古志広島ズーム句会(2024年8月4日)
第一句座
・矢野京子選
【特選】
原爆忌猛暑酷暑と言ふなかれ 加藤裕子
八月の炎の中へ黙祷す 高橋真樹子
朝顔に水たつぷりと原爆忌 斉藤真知子
影置いてゆきし人あり原爆忌 今村榾火
暁闇の風ひやひやと原爆忌 長谷川櫂
【入選】
水輪生る蜻蛉が水に触れるたび 加藤裕子
原爆忌あるは日本だけでよし ストーン睦美
けふの汗と嘘をシャワーで流しけり ストーン睦美
みそはぎの花のこぼるる草の市 大平佳余子
退院や二歩三歩ゆく喜雨の中 城山邦紀
火蜥蜴の日本列島秋に入る 長谷川櫂
一歳の姉の小さき墓洗ふ 大場梅子
まだまだとおもひをりしが生身魂 大平佳余子
あの日知る患者の瞳広島忌 瑞木綾乃
朝顔の鉢も吹き飛ぶ雨と風 上松美智子
桃ひとつ夫の帰りを待ちにけり 高橋真樹子
面子遺しヒロシマの子よ原爆忌 加藤裕子
・長谷川櫂選 (推敲例)
【特選】
桑の実やもう跡形もなき故郷 今村榾火
ただ白き炎となりて遍路ゆく 神戸秀子
八月の炎の中で黙祷す 高橋真樹子
一日の嘘をシャワーで流しけり ストーン睦美
【入選】
山の声風の声聴く墓参かな 矢田民也
キノコ雲見たるその日を語り継ぐ 加藤裕子
孤独なる七万柱広島忌 駒木幹正
あをあをと佐渡の金山けさの秋 安藤文
原爆忌死の意味さへも知らざりき 大場梅子
退院や一歩一歩と喜雨の中 城山邦紀
一歳の姉の小さき墓洗ふ 大場梅子
被爆樹の診察けふも広島忌 矢野京子
朝顔の鉢も吹き飛ぶ原爆忌 上松美智子
樹々もまた苦しみし日々広島忌 矢野京子
壁一枚生死を分かつ広島忌 瑞木綾乃
冷やされて白桃ひとつ夫を待つ 高橋真樹子
ヒロシマの子らのメンコよ原爆忌 加藤裕子
第二句座(席題:秋立つ、西瓜)
・矢野京子選
【特選】
ひと晩は厨で眠る西瓜かな 斉藤真知子
こころにも目あり耳あり秋立ちぬ 大場梅子
妻とゐてけさ秋のこの涼しさは 長谷川櫂
【入選】
谷水に浸ける西瓜と踵かな 駒木幹正
この地球割るがごとくに西瓜切る 安藤文
ポンとよき音する西瓜ぞ三個買ふ ももたなおよ
大雪の水より冷えた西瓜喰ふ 高橋真樹子
三六〇度取りつく島もなき西瓜 ストーン睦美
・長谷川櫂選 (推敲例)
【特選】
幾万の折鶴となり秋立ちぬ 高橋真樹子
死ぬ前に婆に食わせん吾が西瓜 岡村美沙子
西瓜乗せ子を歩かせて乳母車 神戸秀子
【入選】
谷水に浸ける西瓜とわが足と 駒木幹正
ひと雨に森ムンムンと秋立てり 斉藤真知子
秋立つや紅茶の白き碗にさへ 神戸秀子
孫のため畑に育ておく西瓜 瑞木綾乃
水で洗ふ菜はあをあをと今朝の秋 石塚純子
三六〇度西瓜取りつく島もなし ストーン睦美
不出来なら鴉にくれてやる西瓜 矢田民也