古志金沢ズーム句会(2022年4月24日)
第一句座(当季雑詠)
・鬼川こまち選
【特選】
凧が子を引張つてゆく広野かな 田村史生
ひとすじの夕虹となり蛇流る 玉置陽子
ロビンソン・クルーソー粟島に栄螺焼く 藤倉桂
跳び込んで幻となる蛙かな 清水薫
ときはなつ五感六感つばくらめ 泉早苗
魔の山の峨々と真白し春の空 長谷川櫂
ぼうたんの解けるまでの重さかな 山本桃潤
【入選】
大岡忌花のいのちの真ん中に 趙栄順
母のゐるやうにぶらんこ漕ぎ出せり 宮田勝
石南花や戦車の舐めてゆく舗道 田中紫春
しづかなる穀雨よ加賀の山河かな 泉早苗
壺焼の壺の奥より波の音 玉置陽子
太陽を蹴り上げに行くぶらんこよ 稲垣雄二
用水にかつて市場の柳かな 花井淳
さてもさても永き日いかにや自由なり 松川まさみ
世界中朝寝を起こす戦車かな 稲垣雄二
初蝶や八幡様の花手水 間宮伸子
まほらばや加賀艶々と五月雨 山本桃潤
花びらで染めて鎌倉シャツの店 間宮伸子
平然と殺戮の日々葱坊主 泉早苗
ホームズの長き謎解き春炬燵 花井淳
・長谷川櫂選
【特選】
幼な子にねむる力や柏餅 安藤久美
銀輪の先に先にと風光る 宮田勝
世界中朝寝を起こす戦車かな 稲垣雄二
しろがねの空に棹さし雁帰る 趙栄順
花守の花のごとくに老いたまふ 橋詰育子
【入選】
雉子下げて金借りに来る男かな 玉置陽子
春の野に咲けるサフラン戦車行く 近藤沙羅
蜜蜂や尻ひこひこと藤の房 藤倉桂
うつらうつら海の見る夢蜃気楼 酒井きよみ
取れたての土の匂ひの春筍 佐々木まき
春の月争ふ地球哀しめり 酒井きよみ
小振りなる埴輪の乳房春惜しむ 玉置陽子
朧夜のたれそゐるらし廃墟かな 鬼川こまち
平然と殺戮の日々葱坊主 泉早苗
第二句座(席題:薄暑、新茶)
・鬼川こまち選
【特選】
人いきれ一色となす薄暑かな 宮田勝
薄暑はや五百羅漢のさんざめく 玉置陽子
海一つ向かふは戦場新茶汲む 稲垣雄二
会へぬまま母遠くなる薄暑かな 趙栄順
封切つて鼻を突つ込む新茶かな 稲垣雄二
言葉出るを待ちくるる師や新茶汲む 藤倉桂
【入選】
ふかぶかと定まる古茶の風味かな 長谷川櫂
初めての自家製新茶ひと握り 密田妖子
宅配の人みな走る薄暑かな 田村史生
牛の尾のしきりに動く薄暑かな 酒井きよみ
隣席を開けて座りぬ人薄暑 佐々木まき
かな文字の行のゆがめる薄暑かな 花井淳
子山羊らの白のまぶしき薄暑かな 酒井きよみ
いにしへの宇治も大和も新茶かな 田村史生
新月のほのかに香る新茶かな 長谷川櫂
昏れてなほ蒼き空あり新茶汲む 泉早苗
・長谷川櫂選
【特選】
帰れざる昔ありけり新茶汲む 趙栄順
金色のしづく汲み分く新茶かな 玉置陽子
封切つて鼻を突つ込む新茶かな 稲垣雄二
走り茶や皺の手が入れ皺の手へ 稲垣雄二
濃くいれて新茶の緑飲み干しぬ 山本桃潤
【入選】
宅配の人みな走る薄暑かな 田村史生
恐ろしき百歳時代新茶くむ 間宮伸子
薄暑はや箱より出せる奈良団扇 藤倉桂
ニュータウン全戸老いたる薄暑かな 松川まさみ
丁寧に生きて新茶の一滴 佐々木まき
子山羊らの白のまぶしき薄暑かな 酒井きよみ
反射炉の見学終えて新茶かな 田中紫春
うれしさは術後五年の新茶かな 趙栄順
日めくりをめくりて今日の薄暑かな 中野徹
乗客は孤老ばかりの昼薄暑 越智淳子