 松井恭子
谷底のあの辺に咲けり冬桜 14_神奈川 森川ヨシ子
・咲けり、不要。
柿食えばと言ひつつ柿を剥く子かな 14_神奈川 水篠けいこ
・食へば
愛犬の記憶新たに秋小道 14_神奈川 天野史郎
・秋の道
たくさんの鳶の舞ひゐて冬に入る 14_神奈川 那珂侑子
・上五いい加減。工夫せよ。
木の実なき山を下り来る母子熊 14_神奈川 片山ひろし
余生こそ枯木道とはするなかれ 14_神奈川 片山ひろし
・こそ、ヘン。
宙を飛ぶあまたの言葉や一茶の忌 15_新潟 安藤文
・や、不要。
深閑と木箱のりんご廊下かな 15_新潟 高橋慧
・りんごの木箱
鯉二匹泡二つや小六月 17_石川 花井淳
懐手してご隠居と呼ばしむる 17_石川 岩本展乎
・呼ばれゐる?
冬帽子目深にラジオ手放さず 17_石川 岩本展乎
あすあたり帰る燕の舞ふ夕べ 20_長野 金田伸一
神曲ダンテに新豆腐絹漉しに 20_長野 柚木紀子
一人来て障子の透ける日ざしかな 21_岐阜 夏井通江
・ゐて障子に
黄落やよちよちの子に走る子に 21_岐阜 三好政子
小春日やそこここに子と若き父 21_岐阜 三好政子
転ぶ子を枯草の香と共に抱く 23_愛知 宗石みずえ
笑む貌は少年のまま木の葉髪 23_愛知 宗石みずえ
・笑ひ顔
柿落葉隣の庭にニ三枚 24_三重 乾薫
・庭へ
若返る秘薬となさん鮟肝煮 26_京都 佐々木まき
顔に泥浴びて格闘泥鰌掘る 26_京都 氷室茉胡
茶の花や今は使はぬ登り窯 26_京都 氷室茉胡
まぼろしの琵琶に聴き入る夜長かな 27_大阪 安藤久美
天平の弓を弾けば鹿寄り来 27_大阪 安藤久美
立てるものみな鳴らしゆく凩は 27_大阪 古味瑳楓
天平の闇に冬立つおほぼとけ 27_大阪 古味瑳楓
一週間なにをしていてこの落葉 27_大阪 高角みつこ
・ゐて
狗尾草持ちてゆさゆさ街歩む 27_大阪 山中紅萼
身にしみてしばし途絶へる会話かな 27_大阪 内山薫
咳の人と隣りあはせやそぞろ寒 27_大阪 内山薫
霜月やコートにバツのしつけ糸 27_大阪 内山薫
吊し柿見守る日々のたのしかり 27_大阪 木下洋子
・下五アウト。
てつちりや景気悪いと言ひながら 27_大阪 木下洋子
・これが理屈の句。
原子炉は岬の蔭に小春凪 27_大阪 澤田美那子
資本論飛ばして読める夜寒かな 27_大阪 齊藤遼風
白菜の芯のあらはに真二つ 28_兵庫 加藤百合子
・芯も
朝毎に冬を迎ふる覚悟かな 28_兵庫 天野ミチ
ここが天国ハキダメギクは満開に 28_兵庫 藤岡美惠子
桐一葉ゆるりと舞いて着地せり 28_兵庫 髙見正樹
・舞ひて、舞うて
竹林を透かして朝の冬紅葉 29_奈良 田原春
冬紅葉オペラ独唱流れ来て 29_奈良 田原春
玉取の悲話の志度浦牡蠣太る 37_香川 丸亀葉七子
コンベヤー舟から小屋へ牡蠣流す 37_香川 丸亀葉七子
時雨の忌ものの気配を深く身に 37_香川 元屋奈那子
やまと歌仮名序心に桃青忌 37_香川 元屋奈那子
立冬の日のさしてきし机かな 37_香川 曽根崇
千年の戦世生きし枯木かな 42_長崎 川辺酸模
綿虫の世界も戦あるらしく 44_大分 山本桃潤