『俳句の誕生』、週刊新潮(4月12日号)に詩人の渡辺十絲子さん、日本経済新聞(4月7日)に俳人の神野紗季さんの書評が載っています。
ネット投句年間賞は喜田りえこさん
ネット投句年間賞(第1期)は喜田りえ子さんに決まりました。
【年間賞】
ひとつづつ仏の顔や種浸し 大阪 喜田りえこ
【次点】
涅槃図の外にも哭ける何々ぞ 大阪 古味瑳楓
夢のまま氷りつきたる水車かな 埼玉 園田靖彦
呪を唱え家中回る冬の蠅 神奈川 森川ヨシ子
【候補】
ひそやかにわが心にも寒の紅 大阪 澤田美那子
書きだしてはるかなこころ初日記 愛媛 岡崎陽市
寒鰤やかがやくばかり能登の塩 大阪 安藤久美
風邪の神幾年ぶりに訪れし 埼玉 上田雅子
君ら今春泥の只中にあり 愛知 稲垣雄二
我らみな風に吹かるる吊し雛 宮城 長谷川冬虹
根の土の重きを選び苗木買ふ 群馬 白石明男
もの思ふ水輪となりてはるのみづ 神奈川 三玉一郎
スーパーに近江の春の蜆かな 京都 横山幸子
己が身のごとくぬぐひぬ遍路杖 愛媛 木下誠
『俳句の誕生』の誕生(村松二本)
これほどわくわくしながら一冊の本を手にとるのは、そうそうあることではない。
なにしろ『俳句の誕生』を解き明かしてくれるというのだ。
つんのめりながら扉を開いた。
第一章「転換する主体」では自ら巻いた歌仙を例に、一句ごとに「主体の転換」が起こっている。歌仙の連衆は場面を転換するために「自分自身でもない別の誰か、新たな主体に成り代わる」と述べる。
第二章は「切れの深層」。「発句とは歌仙の句と句の「間」、そこで起こる主体の転換を一句の内部にとりこんだもの」。そして、それによって「言葉の無限の交響」を目指すものだと説く。
ということは、いわゆる「取り合わせ」は歌仙の付け合いから生まれた手法ということになる。「発句は畢竟取合物とおもひ侍るべし」(『俳諧問答』)という芭蕉の言葉も、これですっきり合点がいく。
それにしても、この第一・二章だけでも句作りに精を出す者にとっては一冊の著書に相当するような内容の濃さである。
第三章「空白の時空」。主体が転換するときに、心は「空白の時空」に遊んでいる。そこで生まれるものが「詩歌」である。
第四章「無の記憶」では「詩歌を作ると言うことは、詩歌の作者が作者自身を離れて詩歌の主体になりきること」。そして、「言葉によって失われた永遠の静寂を、ふたたび言葉によって取り戻そうとするのが詩歌である」と言い切る。
やはり詩歌はちっぽけな自分を表現するものではない。もっと深いところから、もっと広いところから湧き出てくるものなのだ。
第五章「新古今的語法」では、「新古今的な言葉の切り結び」が禅の伝来に端を発していると言う。
第六章「禅の一撃」では、まず「禅問答とは言葉の限界を言葉によって知らせ、修行者を宇宙の真理に直面させるための言葉の仕掛け」と述べ、一方「シュルレアリスムの核心」は「言葉とその論理をいったん破壊して新たに組み上げる」ところにあるとする。その上で、「シュルレアリスムも禅もそれから生まれた新古今的語法も俳句も、はるか昔、人類が言葉を獲得したことによって失われた永遠の静寂を懐かしむ人類の郷愁が姿を現したもの」と喝破する。
これまでに、こんなに込み入った事柄について、糸をほぐすように分かりやすく書き留めた文言があっただろうか。
ここからは俳句のおかれた現状について考察する。
第七章は「近代俳人、一茶」。本来の「リアリズム」と子規の説いた「写生」の違いを明らかにし、近代俳句の発生は子規ではなく一茶に遡ることができると捉える。
