俳句自在49/一滴の宇宙
岡野弘彦(乙三)さん、三浦雅士さんと巻いた歌仙集が新年早々、出版される。題して『一滴の宇宙』。七巻の歌仙を収めるが、表記を大胆に変えた。一例をあげれば、
新しき
さびしさもあり
春の雪 雅士
桜の木肌
まづはつやめく 乙三
きのふより
けさ麗かに
富士真白 櫂
玩亭(丸谷才一)追悼歌仙「春の雪」の発句、脇、第三である。このように表記を開くまでの試行の過程と意図については三浦さんの跋に詳しいのでお読みいただきたい。
三人でときどき議論になるのは、現代詩や小説のように歌仙にも主題が要るか、要らないかということである。まだ結論に達したわけではないが、歌仙が一句ごとに予測できない新しい世界へ転じることを宗とする文学である以上、主題は成り立たないだろうというのが私の考えである。
『一滴の宇宙』の中にも、玩亭追悼、乙三邸訪問、乙三先生卒寿の賀のような歌仙があるが、たとえ発句に主題があり、脇がそれを受けたとしても第三になれば、たちまちその主題は煙のように消えて別の天地が開ける。これが歌仙である。
ただ音楽の変奏曲のように主題が幾度か変奏されて密かに繰り返されることはあるのではないか。『一滴の宇宙』の新しい表記法によって気がついたことである。(「古志」1月号「俳句自在49/一滴の宇宙」)
返信
KAI says:
2015年1月1日 at 12:45 AM (Edit)
歌仙「春の雪」の引用、縦書きを想像して読んでください。横書きだとまったくダメ。ただ横にズレるだけで、声の低さとか深さが出ない。俳句もそうです。(長谷川櫂)
