古志仙台ズーム句会(2024年1月28日)
第一句座
長谷川冬虹選
【特選】
なかなかにあがらぬもよし絵双六 辻奈央子
凍虻のなにか話しに来たりけり 青沼尾燈子
龍神の舌めろめろとどんど焼 武藤主明
雪吊や等分に割る冬の空 佐伯律子
一瞬に瓦礫となりし初景色 武藤主明
【入選】
この星の揺らぎ鎮まれ初神楽 谷村和華子
求愛の鶴のこゑごゑ天に向く 佐藤和子
ストーブへ転校生の手が混じり 臼杵政治
避難所の門口に立つ雪女 三玉一郎
恋わづらひなだめすかして毛糸編む 辻奈央子
また行かな朝市ばあの頬被り 谷村和華子
能登瓦屋根が地べたの雪の上 長谷川櫂
風生と鶯餅の声待たん 上村幸三
ずたずたとなりて笑ひし凍虻よ 青沼尾燈子
古暦まづ引き寄せて抱きしめん 辻奈央子
長谷川櫂選(推敲例)
【特選】
寒施行線路を越えて狸来る 平尾 福
朝市の婆頬被りまた行かな 谷村和華子
一椀の底に力や寒蜆 石川桃瑪
煙上げ春を待ちゐる畑かな 平尾 福
一瞬に瓦礫となりぬ初景色 武藤主明
【入選】
鰤起し巨大鯰を起こしけん 齋藤嘉子
母厭ふ吾をやらへや年の豆 川辺酸模
探検家列伝熱し冬籠 及川由美子
旅の宿枕に寄する冬の濤 武藤主明
今宵また気遣ふ能登の寒さかな 平尾 福
子ら帰り淋しからうよ雪達磨 臼杵政治
なかなかにあがらぬもよし絵双六 辻奈央子
種芋の目覚めたしかめ畝立てる 石川桃瑪
病室に残れる母に寒の月 川辺酸模
父の忌も忘れし母や百の春 川辺酸模
紅梅や広く照らせよ能登の地を 辻奈央子
第二句座(席題:鮟鱇、蕪、炬燵)
長谷川冬虹選
【特選】
吊されて鮟鱇の笑み微かなり 川辺酸模
地面から躍り出でたる小蕪かな 齋藤嘉子
鮟鱇は砂の中にて寝正月 平尾 福
鮟鱇は口のみとなり笑ひけり 長谷川櫂
【入選】
掘炬燵ふらふら猫の這ひだせり 武藤主明
不器用に生きて鮟鱇無口なり 三玉一郎
鮟鱇や友の顔してこちら見ん 辻奈央子
鮟鱇やこの国の愚を一呑みに 辻奈央子
鮟鱇や海の底にて出会ひたし 服部尚子
長谷川櫂選(推敲例)
【特選】
ふらふらと猫這ひだしぬ掘炬燵 武藤主明
鮟鱇はあらひざらひを食はれけり 上村幸三
真白な乳房のごとき蕪かな 佐伯律子
【入選】
置炬燵北国暮らし四十年 長谷川冬虹
鮟鱇の肝はしつかり等分し 青沼尾燈子
鮟鱇のいのちの重さ吊るしけり 三玉一郎
大地震炬燵の下のいのちかな 三玉一郎
蓋とれば湯気もうもうと鮟鱇鍋 川村杳平
仲買は鮟鱇の口覗き込む 佐藤和子
幸せは粥の中から蕪かな 平尾 福
妻とゐてこの幅がよし掘炬燵 武藤主明