古志仙台ズーム句会(2021年4月25日)
第一句座
・長谷川冬虹選
【特選】
春愁の顔をとらへし検温器 武藤主明
節くれの指を揃へて柏餅 谷村和華子
それぞれの春を持ち寄る句会かな 武藤主明
幼子の顔で食ひたき苺かな 武藤主明
初蝶のまだおぼつかなき高さかな 佐伯律子
【入選】
泥咥へ地球に生きる燕かな 上村幸三
蝶一羽乗せて離任の離島かな 川辺酸模
行く春やヒトもここらで変異せん 上 俊一
角落ちて鹿は正気に戻りたる 辻奈央子
畦塗るや津波の跡を拭ふかに 佐伯律子
桶に汲む光の粒よほたるいか 鈴木伊豆山
ひとつひとつ花の色して薬かな 辻奈央子
一輌に一人一駅春の昼 伊藤 寛
花冷えの牛近づきてこの臭気 宮本みさ子
芍薬のやつと開きし頑固さよ 那珂侑子
・長谷川櫂選
【特選】
行く春やヒトもここらで変異せん 上 俊一
幼子の顔で食ひたき苺かな 武藤主明
草むらの二人静を覗きけり 那珂侑子
【入選】
被曝牛絶えたる牛舎春の月 宮本みさ子
鶏潰し吊るしてありし暮春かな 齋藤嘉子
コロナにもめげずいさばや初鰹 石原夏生
いつの日か花守植へし山桜 青沼尾燈子
立山の氷河の雪解ほたるいか 鈴木伊豆山
忽然と去りたる春の大きさよ 三玉一郎
染め直す藍ののれんや夏近き 三玉一郎
足萎えの犬かばひつつ花の道 石原夏生
散る花は田の神さんぞ畦塗らな 齋藤嘉子
たんぽぽの花しをれゐて熟睡す 服部尚子
ワクチンの予約終へけり藤の花 青沼尾燈子
空家かと寄れば人居り犬ふぐり 伊藤 寛
第二句座(席題:蚕 昭和の日 薔薇)
・長谷川冬虹選
【特選】
九十になりても薔薇の似合う人 那珂侑子
妻と言ふ名の一本の赤い薔薇 平尾 福
おのが身を解いてこの世の天蚕糸 石川桃馬
【入選】
真実は一つにあらづ薔薇芽吹く 武藤主明
薔薇園ときに花の名騒々し 上 俊一
古びたる靴捨てきれぬ昭和の日 武藤主明
春蚕来る母は蚕の人となり 佐伯律子
感触のなほ手に残る蚕かな 石原夏生
カステラの箱に飼はるる蚕かな 長谷川櫂
・長谷川櫂選
【特選】
一滴のしづくゆるるや紅薔薇 川辺酸模
手のひらに載せれば蚕波打てる 宮本みさ子
人となりたまひし人や昭和の日 上 俊一
寝返りを打ちて蚕の桑食ふ音 鈴木伊豆山
感触のなほ手に残る蚕かな 石原夏生
【入選】
夕暮れの屯田の庭の野バラかな 服部尚子
蚕飼ふ棚の昏さの恐ろしき 青沼尾燈子
薔薇一輪剪つてわたしの誕生日 那珂侑子
九十になりても薔薇の似合う人 那珂侑子
闇に音たてて葉を食む春蚕かな 及川由美子
友達と明日見にゆく蚕かな 三玉一郎
したたかに戦を生きて昭和の日 上村幸三
子の髪も蚕飼のかざの強かりき 齋藤嘉子
香りごと剪つて渡さん薔薇一輪 辻奈央子
養蚕所訪ねて貰ふ捨蚕かな 阿部けいこ
古びたる靴捨てきれず昭和の日 武藤主明
はびこりて良き香を放つ野ばらかな 及川由美子
男とは淋しきものよ昭和の日 武藤主明