古志金沢ズーム句会(2023年11月19日)
第一句座
当季雑詠
・鬼川こまち選
【特選】
白き句集繙けば冬来りけり 田村史生
雲裂けて光りこぼるる梅室忌 清水薫
梅室忌加賀に詩歌の花ひとつ 趙栄順
母一日真綿となりて眠りをり 飛岡光枝
加賀しぐれ背美しく去りにけり 趙栄順
人攫ひ来そうな釣瓶落しかな 山本桃潤
枯れ枯れて空をただよふ釣忍 飛岡光枝
らくがんのほろとこぼるる梅室忌 趙栄順
天平の琵琶掻き鳴らす枯野かな 田村史生
饒舌なマリーゴールド秋日燦 密田妖子
【入選】
吊し柿居眠りしたり目覚めたり 藤倉桂
雪催げたを鳴らして坊ちやん湯 間宮伸子
梅室忌砥石くぐらす山の水 安藤久美
埋火をほり熾したり梅室忌 酒井きよみ
白山の雪積むころや梅室忌 梅田恵美子
秋高し鳥の名前の孫が来る 安藤久美
梟や夢の中でも句を詠まん 土谷眞理子
広々と加賀の小春や「白」句集 花井淳
千年の煤を払へば天女かな 趙栄順
あくびして胡桃の中のこどもかな 長谷川櫂
切れ味の落ちし庖丁梅室忌 密田妖子
萩の葉に犇めく露や梅室忌 氷室茉胡
研ぎ上げし冬の三日月梅室忌 山本桃潤
一箱にして甲州の柿日和 長谷川櫂
茶の花にしづかな日差し梅室忌 酒井きよみ
加賀はいま俳句の國ぞ梅室忌 宮田勝
時雨るるやかつて一腑のありどころ 松川まさみ
天人の笛にはじまる梅室忌 泉早苗
・長谷川櫂選
【特選】推敲例
句集「白」繙けば冬来りけり 田村史生
梅室忌源助大根出るころか 酒井きよみ
鬼柚子も十六七の肌かな 鬼川こまち
子と遊ぶ指人形も冬に入る 藤倉桂
旅に買ふ刃物美し梅室忌 藤倉桂
【入選】
雲裂けて光こぼるる梅室忌 清水薫
梅室忌詩歌の花のまた一つ 趙栄順
吊し柿居眠りしたり目覚めたり 藤倉桂
闇汁に飛蝗の腹のごときもの 山本桃潤
山の水に砥石くぐらす梅室忌 安藤久美
お茶受けは栗法師なり梅室忌 密田妖子
吹き響む白山下ろし梅室忌 玉置陽子
さすらひの心養へ梅室忌 飛岡光枝
秋風を追ふ秋風や金沢へ 安藤久美
切れ味の落ちし庖丁梅室忌 密田妖子
研ぎ上げし冬の三日月梅室忌 山本桃潤
わが庭の柿いろづけば梅室忌 密田妖子
白山は白を極めて冬に入る 鬼川こまち
包丁へのぼる雪の気梅室忌 玉置陽子
羊羹は厚目二切れ梅室忌 泉早苗
枯れ菊の日に日に凍る梅室忌 玉置陽子
庭ぢゆうの草青みけり梅室忌 橋詰育子
茶の花にしづかな日差し梅室忌 酒井きよみ
猿面の味はひ深し梅室忌 土谷眞理子
土を出て蚯蚓ら散歩梅室忌 近藤沙羅
あかときの霰たばしる梅室忌 宮田勝
寒月へ箔打つ音や梅室忌 稲垣雄二
第二句座
席題:新年詠
・鬼川こまち選
【特選】
わが仰ぐ土佐の山々初景色 橋詰育子
白髪となりて二人や花びら餅 藤倉桂
神宮の焚き火はぜたり初詣 近藤沙羅
淑気みつ朝のひかりの大甍 泉早苗
老いふたり生き直さんと粥柱 梅田恵美子
鏡餅少し動きしかと思ふ 長谷川櫂
とろとろと蓬莱山を枕かな 玉置陽子
振出しに戻る誉や絵双六 田村史生
雑煮椀卑弥呼は長寿なりしとや 間宮伸子
あかあかの五欲満たさむ絵双六 玉置陽子
【入選】
初詣風鐸の空あをあをと 梅田恵美子
思はざる一句生まれよ初硯 橋詰育子
新春の空に飛び立つ蒼き龍 田中紫春
富士山のいやに縦長絵双六 飛岡光枝
大鏡餅だいだいの転げ落つ 飛岡光枝
そそくさと隠してしまふ初みくじ 氷室茉胡
長々しき目尻うるはし福笑 長谷川櫂
去年今年人来ては去る展宏碑 泉早苗
下戸上戸孫うち揃ひ年酒酌む 密田妖子
追羽子や穴を開けむと青空へ 藤倉桂
・長谷川櫂選
【特選】推敲例
八十の門から望む初景色 清水薫
初鏡重ねかさねて八十枚 松川まさみ
白髪となりて二人や花びら餅 藤倉桂
【入選】
老年の未知の世界や粥柱 梅田恵美子
わが仰ぐ土佐の山々初景色 橋詰育子
書初めや出目金画いてめでたがる 川上あきこ
坊守の朝寝坊よき三日かな 泉早苗
初山河人生きてゐる白の中 花井淳
元日のひときは白き障子かな 越智淳子
猫が尻ふつて狙ふや餅の花 飛岡光枝
何と長き妻の願ひや初詣 氷室茉胡
去年今年人来ては去る展宏碑 泉早苗