ネット投句(2018年10月15日)選句と選評
①まだ復調しない人あり。
②わざわざ古めかしい言葉を使うなかれ。近代俳句はまず、日常の言葉で。
③さらに推敲を。作りっぱなしの人多し。
【特選】
茫と生確と死のあり秋の蝉 07_福島 渡辺遊太
@死は
山霧が産み殖やしたる茸かな 13_東京 神谷宣行
@山霧の
ダブリンの夜は冷え冷え玩亭忌 13_東京 西川遊歩
@冷えびえと
秋風や鰻重食ふにゐる体力 14_神奈川 井上じろ
@要る
掌に大樹の夢の木の実かな 23_愛知 稲垣雄二
もの言はぬ犬と目が合ふ愁思かな 23_愛知 青沼尾燈子
@目の
夫婦して杖を選りゐる白露かな 26_京都 氷室茉胡
ながらへていつまた集ふ山葡萄 27_大阪 古味瑳楓
藪からし淋しきものを覆ひけり 27_大阪 古味瑳楓
豊穣のたまものとして角を伐る 28_兵庫 加藤百合子
奈良墨のきげんよき音秋の風 33_岡山 齋藤嘉子
玩ぶお手玉のやう実葛 37_香川 丸亀葉七子
一つ花残し芙蓉は青き実に 37_香川 丸亀葉七子
大ぞらのどこからとなく小鳥来る 38_愛媛 岡崎陽市
しろがねのまだ濡れてゐる芒かな 38_愛媛 木下誠
鶏頭花深くなりゆくものの影 42_長崎 百田直代
@ものの影深くなりけり鶏頭花。順番、いい加減。大事なことが先、これが原則、例外あり。
白帝の差配見事や我が山河 44_大分 山本桃潤
【入選】
初めての抗癌剤や黒葡萄 03_岩手 川村杳平
@この取合わせ、いい加減。
秋天や盲導犬は歩み出づ 04_宮城 長谷川冬虹
@秋天へ、盲導犬の
秋桜盲導犬の聡き眼よ 04_宮城 長谷川冬虹
@秋桜は最後。
襖より龍浮かれでる良夜かな 07_福島 渡辺遊太
@躍り出でる
借りものの肉叢古りぬ獺祭忌 07_福島 渡辺遊太
今日からは刈田横断登校す 11_埼玉 園田靖彦
ビセンテの曲パコの曲降る黄葉の道 12_千葉 菊地原弘美
娘との同居始めん雁のころ 12_千葉 若土裕子
かたかたと角突き合うて鹿あはれ 12_千葉 若土裕子
七五三抱かれてつひに眠りけり 12_千葉 若土裕子
駄句を詠み駄句に泣きたる夏なりし 13_東京 安藤文彦
@なりき
怒りしこと少し悔やみぬ月の前 13_東京 岡 恵
秋茄子や母との夕餉明日もまた 13_東京 長尾貴代
紫蘇の実のこぼれて育つ母の庭 13_東京 長尾貴代
秋半ばはや返り咲く花のあり 13_東京 徳武信子
@花やある
秋燕抜歯のあとの大き穴 14_神奈川 松井恭子
@秋燕、ダメ。
川中に飛地ありけり秋桜 14_神奈川 松井恭子
@川中に浮かぶ飛び地へ
眠らばや枕のなかの虫時雨 14_神奈川 湯浅菊子
角伐られ互ひさげすむ奈良の鹿 14_神奈川 湯浅菊子
@互いに、鹿と鹿
ちちろなと来いよあずさの終列車 20_長野 金田伸一
真白にぞ己深堀れ夜露朝露 20_長野 柚木紀子
日射し避け今人を避け秋簾 22_静岡 池ヶ谷章吾
野も山も大きな水槽鰯雲 22_静岡 池ヶ谷章吾
金色をにじませながらゆく秋よ 23_愛知 服部紀子
積年の墨黒々と硯洗ふ 26_京都 佐々木まき
草の花流れに伏して咲きにけり 26_京都 諏訪いほり
@咲きにけり、不要。鴨川の流れに伏して草の花
人住まぬ生家となりし夕紅葉 26_京都 氷室茉胡
@なりぬ
縁結びの松こそ色を変へぬ松 26_京都 氷室茉胡
何を搗く水車の音の秋深む 27_大阪 古味瑳楓
@音か
ゆかまほし色なき風の谷のむら 27_大阪 内山薫
@ゆかまほし、一考。
ぞんざいに描かれし顔の案山子かな 27_大阪 内山薫
@顔描かれたる。自分でここまでゆかないいと。
遠足の子の栗も入れ栗ご飯 27_大阪 澤田美那子
秋祭り破調にかはる笛の音 28_兵庫 加藤百合子
@秋祭りが説明。つまり生きていない。
鰯雲少年野球早出かな 28_兵庫 重定克則
@早出して
わさわさと稲穂くすぐる月夜かな 29_奈良 喜田りえこ
日光は白月光の紅寺の萩 29_奈良 喜田りえこ
@白は月光紅は日光
本読んでみえたるひかり夜学かな 38_愛媛 岡崎陽市
@光みえたる
気に入りの帽子を濡らす秋時雨 38_愛媛 豊田喜久子
@鳴らす。濡らすは理屈。秋時雨は動く。
ブローチも買ひたしされど葡萄買ふ 38_愛媛 豊田喜久子
@これも理屈ですよ。短冊に書けないでしょ。
われもまた時の旅人秋の草 38_愛媛 木下誠
@秋の草、ダメ。
妻を師にウクレレ習ふ夜長かな 42_長崎 川辺酸模
@師に、が大げさ。
百子図の子ども遊べる花野かな 44_大分 山本桃潤
図書館の書架の林立そぞろ寒 44_大分 竹内幸一
@そぞろ寒、一行。