古志金沢ズーム句会(2023年8月20日)
第一句(当季雑詠)
・鬼川こまち選
【特選】
何枚も画布運び出す秋日和 宮田勝
地球にも浮輪が欲しい夏休み 長谷川櫂
妊りて温き月抱く心地かな 趙栄順
湧ききたる雲かいくぐり花野行く 梅田恵美子
まぬがれしこと覚えずや鰯雲 松川まさみ
いつの間に生身魂とはなりしかな 橋詰育子
人の手の美しくなる団扇かな 長谷川櫂
静けさのまほろば盆の風の道 宮田勝
永らへて恐ろしき世に昼寝かな 長谷川櫂
流灯をこの世につなぐ指離す 稲垣雄二
【入選】
万太郎の魂も遊ぶや大花野 酒井きよみ
秋日傘長生き詫びる事なかれ 間宮伸子
きのふ白雲けふ広々と鱗雲 近藤沙羅
人間は口より古ぶ岩清水 長谷川櫂
遠泳の島引き寄せてまた泳ぐ 安藤久美
眼を病みし人に今宵も星ながれ 飛岡光枝
瓢鮎図生身魂との禅問答 氷室茉胡
紀ノ国の夕日匂ふや新走り 玉置陽子
早稲の香へひとさし舞はむ伎芸天 玉置陽子
薪能この世へ戻る留め拍子 密田妖子
裏見せて土用の波やおそろしき 安藤久美
玩ぶ秋の団扇の暮れゆけり 飛岡光枝
灼熱の地獄の外に昼寝かな 梅田恵美子
人は老い御輿は古りて里祭 氷室茉胡
・長谷川櫂選
【特々選】
歌舞伎座の燃ゆるがごとき炎暑かな 飛岡光枝
原爆忌ハムの日といふ是如何に 間宮伸子
かたことの秋を拾ひぬ今朝の秋 鬼川こまち
【特選】
田の神は出水の村をさまよふか 安藤久美
銀の箱の中に居りけりけさの秋 近藤沙羅
裏見せて土用波とはおそろしき 安藤久美
妻思ひ泣く夜もあるか生身魂 稲垣雄二
妻もあり母もゐるらん秋蛍 松川まさみ
流灯をこの世につなぐ指離す 稲垣雄二
【入選】
きのふ白雲けふ広々と鱗雲 近藤沙羅
妊りて温き月抱く心地かな 趙栄順
おんぶひも胸元きつく原爆忌 鬼川こまち
この国のかぐはしきとき稲の花 梅田恵美子
加賀の秋あんころ餅をひと口に 花井淳
背泳ぎの玻璃天井の空真青 藤倉桂
朝顔やどこの村にも忠魂碑 酒井きよみ
遠泳の島引き寄せて泳ぎけり 安藤久美
梨三つ供へて母の忌なりけり 近藤沙羅
朝顔の一輪青し原爆忌 稲垣雄二
朝毎に無花果一個大拙居 山本桃潤
いつの間に生身魂とはなりしかな 橋詰育子
薪能この世へ戻る留め拍子 密田妖子
犀川のりりと流るる今朝の秋 趙栄順
原爆忌地獄を通る人の波 山本桃潤
糠床もきつと喜ぶ秋茄子 清水薫
東京が空を侵すや秋の風 趙栄順
露けしやうなじを撫づる風の息 趙栄順
この道を行けとこころに秋の声 橋詰育子
原爆忌いつもと同じ朝が来て 酒井きよみ
啄木鳥や雲を間近に山の池 花井淳
山の秋生簀の鯉の黒々と 藤倉桂
人は老い御輿は古りぬ里祭 氷室茉胡
第二句座(席題:秋刀魚、吾亦紅)
・鬼川こまち選
【特選】
高々と網をこぼれて銀さんま 飛岡光枝
大秋刀魚大根おろしをそへ食はん 近藤沙羅
一社尼寺めぐる抜け道吾亦紅 宮田勝
吾亦紅虫食ひまでも愛おしく 密田妖子
黒焦げの箔を破つて秋刀魚食ふ 長谷川櫂
大漁の輝き重きサンマ船 山本桃潤
馬にやる草に雑じるや吾亦紅 飛岡光枝
初秋刀魚一人一尾の贅つくし 安藤久美
【入選】
秋刀魚焼く煙を浴びて母のをり 清水薫
吾亦紅少女にはやも熱き息 花井淳
秋刀魚焼く戦の迫る背を丸め 稲垣雄二
咲き誇ることなき花か吾亦紅 松川まさみ
見初めしは君の秋刀魚の食べつぷり 田村史生
初秋刀魚みごとまつすぐ生きにけり 稲垣雄二
澄んだ目の秋刀魚を選ぶ市場かな 田村史生
秋刀魚売る声をとがらせ近江町 泉早苗
ばうばうと腸より焦げる秋刀魚かな 玉置陽子
吾亦紅熊野へ続く古道かな 田村史生
・長谷川櫂選
【特選】
日の射していよいよ紅し吾亦紅 橋詰育子
吾亦紅のむこう火の雨鉄の雨 鬼川こまち
降るように尿せし馬や吾亦紅 鬼川こまち
【入選】
高々と網をこぼれて銀さんま 飛岡光枝
吾亦紅まこと小さき仏かな 梅田恵美子
吾亦紅夫とは違ふ昔あり 間宮伸子
吾亦紅我も恋ふとはこはいかに 趙栄順
町内の雑事受け継ぎ秋刀魚焼く 宮田勝
馬にやる草に雑じるや吾亦紅 飛岡光枝
ばうばうと腸より焦げる秋刀魚かな 玉置陽子
吾亦紅金箔を打つ町に住む 花井淳