古志鎌倉句会(2016年11月19日)
兼題=展宏忌
席題=着ぶくれ、返り花
【特選】
綿虫にこころしたがふ展宏忌 秀子
凩の口笛聞かば展宏忌 美津子
じつとゐて胸熱くなる枯野かな 怜
底知れぬ人の冷たさ着ぶくれて 一郎
展宏忌姿勢正しき人であれ 梅子
我知らぬ心の奥の返り花 光枝
帰り花遠き昔の恋ならん 栄順
静けさをわが物として寒鮒釣 英樹
【入選】
来し人は稲藁焼のにほひかな 一郎
切除てふ治療のひとつ帰り花 一郎
いつか来るまぼろしの春展宏忌 一郎
自転車のチェーン擦るる寒さかな じろ
まぶしさの極まつてゆく冬日かな じろ
風呂吹を吹いたりもして展宏忌 じろ
皮のまま食べる若さよ冬りんご 侑子
洋梨を貰つてうれし展宏忌 侑子
冬の富士三日見ざればなつかしく 侑子
綿埃きらりきらりと日短 振昌
我らみな俳諧亡者展宏忌 振昌
台所早くも暮れてしまひけり 振昌
芳しきもののひとつに冬日差 栄順
美しき女体なるかな山眠る 栄順
日だまりの垣にやすらふ返り花 東子
わかめちやんなんて呼ばれて七五三 東子
冬すみれ谷戸にやうやく日の回り 道子
同じこと笑へる人と冬ごもり 道子
となりから鉢植もらふ日向ぼこ 益美
郵便を出して一息返り花 益美
小春日に干さん沖縄眠り草 正和
人生のここに湯気あげ大根炊く 光枝
大垣城東西南北山眠る 順子
柿すだれ隙間だらけとなりにけり 秀子
熱燗や地獄に堕ちた者同士 宣行
展宏忌錦市場に鰤並ぶ ひろし
まだ青き並木の柳展宏忌 のぶ子
冬麗の落とせし欠片鷹の爪 美津子
返り花まぼろしのごと露の中 玲子
熱燗やあともう一杯展宏忌 涼子
着ぶくれて氷れる星に住む我ら 梅子
楸邨にあまたよき弟子花梨の実 英樹