古志仙台ズーム句会(2022年9月25日)
第一句座
・長谷川冬虹選
【特選】
穴選ぶばかりで蛇の秋終はる 辻奈央子
たつぷりと月浴びてゐる蟇 平尾 福
田の神の酔うて一夜の刈田かな 上村幸三
喪の家に米研ぐ音や秋夕焼 及川由美子
蓑虫や天地をつなぐ糸一本 上 俊一
【入選】
掘り忘れ木の根となりし牛蒡かな 上 俊一
雨あとの鶏頭切れば日の匂う 服部尚子
朝霧や風のかたちに立ち上り 谷村和華子
秋澄むや空掴むほど深呼吸 齋藤嘉子
蓑虫になりてこの世を覗きたし 上 俊一
つつがなき母の一日や赤まんま 川辺酸模
白桃を一つ食(とう)べて眠りけり 長谷川櫂
人の死はみな秋風となりにけり 三玉一郎
秋蟬を疲れし兵と言ふべきや 青沼尾燈子
村のバス秋風だけを乗せてくる 甲田雅子
・長谷川櫂選
【特選】
らふそくの闇美しや台風来 川辺酸模
病む夫を連れ出し仰ぐ望の月 甲田雅子
くちづさむやうに蓑虫揺れてをり 辻奈央子
【入選】
〆鯖は三陸産とや月の夜 及川由美子
福島の福をいただく今年米 平尾 福
秋風や柩の上の王冠に 齋藤嘉子
ゆつたりと沖行く巨船夏が逝く 谷村和華子
鉢植えの陰に高らか虫のこゑ 及川由美子
第二句座(席題:稲刈、ゐのこづち、小鳥)
・長谷川冬虹選
【特選】
青空をこぼれて庭に小鳥来る 長谷川櫂
私家版の小さな詩集小鳥来る 平尾 福
友逝きてからの十年牛膝 阿部けいこ
【入選】
小鳥来る遠野盆地の童話館 及川由美子
楸邨の欅とあそぶ小鳥かな 宮本みさ子
小鳥来て小鳥語となる夫婦かな 平尾 福
わが庭に嵐のごとく小鳥来る 長谷川櫂
稲刈や村を挙げての千枚田 武藤主明
牛膝友をなくせし夫帰る 川辺酸模
ゐのこづち付けて来たるや郵便夫 武藤主明
犬の尾に命の証しゐのこづち 青沼尾燈子
けふ一日英語教師も稲を刈る 佐藤和子
・長谷川櫂選
【特選】
静寂を背中にひとつゐのこづち 三玉一郎
今年また倒れ伏す田の稲を刈る 川村杳平
丁寧に妻とる犬の牛膝 平尾 福
人の手に移りし秋田刈られけり 三玉一郎
犬の尾に命の証しゐのこづち 青沼尾燈子
【入選】
今年またうたを届けに小鳥来る 長谷川冬虹
我が取る母のズボンのゐのこづち 齋藤嘉子
門田だけ手刈の稲を残したり 上 俊一
牛膝友をなくせし夫帰る 川辺酸模
稲刈りの授業に鎌をみな持参 宮本みさ子
海べりのわづかな田んぼ亥の子餅 上 俊一