古志鎌倉ズーム句会(2021年9月12日)
第一句座
•藤英樹選
【特選】
生涯を葛の風吹く男かな 森永尚子
揺れながら秋明菊の開きたる 藤原智子
芋茎干す人の死数字で云ふなかれ 喜田りえこ
鬼やんま己の道を譲らざる イーブン美奈子
さつさつと穴に入りたる蛇もあり 吉田順子
【入選】
かなかなや日暮るるころに晴れてきし 金澤道子
ご近所の秋を見廻る散歩かな 森永尚子
秋風やリアル句会のなつかしく 澤田美那子
コロナより総裁選か鉦叩 木下洋子
風の日や大揺れの萩見にゆかん 金澤道子
夕風や浅間のふもと大花野 吉田順子
もの思ふ秋の金魚となりにけり 木下洋子
楸邨に道楽ひとつ硯洗ふ 西川遊歩
•長谷川櫂選
【特選】
浅間山すそのすそまで露けしや 藤英樹
銀行は老人ばかり秋麗 田中益美
身にしむや妻に黒髪もどるまで 神谷宣行
羊羹を切りても一人けふの月 金澤道子
畦道の名残りここにも曼珠沙華 金澤道子
さやけしや前歯二本の赤ん坊 湯浅菊子
【入選】
ぐるぐるとやんま巡れる毛越寺 藤英樹
ご近所の秋を見廻る散歩かな 森永尚子
風の日や大揺れの萩見にゆかん 金澤道子
もの思ふ秋の金魚となりにけり 木下洋子
一反は出水まぬがれ今年米 神谷宣行
大砂丘越えてゆきたり秋日傘 曽根崇
白萩はけふが名残りか雨の中 葛西美津子
第二句座 (席題:割殻、うそ寒)
•藤英樹選
【特選】
うそ寒や夫ボリウムをまた上げて 長井はるみ
太陽もいつか落ちるぞうそ寒し 神谷宣行
体内に残る散弾うそ寒し わたなべかよ
うそ寒き世のうそ寒き人々よ 長谷川櫂
いろの浜藻に鳴く虫を聞きとめて わたなべかよ
うそ寒や重ねしままの絵の具皿 金澤道子
【入選】
老班を幼にきかれうそ寒し 曽根崇
マルエン全集埃まみれやうすら寒 喜田りえこ
うそ寒や一句われから詠めとこそ 葛西美津子
うそ寒や未来が見えぬ国に生き 木下洋子
口ばかり達者で元気うすら寒 喜田りえこ
うそ寒やニシンことこと甘露煮に 田中益美
はらからも少なくなりぬそぞろ寒 おほずひろし
•長谷川櫂選
【特選】
鳴きながら藻に住む虫のたゆたへり 金澤道子
うそ寒の日本の国となりにけり 升谷正博
【入選】
手の指の数の余生やそぞろ寒 おほずひろし
うそ寒や見えぬ在宅患者数 仲田寛子
われ生きてわれからのごとはかなしや 神谷宣行
割殻の見え隠れして磯の岩 田中益美
うそ寒やマスクの下の真の顔 仲田寛子
われからに古今の恋の秋思ふ 葛西美津子
白票に埋もれゆく国うそ寒く 関根千方
われからに耳傾けぬ世となりぬ 魚返みりん
いろの浜藻に鳴く虫を聞きとめて わたなべかよ
わが顔に知らぬ面影うすら寒 関根千方
われからも早や寝入りたる浮藻かな 吉田順子
われからの海の底から恋の歌 藤原智子
われからのこもる水辺や闇深し 吉田順子