古志厳島句会 2018年9月1、2日
【特選】
生姜飯草のかそけき味愛す 通江
けふもまた暑し暑しと大鳥居 真知子
老鹿の人に倦みたる眼かな 忠保
大いなる夏の名残の草刈らん 一雄
今日濡れて明日美しき鹿の角 紫春
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豚の子の五匹生まるる良夜かな 忠保
宮島の秋を叩きて石叩き 光枝
宮島の御紋の盃へ新走り 嘉子
新米のことに嬉しや大杓子 りえこ
小牡鹿は細き面を上げにけり 京子
鏡池の鏡に立てり秋の鷺 通江
産毛まだ少し残るか袋角 嘉子
廻廊の柱のかげに秋の人 京子
台風を迎へ撃つべく大杓子 光枝
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いや紅し神の畑の唐辛子 光枝
荒るるだけ荒れて花野となるもよし 一雄
鶏頭や死ぬほどの恋死ぬまでに 紫春
引上げて舟休まする水の秋 一雄
秋潮の鳥居をくぐる舟一艘 沙羅
影もまた風にさすらひゆく秋よ 京子
宮島の闇麗しき狸かな 秀也
さ牡鹿は一夜を露と眠りけん 光枝
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秋昼寝からだの上を風とほる 京子
色変へぬ松のこやしや鹿の糞 嘉子
まつ白のまわしがまぶし草相撲 紫春
【入選】
波の引く音さへ秋の深みけり 真知子
新涼や四肢に一喝立てよかし 紫春
秋潮に浮かぶや朱の大鳥居 沙羅
宮島や暑気払ひさて何食はん 嘉子
蝉の骸ばらばらにして蟻の道 一雄
秋風や何処へ消えしか大杓子 真知子
潮の香も秋の風情や船降りて 紫春
忽然と朱き鳥居や海の霧 光枝
宮嶋の牡蠣は女神の乳の味 嘉子
おそろしや女神の山の霧雫 りえこ
新涼やほろりと崩れめばるの身 みほ
島の道おほかた覚え秋の晴 真知子
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ただならぬ空の暗さや新松子 沙羅
頂上に奇巌ごろごろ秋の風 一雄
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秋風や波もて洗ふ能舞台 一雄
さはやかや弥山にかかる雲もなく 紫春
草臥れて秋の昼寝をしたきかな 沙羅
川通り餅新涼の顔並びけり 光枝
舟できて舟を足場に松手入 一雄
清盛の見果てぬ夢や穴子飯 沙羅
かなかなやこんにやく刺は箸に揺れ 秀也
宮島の秋こそ平家物語 京子
首のべてさ牡鹿食むや初紅葉 光枝
宮島の狸は誰の使者ならん 秀也
月白や山に帰りて眠る鹿 沙羅
枕辺に一夜虫聞く厳島 光枝
海の鳥居くぐりて紅葉見にゆかん 嘉子
打ち寄する波は金銀秋の声 嘉子
+
松茸の太つてゐるか厳島 真知子
幾千の杓子の並ぶ秋の風 光枝
穴子待つ秋の団扇のかたはらに 光枝
潮引いて潟にあらはれ秋の川 遊歩
新涼や赤白ピンク常備薬 紫春