第八章「古典主義俳句の光芒」では、蕪村の「春風馬堤曲」をつぶさに読んで、子規の取り上げた蕪村の「写生」がその一面でしかないと指摘する。
第九章の「近代大衆俳句を超えて」は、はじめに「大衆俳句指導者」としての虚子と、「俳人虚子」の本質的な違いをあぶり出す。さらに「虚子、蛇笏とつづく詩歌の本道が龍太にも楸邨にも受け継がれた」。それと同時に「衆愚政治(ポピュリズム)の時代が到来し」、俳句も「大衆化が極度に進んだ」と分析する。そして、この状況を直視し「巷にあふれる俳句の批評と選句を前にしたとき、それが単なる好みによるものか、それとも言葉と詩歌の歴史を踏まえた見識によるものか、いいかえれば誰の批評であり誰の選句であるかを見極めなければならない。」と結ぶ。
筆者は『俳句の誕生』を『俳句の宇宙』『古池に蛙は飛びこんだか』に続く三部作の最終巻と位置づけているが、もちろんそこには『子規の宇宙』や『芭蕉の風雅』『新しい一茶』等の著書も流れ込んでいる。その結果、ここに大きなダムができあがった。
『俳句の誕生』は「俳句とは何か」という問いに、長谷川櫂が全力を注いで導き出した答えである。しかし、それは最終的な解答ではない。あくまでも現時点での最高到達点である。
いずれこの答えは更新されるであろう。宇宙の謎が一つ一つ解き明かされていくように。それは櫂自身によるかも知れないし、後から来た誰かによってかも知れない。
肝心なのは『俳句の誕生』によって明らかにされた真相を、これからの俳句に生かしていけるかどうかである。これを読んで頭で理解して、それでこと足りたとしてしまったのでは何のためにもならない。
『俳句の誕生』は、新しい『俳句の誕生』を促す一冊である。長谷川櫂はそれを待ち望んでいるに違いない。(村松二本)
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ネット投句 2018年3月31日 選句と選評
①いったん作った句は必ず推敲を。
【特選】
白を融き青を解かしつ流氷は 20_長野 柚木紀子
ひとつづつ仏の顔や種浸し 27_大阪 喜田りえこ
佐保姫の箱庭にして大八洲 27_大阪 古味瑳楓
涅槃図の外にも哭ける何々ぞ 27_大阪 古味瑳楓
俑の手は駱駝引くらし長閑しや 27_大阪 長谷川陶子
蝌蚪の群れ近江はやがて水の中 27_大阪 齊藤遼風
棟上げを空よりはやすひばりかな 37_香川 曽根崇
みな島を出てゆく子らよ卒業歌 37_香川 曽根崇
ほほ笑んで花となりたる花見かな 38_愛媛 岡崎陽市
咲き満ちし桜へ月の光かな 38_愛媛 豊田喜久子
@こんままではダメ。桜は
月の夜は鬼も泣くらむ花の山 42_長崎 川辺酸模
古志三島句会 2018年3月25日
☆第1句座
【特選】
竹の秋竹おのおのの音の中 昭子
水中の根のなまめかしヒヤシンス 春日美智子
春塵や払はれてまたきらきらと 奈央子
西行の歌は花よりあはれなり 昭子
山田洋ひと足はやく花の塵 二本
【入選】
春愁や笛にはじまるいるかショウ 春日美智子
石牟礼道子大いなる春逝きにけり 昭子
山々は春の緑や新幹線 通江
青空の深し大岡信の忌 二本
信忌や三島は水のこんこんと 二本
ささやかな言葉ささげん信の忌 二本
☆第2句座
【特選】
春の雲ながめに帰る故郷かな 通江
鰻筒春の水よりひきあぐる 沙羅
それぞれのかすかな音や春の草 沙羅
ゆさゆさと椿胸ひらくソプラノ 昭子
【入選】
妻古りて姉のごとしよ黄水仙 昭子
『俳句の誕生』松浦寿輝さんが書評
『俳句の誕生』(筑摩書房)について、松浦寿輝さんの書評「放心の詩法」が「ちくま」4月号に掲載されています。
