古志金沢ズーム句会(2024年2月18日)
第一句座
当季雑詠
・鬼川こまち選
【特選】
刀傷舐めて出てゆく猫の恋 山本桃潤
躪られて毀されてなほ木の芽吹く 玉置陽子
いちはやきミモザの花の虚空かな 梅田恵美子
一塊の銅となり乾び鮭 玉置陽子
十七音詩となるまで耕さむ 玉置陽子
岩海苔や隆起して海涸れ果てつ 長谷川櫂
【入選】
腸に一太刀浴びん梅の花 土谷眞理子
かたはらにひねくれ一茶冬ごもり 安藤久美
無愛想な和菓子屋なれど桜餅 清水薫
倒れ伏す能登の柱や春動く 梅田恵美子
きさらぎのをんな黒衣をひるがへす 安藤久美
龍太忌の龍太のことば冴返る 趙栄順
廃屋の雪解雫は涙かな 密田妖子
雪しづく術後四年と十か月 藤倉桂
ストックの香に目覚めたる遺影かな 間宮伸子
梅が枝餅食めば我が内梅一輪 梅田恵美子
春の道能登へ能登へとブルドーザ 稲垣雄二
大地震に耐へしぶらんこ風に立つ 清水薫
春めくや爪に血のいろ戻り来ぬ 松川まさみ
荒鮭の氷頭一塊を切り出しぬ 長谷川櫂
汚れちまつたなどと言ふまひ寒の紅 藤倉桂
・長谷川櫂選
【特々選】推敲例
下萌をよろこぶ犬の腹這へり 橋詰育子
江ノ電の海岸線の春動く 間宮伸子
立ち上がる冬怒涛こそ能登の国 安藤久美
【特選】
なおざりの体いたはる朝寝かな 土谷眞理子
厨より見ゆる菜の花日和かな 橋詰育子
朝市に春の光を並べけり 趙栄順
梅の花からあらはれて目白かな 近藤沙羅
近江市場春の霙の人出かな 越智淳子
【入選】
無愛想な和菓子屋なれど桜餅 清水薫
能登の人あやふき家に春を待つ 酒井きよみ
白山の大空へ龍昇りけり 趙栄順
七十年無口な漢ふきのたう 飛岡光枝
一塊の銅となり鮭乾ぶ 玉置陽子
風呂屋では皆男前春来る 田村史生
深雪晴尾長次々飛び来るも 藤倉桂
能登の海降りては消ゆるぼたん雪 飛岡光枝
鶯笛唇につめたき音すなり 飛岡光枝
山に住み薩摩紅梅愛でるひと 宮田勝
春遅々と仮設住宅から手紙 宮田勝
東京の雪の一日潤目鰯焼く 飛岡光枝
第二句座
席題:「雛」、「桜鯎」
・鬼川こまち選
【特選】
われを呼ぶ鳰の声とは知らざりき 安藤久美
波の間に別れ別れや内裏雛 藤倉桂
花うぐひ光もろとも喰ひにけり 趙栄順
千年の闇知り尽くす吉野雛 玉置陽子
この国のよき日忍ばん雛祭り 山本桃潤
立山のよく見ゆる日や花うぐひ 宮田勝
幾万の雛何処へ能登の雪 飛岡光枝
天袋よりあらはれし雛かな 田村史生
目じりに花宿したり吉野雛 玉置陽子
【入選】
薄紙をこぼるる雛の吐息かな 松川まさみ
弟の畏まりたる雛の間 松川まさみ
古雛びらびら簪ゆれもせで 松川まさみ
凪ぐ海へ押し出す舟は雛を積み 密田妖子
くすくすと楽しさふなり夜の雛 藤倉桂
菱餅のなくなってをり雛祭 橋詰育子
避難所にせめて一対雛飾り 清水薫
誰か住む谷の奥より流し雛 長谷川櫂
・長谷川櫂選
【特選】推敲例
ひひなより娘は早く老いにけり 稲垣雄二
花鯎したたる水も花の色 安藤久美
花うぐひ光もろとも喰ひけり 趙栄順
目じりに花宿したり吉野雛 玉置陽子
【入選】
甘露煮の苦みも桜うぐひかな 趙栄順
水のなか桜うぐひの花明かり 梅田恵美子
波の間に別れ別れや紙雛 藤倉桂
犀星のわけても桜うぐひかな 鬼川こまち
この国のよき日忍ばん紙雛 山本桃潤
いつの世の恋を語るや雛一対 泉早苗
みよしのの瀬音ははやし花うぐひ 安藤久美