古志仙台ズーム句会(2024年2月25日)
第一句座
長谷川冬虹選
【特選】
麦青むかつては瓦礫置き場かな 宮本みさ子
目も口もあらずほほゑむ紙ひひな 長谷川櫂
ずたずたの雪間となりぬ千枚田 武藤主明
蔵王は父月山は母みな春山 長谷川櫂
【入選】
蘆の角津波襲ひし校舎跡 阿部けいこ
牛の背の向かうに廃炉原発忌 青沼尾燈子
今どこで何してゐるや震災忌 佐伯律子
原発忌置かれしままのランドセル 青沼尾燈子
三月やあれから君は龍宮か 及川由美子
鶯はなかなか枝を決められず 平尾 福
小さきもの小さく死にけり原発忌 服部尚子
波をたて波をなだめつ紙漉き師 石川桃瑪
長谷川櫂選(推敲例)
【特選】
十三年前になくしたままの春 三玉一郎
また眠る山また山や春の雪 武藤主明
原始我ら火を畏れけり原発忌 臼杵政治
原発忌それでも海は捨てられず 三玉一郎
春の風かうして海は鬼となりき 三玉一郎
【入選】
耳遠き連れと大声梅見かな 上 俊一
取り分くる箸に鶯餅歪む 石川桃瑪
鳴く鳥よ瞬く星よ震災忌 谷村和華子
春潮や津波砂漠の三陸へ 及川由美子
ずたずたの雪間となりぬ千枚田 武藤主明
分け合ひて蒲鉾ちさし雛の膳 服部尚子
そしてまた花を待つ日々震災忌 三玉一郎
十年(ととせ)経て記憶は忌憶大震災 石川桃瑪
汚染水言へば失職原発忌 川辺酸模
漂着のわかめに髪のにほひあり 宮本みさ子
奔流に押し戻さるる流し雛 武藤主明
今さらに地震列島原発忌 上 俊一
春日向十三年も経ちたるか 長谷川冬虹
フクシマも燕来るころ原発忌 川辺酸模
散骨の日和賜り春の海 宮本みさ子
いまごろは桃の咲くころ被爆村 川辺酸模
第二句座(席題:田螺、野焼き、柳の芽)
長谷川冬虹選
【特選】
草を焼く猛獣使ひの男ども 三玉一郎
眠さうな顔をしてゐる田螺かな 平尾 福
野火果てしカルデラ高く鳶の舞ふ 川辺酸模
天と地をつなぐ焔よ野火猛る 上村幸三
信長となりて全山焼き払ふ 臼杵政治
【入選】
少年が立ち止まり見る野火のいろ 及川由美子
母恋し乳房恋しと田螺かな 長谷川櫂
煌めいて遠目に著し柳の芽 及川由美子
芽柳のほぐるる四十九日かな 臼杵政治
水際へ追立てらるる野焼きの火 武藤主明
村中を眠らせ田螺鳴いてをり 平尾 福
人は火を畏れ操り山を焼く 齋藤嘉子
芽柳や越後杜氏の帰る頃 武藤主明
長谷川櫂選(推敲例)
【特選】
眠さうな顔をしてゐる田螺かな 平尾 福
日のさして田螺の家族うごめきぬ 川村杳平
今はもう田螺の味も忘れたり 武藤主明
【入選】
長靴の中ちやぷちやぷと田螺とる 佐伯律子
水際へ追立てらるる野焼きの火 武藤主明
枯草はもんどりうつて野火になり 上村幸三
煙から男逃げくる野焼きかな 上村幸三
水口へ田螺の曳きし道数多 佐藤和子