古志金沢ズーム句会(2022年5月22日)
第一句座
当季雑詠
・鬼川こまち選
【特選】
年来の何脱ぎすてん更衣 泉早苗
一炊の夢のごとくにアヤメ咲く 近藤沙羅
朝採れのレタスに盛つて夏料理 稲垣雄二
戦場のニュース聞きつつ草殺す 密田妖子
五十年基地の島なり梯梧咲く 趙栄順
老いてなほ女優のごとく夏帽子 藤倉桂
向日葵や捕虜は何処へ運ばるる 松川まさみ
【入選】
沈黙でまたやり過ごす蟇 稲垣雄二
山椒魚身じろぎてまた瞑想へ 長谷川櫂
口利かぬ妻の怒りや五月闇 氷室茉胡
神使たる鹿の子にして糞りにけり 田村史生
小手毬や弟二人逝きにけり 密田妖子
たかんなの抑へきれざる意欲かな 山本桃潤
五月来て空に大きく象の雲 中野徹
代掻きて人馬一体泥まみれ 山本桃潤
枇杷食めば金剛の種かがやける 梅田恵美子
フラワームーンからバラの香りかな 酒井きよみ
飴に煮ていよいよ鮴の貌らしく 安藤久美
緑陰を大きな部屋として使ふ 趙栄順
花びらを散らしつ薔薇の手入れかな 近藤沙羅
草を出て草より蒼き雨蛙 田中紫春
・長谷川櫂選
【特選】
鳴き声もみどり色なる雨蛙 中野徹
湯上がりの胸もと匂ふ心太 松川まさみ
部屋ぢゆうを映す五月の銀の匙 安藤久美
悄然たる眼に梅の実の青さ 佐々木まき
自らのあはれは知らず羽抜鶏 近藤沙羅
まづ妻の皿へ一突き心太 稲垣雄二
飴に煮ていよいよ鮴の貌らしく 安藤久美
戦車みな飲み込んでしまへ蟻地獄 稲垣雄二
【入選】
口利かぬ妻の怒りや五月闇 氷室茉胡
老いてなほよき笑顔なり夏帽子 橋詰育子
豆飯の豆を上手に残す子よ 酒井きよみ
薔薇の香に溺れて薔薇を剪りゐたり 鬼川こまち
物干にシャツ荒ぶるや青嵐 田村史生
沖縄や玉巻く芭蕉に解く芭蕉 鬼川こまち
五月来て空に大きく象の雲 中野徹
蕗の香や母と競ひて剥きし日も 安藤久美
更衣風を浴びたく犀川へ 清水薫
ゼレンスキーの声耳底に午睡かな 鬼川こまち
昼寝して喧嘩の訳を忘れたり 田村史生
皺の手でねねが汲みたる新茶かな 安藤久美
花びらを散らしつ薔薇の手入れかな 近藤沙羅
第二句座
席題 「夏の川」、「紫陽花」
・鬼川こまち選
【特選】
あぢさゐを手水に浮かべ山の寺 梅田恵美子
親父から突き落とされし夏の川 山本桃潤
履物を下げてはしゃぎし夏の川 越智淳子
かたむきて大せせらぎや夏の河 長谷川櫂
しろがねの緑を裂きて夏の川 稲垣雄二
次々に子が飛び込んで夏の河 長谷川櫂
煩悩を削りし石や夏の河 花井淳
【入選】
山びこや木々薫りくる夏の川 梅田恵美子
釣人の脛に堰かるる夏の川 安藤久美
紫陽花や青深まりて雨を呼ぶ 越智淳子
夏の川向かふ岸まで石を跳び 清水薫
夏の川蛇と並んで泳いだ日 山本桃潤
夏の川空に芭蕉や子規もゐて 田中紫春
白鷺が足浸しをり夏の川 近藤沙羅
人も魚も上を目指すや夏の河 花井淳
・長谷川櫂選
【特選】
親父から突き落とされし夏の川 山本桃潤
紫陽花を胸まで濡らし選びをり 稲垣雄二
ゆふぐれは紫陽花いろの信濃かな 安藤久美
ふるさとや手足しびれる夏の河 酒井きよみ
紫陽花のあさぎのままの別れかな 佐々木まき
【入選】
山びこや木々薫りくる夏の川 梅田恵美子
釣人の脛に堰かるる夏の川 安藤久美
足の甲ゆらゆら清し夏の川 越智淳子
あぢさゐを手水に浮かべ山の寺 梅田恵美子
鷺一羽何を思案の夏河原 佐々木まき
夏の川向かふ岸まで石を跳び 清水薫
母の忌や小雨にけぶる濃紫陽花 藤倉桂
足元へ水走り来る夏の川 藤倉桂
目薬の大方零る四葩かな 玉置陽子
釣り人のマイカー並ぶ夏の河 密田妖子
夏川の澱みに一つ亀の鼻 藤倉桂
白鷺が足浸しをり夏の川 近藤沙羅
笊もつて夏川へゆくたのしさよ 酒井きよみ
紫陽花や旧監獄を囲みをり 田村史生
石積んで鰻の罠を夏の川 稲垣雄二
山の子のつくる生簀や夏の川 酒井きよみ