俳句の相談 古池の句の解釈は?
【相談】
『芭蕉さん』(講談社)の選句と解説 を読ませていただきました。「芭蕉さん」の素晴らしいさを紹介していただきまして、ありがとうございます。
自分が持っている幼稚園児のクラスで読もうと思い 、まず最初に自分で拝読いたしました。
古池や蛙飛びこむ水のおと 芭蕉
古池にカエルが飛びこんで水の音がしたというのではありません。カエルが水に飛びこむ音を聞いて、心の中に 古池が浮かんだという句です。この解説は深く物事を考えることのない私を吹き飛ばしました。
以来ずーっと考えているのですが、この言葉の並びのどこで 、どの部分で「水の音がした、というのでなく、心に古い池が浮かぶ」と解釈できるのでしょうか。
言葉の意味から「蛙が水に飛びこむ音」を聞き 、ここから想像が始まり、水の波紋が広がって行き、波紋が薄れた先は古びた池の縁だ、ということなのでしょうか。
失礼を承知で尋ねさせて頂きました。なお私は俳句を読ませては頂きますが、作りません。なので俳句の知識はありません。申し訳ございません。よろしくお願い申し上げます。
【回答】
メール拝読しました。
古池の件については、まず弟子の各務支考(かがみ・しこう)の聞書き(『葛の松原』)に「蛙飛こむ水のおと」と呼んだあと「古池や」と置いたとあります。これからわかることは、蛙が水に飛びこむ音を聞いて古池を心に思い浮かべたということです。
次に切れ字の「や」はしばしば「戻る」働きがあります。つまり「古池や」は最初に置かれていても「蛙飛びこむ水のおと」を聞いて心に浮かんだイメージということです。
詳しくは拙書『俳句の誕生』(筑摩書房)をお読みください。