ネット投句(2020年8月31日)選句と選評
・俳句は通じるように。
・作ったら必ず見直してください。これで通じるかどうか。
【特選】
これ以上優しく持てぬ白桃よ 11_埼玉 藤倉 桂
・ず、は
海深き父の硯を洗ひけり 12_千葉 若土裕子
畦道の蝗追ゐし日ひもじかり 13_東京 森徳典
今朝の秋聞こえる音のみな静か 13_東京 森凜柚
・ゆ
地獄の門残暑の真つ只中に立つ 14_神奈川 金澤道子
あけ放つ家に色なき風の吹く 14_神奈川 森川ヨシ子
・を
子の逝けば選るさへ悲し草の市 23_愛知 宗石みずえ
梨剥けば故郷の水の香りかな 26_京都 氷室茉胡
・せり
池の水抜く話しなど秋暑し 27_大阪 高角みつこ
青空の天辺に秋来てゐたり 27_大阪 澤田美那子
秋来しと気合ひ入れねば秋の来ず 27_大阪 高角みつこ
・秋は
塔ふたつ空に漂ふ今朝の秋 29_奈良 喜田りえこ
・を
真つ白なマスクごしにも涼新た 44_大分 土谷眞理子
【入選】
老ひし犬坂登りくる今朝の秋 01_北海道 高橋真樹子
抽斗を開けるやどこも秋の風 01_北海道 柳一斉
同じ眉男子揃うて墓洗ふ 04_宮城 長谷川冬虹
・子、不要
其際にほほゑみしことすいつちよん 07_福島 渡辺遊太
稲の花死者の戻つて来る野道 07_福島 渡辺遊太
・稲と野、ダブル
公園のベンチにひとや秋昼寝 11_埼玉 おほずひろし
・ひと、不要
雲の峰八方に湧き何ごとぞ 12_千葉 谷口正人
参道を一歩一歩の秋日傘 13_東京 岡田栄美
明日より六十路を歩く残暑かな 13_東京 荒木大和
秋の日や灼かれて熱き駅出口 13_東京 神谷宣行
・に
八月やははの倍生き傘寿越え 13_東京 畠山奈於
山荘も代替はりして芒かな 13_東京 櫻井滋
横浜の夜空球音涼新た 14_神奈川 井上じろ
・夜は
胴声の合間板漕ぎ芋洗ふ 14_神奈川 越智淳子
羽根のみを残して蝉は喰はれけり 14_神奈川 遠藤初惠
さゆらぎもせずに残暑のさるすべり 14_神奈川 金澤道子
ベビーカー秋の暑さを押して来る 14_神奈川 金澤道子
金箔の一片の虫鳴きにけり 14_神奈川 三玉一郎
ほほづきの中ひとつづつ恋の歌 14_神奈川 三玉一郎
亡き人の夢見たしとや天の川 14_神奈川 松井恭子
・夢が見たかり。原句、他人事。
逃げてゆく後ろ姿の秋の蚊ぞ 14_神奈川 那珂侑子
編笠のおとがひ清し風の盆 14_神奈川 服部尚子
実ざくろや父の訃を聞く転任地 14_神奈川 片山ひろし
ドロップ缶カサコソと鳴る朝顔の実 15_新潟 高橋慧
・リズムを
外野手が飛球の下に鰯雲 17_石川 岩本展乎
・下へ
残暑とはすなはち猛暑列島火 20_長野 金田伸一
しづかにもちかづく火振り香魚めざめよ 20_長野 柚木 紀子
コロナ禍をわすれて河原に夏惜しむ 21_岐阜 古田之子
・忘れ河原の
皺くちやの笑顔たふとし生身魂 21_岐阜 梅田恵美子
あの世よりこの世は暑し門火焚く 21_岐阜 梅田恵美子
分け入りて藪に小さき栗拾ふ 23_愛知 野口優子
砂糖黍かじる故郷遠かりし 23_愛知 野口優子
・き
白百合や空家の庭に凛と立ち 24_三重 乾 薫
・つ
柳散る籠り暮しの今もなほ 26_京都 佐々木まき
・る
秋の早来てゐる御所の小川かな 26_京都 氷室茉胡
夕立の中へ駆け出す待ち合はせ 27_大阪 内山薫
麻痺の手のいと柔らかし秋の風 27_大阪 内山薫
玉音は人声なさず敗戦日 27_大阪 澤田美那子
日本の哀しみの月八月行く 28_兵庫 加藤百合子
近道と入りし叢露しとど 28_兵庫 髙見正樹
夕顔の雫で硯洗ひけり 29_奈良 喜田りえこ
明け方の露にまみれて芦を刈る 29_奈良 喜田りえこ
老ひの背に厳しき残暑左官職 29_奈良 田原春
・い
老ひぬことかなしからずや星の恋 33_岡山 齋藤嘉子
・い。理屈
水落す屋号を記す板の堰 37_香川 丸亀葉七子
・ごちゃごちゃ
小気味よき音ひびかせて木賊刈る 37_香川 曽根崇
蔵壁の白のまぶしき残暑かな 38_愛媛 豊田喜久子
古りしまま馴染みて秋の簾かな 38_愛媛 豊田喜久子
・める
おもいつきり鳴いて秋蝉とび立てり 38_愛媛 豊田喜久子
・つ、不要
秋澄むや九重連山指呼の中 42_長崎 川辺酸模
雲ばかり見て夏休み果てにけり 42_長崎 百田直代
終戦日名簿にはなき関連死 44_大分 竹中南行
生き死には単純がよし稲光 44_大分 竹中南行
台風を呑み込んでゐる台風かな 99_不明 園田靖彦