古志広島ズーム句会(2025年6月1日)
第一句座
矢野京子選
【特選】
ほうたるや息吐く力吸ふ力 原京子
うつし世は去りがたき夢冷奴 今村榾火
夏山や円盤に乗り飛ぶごとく(大宰府天満宮仮拝殿) 長谷川櫂
血涙の色かとおもふ梯梧咲く 大場梅子
麦秋の声よ嗄るるなゼレンスキー 神戸秀子
【入選】
推敲や髪切虫の容赦なく 城山邦紀
わが暮し金魚の目にはつまらなく 矢田民也
米蔵の米は空つぽ青嵐 安藤文
飛梅の実梅といへばことのほか 斉藤真知子
戦なき世界見ゆるか朴の花 瑞木綾乃
初鰹氷りしままを包丁す 安藤文
ガジュマルの葉陰裸の三尺寝 臼杵政治
サングラス私を名乗る私の名 高橋真樹子
半裂の片眼潰して存へり 矢田民也
やはらかき水を枕に未草 斉藤真知子
人踏まぬ土やはらかし夏わらび 石塚純子
楼蘭の乙女の塵か霾るは 長谷川櫂
里に来て母かも知れず初蛍 駒木幹正
がまがへる仏の顔で虫喰らう 安藤文
長谷川櫂選(推敲例)
【特選】
真緑の煮梅一粒忌を修す 大平佳余子
人触れて泰山木の花腐す 今村榾火
人踏まぬ土はやはらか夏わらび 石塚純子
【入選】
冷し酒男は母を恋ふるもの 矢野京子
早苗田を右へ左へ伯備線 ももたなおよ
飛梅の実梅ときけばことのほか 斉藤真知子
戦なき世界みゆるか朴の花 瑞木綾乃
初鰹氷りたるまま包丁す 安藤文
真つ白な麻のハンカチ更衣 神戸秀子
野に森に蝶おびただし沖縄忌 神戸秀子
うつし世は去りがたき夢冷奴 今村榾火
半裂の片眼潰れて存へり 矢田民也
やはらかな水を枕に未草 斉藤真知子
あぢさゐや風が手鞠をつくごとく 矢田民也
睦五郎干潟の国を守るべく 今村榾火
ゼレンスキーの声よ嗄るるな麦の秋 神戸秀子
横綱の風格はやも五月場所 金田伸一
句作りのはかどらぬ夜を青葉木菟 安藤文
天地の静かなる田を植ゑにけり 今村榾火
白き花咲きつぐ信濃走り梅雨 石塚純子
田植歌古米古古米古古古米 大平佳余子
誰もかもスマホ見てゐる薄暑かな 安藤文
虫喰らふ仏の顔のがまがへる 安藤文
いまも来るか鎌倉駅の初燕 神戸秀子
第二句座(席題:額の花、夏布団)
矢野京子選
【特選】
額の花太宰の墓も黄昏れて 岡村美沙子
夏掛やあるかなきかに人の上 長谷川櫂
紫陽花に嫉妬してゐる額の花 安藤文
【入選】
七十のみなしご同志夏蒲団 神戸秀子
一晩中けられひねられ夏蒲団 大平佳余子
額の花重なりあふて点描画 ストーン睦美
親ふたりそして胎の子夏布団 高橋真樹子
夏蒲団デッキに干せる護衛艦 今村榾火
夏布団けふもさよならホームラン 金田伸一
長谷川櫂選(推敲例)
【特選】
七十のみなしご同志夏蒲団 神戸秀子
音立ててくる山霧に額の花 神戸秀子
親ふたりそして胎の子夏布団 高橋真樹子
【入選】
夏掛けを送ると母の手紙来る 臼杵政治
早起きの鳥が窓辺に夏布団 矢野京子
新婚の二人に選ぶ夏布団 上松美智子
夜もすがら引くも跳ねるも夏布団 駒木幹正
夏布団母は小さくなりにけり 石塚純子