古志金沢ズーム句会(2022年11月23日)
第一句座(当季雑詠)
・鬼川こまち選
【特選】
雪つみて戦やまざる焦土かな 梅田恵美子
青首の新妻かばふ翼かな 泉早苗
月蝕の大海をゆく鯨かな 田村史生
欲望が氷山溶かし始めたる 山本桃潤
人類の旅は果てなし大焚火 長谷川櫂
太陽を生け捕りにせん干布団 長谷川櫂
煮凝りや音なく戦襲ひくる 飛岡光枝
【入選】
姫沙羅はこの家の一樹夕時雨 花井淳
我がことと知らず聞きをり石蕗の花 松川まさみ
蝕果ててまた満月の夜寒かな 長谷川櫂
忌日まで鬼柚子ひとつ剪らでおく 泉早苗
日輪のしづくひとつや帰り花 趙栄順
こぼれては氷となりぬ木菟のこゑ 玉置陽子
薪割りぬ戦の国の冬支度 梅田恵美子
冬麗や水脈ぐんぐん大空へ 田中紫春
飛石の亀笑ひたる小六月 氷室茉胡
大白鳥立つて乙女になるところ 稲垣雄二
かぐはしき息潜めゐる落葉かな 玉置陽子
仕留めたるごとく大根ぶら下げ来 松川まさみ
このままで死ぬもよろしき蒲団かな 橋詰育子
何事か騒ぎたてをり寒鴉 近藤沙羅
水中に紅葉の燃ゆる大拙館 密田妖子
・長谷川櫂選
【特選】
枯ふくべ夜ごとの風に鳴りにけり 飛岡光枝
ふるさとやまぬがれがたく雪起し 酒井きよみ
八十億分の一の我かや着ぶくれて 近藤沙羅
無精髭今日で三日目菊日和 清水薫
松林図の奥へ奥へと茸狩 鬼川こまち
【入選】
通り過ぐ猫の一瞥冬さんご 飛岡光枝
天平の小春に舞ふや呉女の面 田村史生
初冬や身にしつくりと縞木綿 松川まさみ
雪吊の松あたらしき香を放つ 安藤久美
冬の月寂とよこたふ大河かな 花井淳
燗の酒記憶のかけらつまみつつ 清水薫
月蝕の大海をゆく鯨かな 田村史生
冬麗や水脈ぐんぐん大空へ 田中紫春
人をよけ熊をよけては紅葉狩 橋詰育子
大阿蘇の中に一泊冬銀河 稲垣雄二
立冬の池もボ-トも干されたり 佐々木まき
冬麗の騎馬刻まれし銀壺かな 田村史生
冬空や動ゐてゐるか観覧車 越智淳子
第二句座(席題:冬桜、浮寝鳥)
・鬼川こまち選
【特選】
ほのかなるさびしさ灯る冬桜 越智淳子
ゆらゆらと生きて浮き寝の余生かな 田中紫春
タンカーの大波に乗る浮き寝かな 稲垣雄二
浮寝鳥波がゆりかご子守唄 松川まさみ
白山の冠雪の日や大浮寝 泉早苗
【入選】
東京のビルの谷間を浮寝鳥 飛岡光枝
冬さくら伊賀の城垣天に反り 安藤久美
冬桜羽あるものの見え隠れ 佐々木まき
朝光につぎつぎ目覚め浮寝鳥 梅田恵美子
一心に空ひろごれり冬桜 宮田勝
群青の深きところに浮寝鳥 長谷川櫂
冬桜鋤たる畑に湯気たちて 山本桃潤
一本の杭を離れず浮寝鳥 飛岡光枝
人の世の及ばぬところ浮寝鳥 長谷川櫂
この坂に一樹あらたや寒桜 越智淳子
波と消え波とあらはる浮寝鳥 宮田勝
坑道の秘話を語るや冬桜 田中紫春
戦世の哀しみ知るや浮寝鳥 松川まさみ
・長谷川櫂選
【特選】
寄り添ふは妻か子供か浮寝鳥 清水薫
父母と離れぬやうに浮寝鳥 山本桃潤
タンカーの大波に乗る浮き寝かな 稲垣雄二
冬桜すりたての墨黒々と 飛岡光枝
境内のそこのしづけさ冬桜 近藤沙羅
【入選】
冬桜子供の帰つた校庭に 山本桃潤
あかつきの夢のつづきの浮き寝鳥 間宮伸子
子供らが見上げてゆきぬ冬桜 近藤沙羅
一心に空ひろごれり冬桜 宮田勝
冬桜ふたりで仰ぐたのしさに 泉早苗
雪の中あたたかさうに浮寝して 近藤沙羅
冬ざくら一花手にうく展宏碑 泉早苗
われもまた寡黙者なり冬桜 清水薫
ぬくもりは掌中にあり冬桜 花井淳
君の住む町にも咲くか冬桜 清水薫
冬桜海より続く名護城 田村史生
浮寝鳥夢見ることもありぬべし 橋詰育子
波と消え波とあらはる浮寝鳥 宮田勝
晩節を汚さぬなかれ冬桜 鬼川こまち
戦世の哀しみ知るや浮寝鳥 松川まさみ