ネット投句(2020年3月15日)選句と選評
・引きつづき、600句暗唱を。
【特選】
青空をめくれば闇や安吾の忌 01_北海道 柳一斉
青空の濡れてゐるなり花辛夷 01_北海道 柳一斉
再発も転移もあるな春の雪 03_岩手 川村杳平
葱刻む今朝は老いたる母のため 04_宮城 長谷川冬虹
すかんぽを尊びつつも踏みゆけり 05_秋田 佐藤一郎
無線とどくただ流氷に遭ふとのみ 07_福島 渡辺遊太
見えないものと戦つてゐる地球春 07_福島 渡辺遊太
吊革に羽根休めたり春手套 13_東京 市村さよみ
・春手袋、とはじめる。
けふの花けふ存分にひらきけり 13_東京 長井亜紀
眠られぬ夜に来て去る春嵐 14_神奈川 越智淳子
ももいろの花が気になる仔馬かな 27_大阪 高角みつこ
演説も立看もなく卒業す 27_大阪 齊藤遼風
放浪の舟にまどろむ花菜かな 44_大分 竹中南行
蠅生る無より生まるる大宇宙 44_大分 土`谷眞理子
・初蝶や。このままだと理屈を句にしただけ。
【入選】
潮引くや夜明けは風の光る頃 01_北海道 高橋真樹子
溢るるや揺るるミモザの夕まぐれ 11_埼玉 佐々木みほ
春雨の小枝に並ぶ雫かな 11_埼玉 佐藤森恵
・語順。小枝に並ぶ春雨の雫かな、春雨の雫は、か。
菜の花や今も一茶が双樹庵 12_千葉 若土裕子
桜鯛花びら舞ふごと下ろしけり 12_千葉 若土裕子
・ごと、消す工夫。
田の神の笑ひ高らか雛の宴 12_千葉 池田祥子
春愁のコーヒーすする昼間かな 13_東京 安藤文
・真昼
沈黙を走る地下鉄春の月 13_東京 安藤文
銀河系宇宙の隅の沈丁花 13_東京 井上じろ
・隅に
手を洗ふ又手を洗ふ春よ来い 13_東京 岡 惠
ころころとゑくぼいでませ春の水 13_東京 長井亜紀
曙に月傾きぬ人麻呂忌 13_東京 楠原正光
はずむ声合格告げて春来たる 14_神奈川 伊藤靖子
春光や年ふりてまた楽しけれ 14_神奈川 越智淳子
オックスフオード事件現場に柳絮とぶ 14_神奈川 遠藤初惠
・に、不要。事件の現場
落ちしこと気付いてをらぬ椿かな 14_神奈川 金澤道子
眠る鯉ななめに流る春の川 14_神奈川 江藤鳥歩
・流れ
もくれんやおおらかな白ほぐさんと 14_神奈川 山本孝予
と、は何ですか?
春雨は雪へと替わる箱根かな 14_神奈川 森川ヨシ子
・春の雨
高齢をリスクと言うか春の旅 14_神奈川 水篠けいこ
・ふ
夏蜜柑二つ転がる寺の庭 14_神奈川 水篠けいこ
ものの芽に屈み小さきわれとなる 14_神奈川 中丸佳音
・大きなわれ、巨大なさわれ、でも成り立つ。ということは?
句心のちぢむ二月の寒さかな 20_長野 金田伸一
平常の心たいせつ初蝶來 20_長野 金田伸一
春の家鏡の中の人と住む 21_岐阜 夏井通江
・俳句にかぎらず、ありふれて発想。すでにあるものをなぞるだけでいいんですか?
落ち口に大鯉群るる春の水 21_岐阜 三好政子
・鯉の群がる?
シクラメン置く場所変わる日差しかな 22_静岡 池ケ谷章吾
一人とは開け閉てが憂し春障子 23_愛知 宗石みずえ
・一人ゐて
初蝶や風の穂先をつかまへて 23_愛知 野口優子
山に消え海に新たに春うれひ 27_大阪 古味瑳楓
老の春外に出ぬ日をおもしろく 27_大阪 澤田美那子
早々とこらえきれずに桜かな 28_兵庫 加藤百合子
粉吐いていともかるさうつくしんぼ 28_兵庫 藤岡美惠子
ふと夫に優しき言葉水温む 28_兵庫 藤岡美惠子
・ふと夫の。季語を理屈で取り合わせてはいけない。
椿餅はみ出してゐる雪のいろ 30_和歌山 玉置陽子
流氷のあかねびたしや浜埋め 33_岡山 齋藤嘉子
・下五ダメ。
春の野や花束にして貰ひけり 33_岡山 齋藤嘉子
・春の野を。この句もどこかにある。
春燈グラスきらきら米寿の賀 38_愛媛 豊田喜久子
初蝶や金魚葬りし石の上 42_長崎 川辺酸模
・金魚の眠る
初蝶来最期は苦(にが)し父も母も 43_熊本 筑紫秋蘭
君行くやミモザ溢れる春の朝 46_鹿児島 大西朝子