古志みちのく合同句会(平泉)2018年3月17日
☆第一句座(長谷川櫂選)
【特選】
雛流す今宵の入江静かなり 冬虹
田一枚貪り食うて鳥帰る けいこ
ひとすぢの光となりて鳥雲に 由美子
震災の国に現はれ春の月 光枝
けさもまた味見やけさのさくら餅 みさ子
秀衡が跡の田野に牡丹雪 澄照
囀の日に日に増ゆる古刹かな 眞理子
毛越寺南大門跡春立ちぬ 邦世
野遊びや河童が掬ふわすれ水 由美子
【入選】
ふんわりと堆肥根元に牡丹の芽 てい子
みちのくへ師ははろばろと花の句座 雅子
切なさの早春の風原発忌 光枝
淡雪や礎石の語る夢の跡 信
下萌や古道枝道光堂 洋子
誰が供ふ御堂に一つ桜餅 眞理子
三陸の土手は天までさくら冷え みさ子
家伝てふ胃薬どんと雛の段 信
金色の小さき仏福寿草 冬虹
牛舎への靴跡あまた春の泥 てい子
その瞬間の話尽きざる震災忌 冬虹
花束の色の明るさ春動く けいこ
蘇民祭終えて寺領のはだれ雪 けいこ
防潮堤に合掌の列春雪舞ふ 澄照
菩提寺の鐘新しき彼岸かな 夏生
酒造る人かぐはしき弥生かな 志津子
小山羊待つ野原一面犬ふぐり 志津子
春暁や臼に渦巻く餅の湯気 みさ子
☆第二句座(互選)
放牧の牛春光を噛んでをり てい子
校門の傾ぐ廃校ふきのたう 信
風光る野に千歳の能舞台 信
正木ゆう子さん「くまモンと俳句」
次回、第14回きごさい+は、4月15日(日)いつもの神奈川近代文学館で開きます。講師は俳人の正木ゆう子さん。正木さんのお生まれは熊本。ふるさとのお話、俳句のお話をたっぷりうかがいます。ぜひ春爛漫の横浜にお出かけください。
演 題:くまモンと俳句
講 師:正木ゆう子(まさきゆうこ)
プロフィール:俳人。読売新聞俳壇選者。角川俳句賞選考委員。1952年、熊本県生まれ。御茶ノ水女子大学卒業。広告会社でコピーライターとして勤務後、結婚。86年、第一句集「水晶体」を発刊。第三句集「静かな海」で芸術選奨文部科学大臣賞受賞。第五句集「羽羽」で蛇笏賞受賞。
講師のひと言:長谷川櫂さんと私のふるさと熊本は、俳句の盛んな土地柄です。いくつかの要素を拾い上げながら、熊本のことをお話しできたらと思います。
日 時:2018年4月15日(日)13:30〜16:30(開場13:10 講座13:30~14:30 句会14:50~16:30)
会 場:神奈川近代文学館・中会議室(横浜市、港の見える丘公園) 〒231−0862横浜市中区山手町110 TEL045−622−6666 みなとみらい線元町・中華街駅6番出口から徒歩10分 http://www.kanabun.or.jp/guidance/access/
句 会:当季雑詠5句(選者=正木ゆう子、長谷川櫂)投句締切は14:50 句会の参加は自由です。
参加費:きごさい正会員1000円、非会員2000円
申し込み:きごさいホームページの申し込み欄から、あるいはきごさい事務局に電話、ファクシミリでお申し込みください。TEL&FAX0256−64−8333 申込みなしの当日参加もできます。
ネット投句 2018年3月15日 選句と選評
①日本語としてわかるように。
【特選】
初花や仰臥の形に骨の灰 13_東京 神谷宣行
@初花、再考
浅草や三枚の葉の桜餅 14_神奈川 金澤道子
蛇出でて恋の相手を探し行く 23_愛知 稲垣雄二
@ゆく
長閑さに老いの僻耳持て余し 26_京都 佐々木まき
@余す
生きてゆくからだはたけば春の塵 38_愛媛 岡崎陽市
さりながらおなかすかせて朝寝かな 38_愛媛 豊田喜久子
己が身のごとくぬぐひぬ遍路杖 38_愛媛 木下誠
