UFO says:2013年3月20日 at 5:42 PM
台北遊歩③
海の細道・台北俳句会+旅話
西川遊歩
台湾故宮博物院の歩き方
日曜日の朝、台湾故宮博物院へ、地下鉄とバスを乗り継いで出かけた。とても混んでいる。中国大陸からの観光団体客の怒涛のような来訪に対して、観光名所で他の観光客から苦情が多いとの噂は聞いていた。まさに故宮博物院で、大きな中国からのグループの観光時間とぶち当たってしまった。玉の彫刻の名品「肉形石」(豚の角煮)と玉の細工の人気NO.1.「翠玉白菜」(白菜ときりぎりす)、小さなオリーブの種に細工した「彫橄欖核舟」を観るために長陀の列が出来ている。その列に「静粛に」というボードを持った無言の係員がグループの間を巡回する。それでも、とても、う・る・さ・い。
そこで、私(たち)は一計を案じ、列のすき間を「すいません、私たちは個人客で、前の日本人グループに合流します」という高度な身体表現をもって、一気に「白菜」の前までたどり着かせていただいた。
今回、私が目差すのは、陶磁器の展示セクション。ここの中国陶磁器のコレクションの充実度は群を抜いており、とくに中国磁器の白眉と言われる宋の時代の優品が揃っているのだ。
北京から日本軍の攻撃を逃れるために一級の文物コレクションを地方都市に疎開させ、途中から毛沢東の蜂起があり、破壊寸前の運命に晒される。台湾の故宮への移送のプロセスは、『海の細道』にも書かれているように、危機一髪で難を逃れて、今、それらの宝物が台北故宮博物院に60万点以上(展示できるのは1%)存在する。それを観るために中国本土からどっと観光客が押し寄せているのは、皮肉な景色でもある。
宋の時代の陶磁器に話を戻す。中国の官窯で焼かれたものは、完璧のものしか残さず、ひび割れやひしゃげを面白し、と評価する日本とは異なる美の基準をもつ。例えば、定窯の白磁の最高の器を前にすると、品格漂うパーフェクトがそこにある。お馴染みの竜泉窯の砧青磁花生も凛としてこちらを見ている。
今回の私のお目当ては、汝窯の青磁である。5点ほど美しい青い器が並んでいる。じっくり眺める。「雨上がりの青空」とも形容されるその色に吸い込まれる。
「汝窯の青磁は、この世に32点ほどしか存在せず、そのうちの23点がここ故宮博物院にあります。汝窯がどこにあったかも、近年まで謎でした」日本語ガイドの声も汝窯青磁の前で少し高まるように感じられる。この世に三十数点(*)とは、フェルメールの絵画並みの希少価値に驚く。その日は、博物院の二階フロアーを、主に宋時代の名品、逸品を集中的に鑑賞しつつ、明るいプルーの汝窯の青磁、とりわけ「青磁無紋水仙盆」の前に、何度も立ち戻りいとおしんだ。
午後の句会の時間を気にしながら、博物院の4階にある乾隆亭の書斎を復元した茶楼「三希堂」に駆けつける。中国風の素敵な室内空間で、過去、何度もお茶を飲んだことはあるが、初めてランチのコースを注文。
1)きのこ薬膳スープ、2)青菜の炊き込みご飯、3)蒸し煮にされた豚肉(東坡肉)、4)甘酢餡かけの魚、5)パパイヤと木耳の甘いスープ(デザート)、6)蓮の芯の養生茶 優雅な宮廷書斎空間での、春の季節感あふれる昼餉を心から楽しんだ。
蓬莱(**)の蒸篭つぎつぎ菜飯かな 遊歩
台湾句会での俳句③
誉め合ひて貸農畑の大根引く 李錦上
口下手のその親しさの煮大根 林美華
観音山八里淡水春隣 菫昭輝
家庭では大根切るすら出来ぬ医者 張継昭
寒波くる折り畳まれし車椅子 高實雪
寒紅を買うて一輪花買うて 趙栄順
つつがなき明け暮れ大根おろしをり 石川桃瑪
幸さながらに一本の大根あり 長谷川櫂
秋風が寒食帖(+)をさらひしか 櫂(BY 海の細道)
つづく(*汝窯青磁のトータル点数約70点の資料も。**蓬莱、蓬莱島は台湾の異称でもある。+蘇東坡の書の名品)
