高野山月見句会(2018年9月23、4日)
【特選】
なまぐさき空海の書や山は秋 沙羅
穢れたる五体を月に晒しけり 二本
修行などかなはぬわが身茸汁 久美
高野山の月借り切つて句会かな 雄二
石ころか露ひと粒かこの身体 京子
叡山の月なつかしや高野山 沙羅
空海にたぶらかされて今日の月 二本
大杉の巨大な秋の骸かな 淳子
億年の一日の月を坊泊り 久美
名月や立ち上る石眠る石 光枝
*
長き夜や襖挟んで鬼眠る 雄二
たてよこに水切り出して新豆腐 久美
身中の虫もいで来よけふの月 佐幸
騙さるる身の法楽やけふの月 りえこ
高野山大きな秋の来てゐたり 玲子
清々しき男のごとしけふの月 一爽
みろく石饅頭となり月の宿 洋子
おほらかに惚けるもよし鉦叩 りえこ
瞑想といふ山霧の如きもの 美那子
【入選】
月浴びて高野聖となるもよし 一郎
金もくせい銀もくせいや山の寺 りえこ
一山に百の坊あり鰯雲 ひろし
叢雲の中より光るけふの月 沙羅
高野山月光界の只中に 佳余子
ことによし月夜の芒をみなへし まき
大黒の手作りならし渋皮煮 美那子
お大師のつむりのやうなけふの月 梅子
高野山さながら月の都かな 英樹
いちじくのとろりと煮ゆる良夜かな 美津子
宿坊に旅の荷を解く良夜かな 京子
けふの宿銀木犀の香の中に 梅子
弘法の筆をこぼれてけふの月 忠雄
煩悩をこなごなにせよ鉦叩 竜樹
高野豆腐味よくしみて秋の風 美津子
萩の庭夜ごとに月の太りつつ 育子
死者生者ともにもの食ふ良夜かな 忠雄
空海に母おはしけん柿の秋 美那子
空海のみ山に遊ぶ秋彼岸 美那子
蓮華座に人集ひきて月見かな 京子
月見ゆるところへ蒲団ひつぱつて 一郎
松茸や梵字のごとく皿の上 竜樹
名月や大師にささぐ芋・豆腐 佳余子
木瓜の実のその大きさをはやしけり 孝予
空海も恋したりしか良夜かな 英樹
大薬缶出汁注ぎ廻る月の膳 雄二
高野杉月のしづくをこぼしけり 洋子
煩悩の万の燈籠けふの月 玲子
浄土より来たる大きな白き露 洋子
秋風に痛む足腰陀羅尼助 光枝
高野山の月より白し胡麻豆腐 梅子
銀やんま眼曼荼羅飛び来たる 光枝
蔓も葉もみないただかん月の膳 久美
宿坊に香木ありや銀木犀 佳余子
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庭前の楓をそへて新豆腐 二本
夜寒朝寒坊の丹前ありがたし 英樹
新米のこの一粒も大師かな 英樹
最澄は栗空海は桃ならん 英樹
高野山夜寒のこころいかにせん 美津子
月光のかをりなるらん銀もくせい 玲子
月のぼる甕に芒はひらきつつ 育子