飛岡光枝 says:2012年2月3日 at 7:36 PM
木下洋子さんの第一句集『初戎』(花神社)を読みました。
絵筆置きあらと思へば春の雪
この句から始まり、春、夏、秋、冬、新年を二回りする構成は軽やかで、生き生きとした247句が並びます。読み進むうちに、やはり木下さんはとても人間が好きなんだなという思いに至りました。
夜明けから夫婦でつくる草の餅
休まれし人の分まで花詠まん
町ぢゆうで守つてをりぬ座禅草
貰ひたる柚子ありがたき柚子湯かな
冬帽子桜の山を見回りに
どの句も人への愛情に溢れ、人に寄りそって詠まれています。その愛情は、また、虫や動物、植物へも注がれます。
花びらにしばし休むかあめんぼう
どこまでも揚がるつもりの雲雀かな
青梅や梅酒になるか梅干か
どんぐりの一つ一つに未来あり
猫じやらしあたたかさうに枯れてをり
そして、今生、一緒に過ごしているすべてのものに。
風鈴のやつと鳴りたるうれしさよ
凩にさらはれさうなラーメン屋
雪の雲こらへきれずに降りだしぬ
若菜粥五臓六腑よありがたう
みなが陥り易い小利口な表現の誘惑を軽々と飛び越えて、森羅万象への愛情を素直に大らかに詠います。木下さんの目指す俳句は、親しんでいる狂言に通じるものがあるのかもしれません。
お腹から声で笑はん初稽古
できないと言へばできると初稽古
そして、もうひとつ。何度も句座を共にしてきた私には、愛情深い木下さんの句はともすればその思いがストレートに出過ぎる印象がありました。でもこの句集ではみごとに思いが昇華されて、普遍的な佳句が並びます。「句集を編む」ことの意義を改めて感じさせてくれる一冊でもありました。
人波や我も飛び込む初戎
