古志鎌倉句会(2016年12月17日)
席題=火事、蝋梅、事始
【特選】
遠き火事見るがごとくに生きてきし 川村玲子
山火事のあとの木々けさ氷りけり 川村玲子
山眠るごと羊羹が皿の上 加田 怜
枯蔓のじつと春待つ日数かな 加田 怜
湯豆腐は俳句の味に似たるかな 井上じろ
蕎麦湯分け合うて別れを惜しみけり 石塚直子
マネキンの首だけたてて鳥威す 加藤あつ子
庭の柚子ほめて一緒に湯につかる 神谷宣行
過ぎし日の俤もなし古暦 葛西美津子
闇を舐め喰ひつくさんと火事勢ふ 趙 栄順
蝋梅の光則寺まで坂きつき 土筆のぶ子
この熾のさかりて火鉢割るきほひ 園田靖彦
霜柱誰が靴踏まん青瓦台 鈴木伊豆山
【入選】
焼藷温さうな人さびしさうな 上村幸三
片付けん枯れてしまへばすべて塵 上村幸三
激動の世界はじまる寒卵 上村幸三
宿題も内職もこの炬燵かな 関根千方
遠火事としてはならざる戦火かな 関根千方
いま冬や茨にひとつ白き花 関根千方
ルンバにはまかせておけぬ大掃除 葛西美津子
凍てて立つ柱幾本火事の跡 葛西美津子
事始肝腎なことあとまはし 川村玲子
年用意磨きて硝子なきごとし 川村玲子
生きて来て一番のよき年惜しむ 神谷宣行
大富士や雲を払ひて事始 神谷宣行
蝋梅や岸恵子の家この上に 間宮伸子
煮込むほど霙のいろに蕪かな 間宮伸子
頭からぶつかり合つて寒稽古 片山ひろし
俳句にも欲しき火事場の馬鹿力 西川遊歩
鎌倉の客も減つたり事始 大平佳余子
うれしさは白菜漬けて水あがる 那珂侑子
刺子して火事装束の分厚さよ 大場梅子
祖母の部屋出たり入つたり事始 田中益美
遠戚の人に会ひたり火事見舞 樫根勝子
名を継ぐは舞を継ぐこと事始 金澤道子
いつまでも咲いてゐるなり返り花 飛岡光枝
生きてあることの不思議よ寝正月 山田洋