古志鎌倉句会(2019年5月5日)
席題=蟹、雪渓
【特選】
衣更へて新参者のすがしさよ 千方
雪渓のましろき蝶に転生す 千方
夢の中まだ掻きをるや田掻牛 靖彦
高う低う傾げる急須新茶汲む 靖彦
蟹赤しひとつの時代終りけり 秀子
桃の花はるか山廬へつづく道 光枝
鉄鍋にザリガニを茹でジャズ流れ 遊歩
手に入れて自由はさみし鰻食ふ 孝予
すぐ怒る蟹を素揚げとしたりけり 麒麟
【入選】
ひややかな茄子漬の夏来たりけり 洋子
美しき影をつくるや夏帽子 洋子
新しきリュックで行かん麦の秋 洋子
沈黙の大雪渓へ歩み入る 一郎
少年は野球しかなし柏餅 一郎
夏立てり本棚に本戻す音 一郎
月山の雪渓あをき静寂かな 美津子
山鳩のこゑなつかしき朝寝かな 美津子
もう髪は染めぬと決めて更衣 美津子
三十年富士ある暮し更衣 侑子
花韮に戦後なつかしトタン屋根 侑子
杜若静かな波を通しけり 麒麟
又一つ波の抜けゆく杜若 麒麟
還らざる人を悼まん大雪渓 梅子
沢蟹のでんぐりがへるバケツかな 梅子
花韮の星がまたたく庭となる 順子
ちらりとも顔は見えねど茶摘唄 順子
稲村ヶ崎白々と夏来たりけり 英樹
牡丹の花ひとつづつ仏かな 英樹
大いなる拙をやしなへ柏餅 千方
ざりがにを釣つて副食戦火の日 邦紀
鹿の子のはや人に付くあはれさよ 光枝
鞭くれてあと一周や田掻牛 靖彦
山小屋へ霧の雪渓のぼりゆく ひろし
のどけしや乳を搾れと牛の声 振昌
葉桜のもとに青年四人かな 孝予
連休の土産にどさとズワイガニ 益美
ほととぎすその日は晴れと曾良日記 宣行