古志金沢ズーム句会(2025年6月15日)
第一句座
当季雑詠
・鬼川こまち選
【特選】
一枚の月のひかりや夏布団 松川まさみ
死ぬことは脱皮かもしれず心太 土谷眞理子
あの世より取り残さるる昼寝覚 宮田勝
ひそやかに喰うて蛍の舞ひにけり 趙栄順
草笛や遠き日に触れるくちびる 清水薫
薔薇一輪夕日が崩しゐるところ 趙栄順
精霊の掛けて行きけりさるをがせ 酒井きよみ
裸の子抱けばずつしりやはらかし 藤倉桂
桜桃忌暗渠の水のがうがうと 飛岡光枝
【入選】
梅雨深し終の栖の水の星 安藤久美
氷水薔薇の香れる蜜をかけ 飛岡光枝
葉つぱごと野枇杷を瓶に花のごと 近藤沙羅
大南風子の決断を応援す 氷室茉胡
ひと雨に山は太りぬ青葉かな 松川まさみ
紅花畑腰で分け入り花を摘む 飛岡光枝
舟ゆらし太古の沼の蓴摘む 梅田恵美子
白山や逆さまに焼く大岩魚 稲垣雄二
行々子年々増ゆる放棄田よ 藤倉桂
限りある私と地球と大氷河 梅田恵美子
・長谷川櫂選
【特選】推敲例
母の鏡黴の鏡となりゆくも 飛岡光枝
一枚の月のひかりや夏布団 松川まさみ
花摘むと腰で分け入る紅花畑 飛岡光枝
【入選】
経一巻僧百人の喪の九夏 鬼川こまち
百歳の命さきはへ菖蒲の湯 宮田勝
店番をしつつ梅干す裏の庭 花井淳
死ぬことは脱皮でありき心太 土谷眞理子
死してのち了る俳句や蚊遣香 土谷眞理子
花びらの乙女の肌を薔薇のジャム 鬼川こまち
潮騒やサマードレスの胸深く 玉置陽子
かき氷薔薇の香りの蜜をかけ 飛岡光枝
ふるさとは滴る山の懐に 橋詰育子
何もかもみな厄介や昼寝せん 松川まさみ
灯明の今日まだ消せず梅の雨 清水薫
鹿の子の眸は月を映しけり 田村史生
西日濃き三畳一間わが青春 氷室茉胡
白山を逆さまに焼く岩魚かな 稲垣雄二
息入れてみよ父の日のハーモニカ 松川まさみ
かぎりある私と地球大氷河 梅田恵美子
第二句座
席題:「簾」、「夏の蝶」
・鬼川こまち選
【特選】
目の前を夏蝶よぎる母の声 藤倉桂
いちまいの簾に分かつこの世かな 安藤久美
一茎を咥へては編む簾かな 玉置陽子
あをあをと淡海の風軒すだれ 玉置陽子
昭和果つ簾仕立の海の家 間宮伸子
簾して俗世の風を和らげん 清水薫
【入選】
青簾巻けば真夏の来てゐたり 田村史生
生と死を静かに分ける簾かな 稲垣雄二
夏蝶を追ふて峠を越えにけり 梅田恵美子
ややと寝る産後の妻や青簾 稲垣雄二
いづこより涌き來るものか夏の蝶 近藤沙羅
磨崖仏の視線をよぎる夏の蝶 土谷眞理子
山門へあざやかに飛ぶ梅雨の蝶 花井淳
我が泣くの句碑を離れず夏の蝶 清水薫
・長谷川櫂選
【特選】推敲例
一茎を咥へては編む簾かな 玉置陽子
夏蝶や雲のあはひの高山寺 安藤久美
羽ふるへ青すぢ揚羽水を吸ふ 橋詰育子
【入選】
百年の我が家愛しや青簾 藤倉桂
簾吊る心に風のなき日かな 趙栄順
お御堂をめぐりて空へ夏の蝶 花井淳
一見を拒む老舗の簾かな 越智淳子
空の道つぎつぎに來る揚羽かな 近藤沙羅
夏の蝶草に止まりぬ黒唐津 山本桃潤
浅野川ひかり遊べる簾かな 松川まさみ
湯治場をざつくり分かつ簾かな 田村史生
花もなき野をただよへり夏の蝶 梅田恵美子