古志金沢ズーム句会(2021年12月19日)
第一句座(当季雑詠)
・鬼川こまち選
【特選】
首振つて御慶をのぶる張子かな 近藤沙羅
柔らかき白き鎧のマスクかな 田中紫春
君の席に蝶の来てゐる日向ぼこ 稲垣雄二
胎の子と二人でひとつ夢はじめ 玉置陽子
野の風をくるりと結び掛け柳 篠原隆子
十二月八日少年兵のまま老いぬ 玉置陽子
掘り上げし蓮根に一つ氷の芽 長谷川櫂
荒鮭の残骸息をしてゐたり 長谷川櫂
【入選】
まさぐりて足に湯たんぽ届かする 佐々木まき
煤払ふ羽にほのめく飛天かな 泉早苗
対岸の火事見るごとく日々過ごし 間宮伸子
楡の幹凍裂の音天にまで 間宮伸子
後悔も欲も捨てたる布団かな 山本桃潤
失念の山となりたる落葉かな 松川まさみ
大皿に男料理を三日かな 清水薫
正月といふ大きな遊び心かな 長谷川櫂
青空の竹にまたがり懸大根 近藤沙羅
臼杵に雪もかをるや年の市 酒井きよみ
数へ日や神々愚痴を言い募る 中野徹
この星の涙は尽きず流れ飛ぶ 田中紫春
神棚に大らかな雲年迎ふ 花井淳
葉牡丹や渦巻くばかり人の世は 宮田勝
蕉翁の亡骸行きし冬の川 氷室茉胡
・長谷川櫂選
【特選】
冬籠の穴抜け出して句会かな 近藤沙羅
胎の子と二人でひとつ夢はじめ 玉置陽子
臼杵に雪もかをるや年の市 酒井きよみ
車まで臼ころがして年の市 酒井きよみ
輪一つ天よりくだり掛け柳 篠原隆子
【入選】
ぼたん雪ささやきながら降つて来る 趙栄順
首振つて御慶をのぶる張子かな 近藤沙羅
トロ箱や鮟鱇の目の無愛想 梅田恵美子
寒鰤の胃袋焼いて天狗舞 稲垣雄二
君の席に蝶の来てゐる日向ぼこ 稲垣雄二
八十を越へても女春支度 佐々木まき
賢なるや愚なるや鮟鱇大頭 松川まさみ
仰ぎ見る太陽の門初景色 清水薫
マスクして目力強き寂聴尼 氷室茉胡
帰らねばならぬ家あり冬苺 玉置陽子
第二句座(席題:初参、寒紅)
・鬼川こまち選
【特選】
太陽と水は命や初参り 間宮伸子
寒紅のもろ肌をぬぐ楽屋かな 篠原隆子
火の鳥のごとき寒紅引きにけり 安藤久美
寒紅や女の業は花のごと 長谷川櫂
寒紅のはつしと返す言葉かな 松川まさみ
神様をはしごしてゆく初参 田村史生
【入選】
人の世にすこし疲れて寒の紅 梅田恵美子
初詣持ちつ持たれつ雪の道 佐々木まき
恋はるか寒紅褪せてゆきにけり 趙栄順
愛といふごちやごちやのもの初みくじ 間宮伸子
寒紅の華やかなりし間宮さん 花井淳
融雪の水蹴散らせて初参 花井淳
堪忍の知恵さづからん初詣 安藤久美
にこやかな遺影に残る寒の紅 密田妖子
寒紅を引いて定まる心かな 氷室茉胡
願ひより感謝の心初詣 氷室茉胡
・長谷川櫂選
【特選】
静かなる老いし鏡や寒の紅 稲垣雄二
寒紅の女の言の葉静かなり 山本桃潤
寒紅のはつしと返す言葉かな 松川まさみ
白雪のかかるめでたさ初詣り 佐々木まき
凡夫われまた一よりぞ初参 安藤久美
堪忍の知恵さづからん初詣 安藤久美
初みくじ開きてそつともう一つ 酒井きよみ
【入選】
今年また菩薩顔して寒の紅 稲垣雄二
もう半歩神の前へと初参り 清水薫
鯛焼屋いちばん人気初詣 酒井きよみ
人の世にすこし疲れて寒の紅 梅田恵美子
家族中の願ひ託され初詣 氷室茉胡
寒紅のもろ肌をぬぐ楽屋かな 篠原隆子
八仙のひとりはをなご寒の紅 鬼川こまち
寒紅や心にひとつ志 玉置陽子
敷きむしろ水づく参道初詣 密田妖子
紀ノ海のいや眩しきや初詣 玉置陽子
火の鳥のごとき寒紅引きにけり 安藤久美
明日香路の空の広さや初詣 趙栄順
寒紅を軽くおさへる人のあり 近藤沙羅
融雪の水蹴散らせて初参 花井淳
にこやかな遺影に残る寒の紅 密田妖子
寒紅や震える手元ままならず 田中紫春
大土佐のまほらの寺や初詣 橋詰育子
初詣礼儀正しき小悪党 稲垣雄二