俳句の相談 「アルペンローゼ」は季語になるか?
【相談】
「アルペンローゼ」は「石楠花」の子季語として季語になりますか? それとも「アルプスの石楠花」と書くべきなのでしょうか?
【回答】
インターネットのサイト「一億人の俳句入門」で「俳句の相談」というコーナーをつづけている。先日、ある男性からこんな相談が寄せられた。「季語の「石楠花」の子季語として「アルペンローゼ」は季語になりますか? それとも「アルプスの石楠花」と書くべきなのでしょうか?」。
アルペンローゼ! アルプスの薔薇! シャクナゲは世界中の山間部に自生しているが、十九世紀の帝国主義時代以降、各地の品種の交配がすすみ、豪華な花を咲かせる庭木になった。「アルペンローゼ」とはヨーロッパのアルプス地方などに自生するシャクナゲの原種である。
さて、この「アルペンローゼ」を石楠花の子季語として使えるかどうか。もちろん使える。歳時記でまだ認知されていない季語や子季語がいくらも眠っているからだ。
ただし「アルペンローゼ」にかぎらず、植物の季語について知っておくべきことがある。
植物にはさまざまな種類がある。ただしそれはみな植物学上の分類名、つまり科学の言葉であって、そのまま俳句の季語として使えるわけではない。つまり歳時記は植物図鑑ではない。
なぜなら植物学上の分類は俳句にとっては細かすぎ、煩わしすぎる。長くて使いづらい。一方、俳句の言葉は科学ほどの精密さを要しない。むしろおおざっぱなほうがいい。サクラにもさまざまな品種があるが、俳句では「桜」で十分。せいぜい山桜、枝垂れ桜くらいの区分けですむ。
細かな分類の名称を使えば、俳句はいよいよ細かくなってゆくだろう。「アルペンローゼ」「アルプスの石楠花」も単に「石楠花」でいいかもしれない。(「古志」2019年6月号「俳句自在」から)