花のズーム句会 2021年4月3日
第一句座
長谷川櫂選
【◎特選】
歳月や花に眠れる牛の骨 上田雅子
【特選】
魂をゆさぶつてゐる桜かな 上田悦子
吉野山花に寝転べわが心 飛岡光枝
逝く花を押し返しくる河口かな 北側松太
一幅の花の涅槃図みちのくは 玉置陽子
【入選】
舞ひ舞ひて海へと帰るさくらかな 喜田りえこ
山桜ぽつんぽつんと人の家 飛岡光枝
味噌汁のあぶらげ嬉し花のころ イーブン美奈子
大伽藍大音声の桜かな 北側松太
掃かれたる農家の庭を花ふぶき おほずひろし
花吸の鋭声やひびく桜かな おほずひろし
初花やこの普段着のお気に入り イーブン美奈子
咲き満ちて夜叉となりゆく桜かな 喜田りえこ
六角の九谷のとくり花の宵 花井淳
肩に触るるしだれ桜もけふの福 花井淳
散るを待つしじまの中の桜かな 稲垣雄二
老ひゴルフあちけこちゆけ山笑ふ 湯浅菊子
水鏡かの世の花を映しけり 喜田りえこ
吉野建落花つめたき朝かな 斉藤真知子
心しづかにガシャといただく浅蜊汁 田中益美
花散るやひねもす棺つくる音 松川まさみ
雀らの花を散らして遊びけり 岩井善子
花びらの雫一つに花の山 稲垣雄二
まぼろしの宴始まる花の下 斉藤真知子
をさなごに迎へられたる花の宿 三玉一郎
奈良漬や一夜明けたる花の膳 稲垣雄二
あまご焼くうしろに落とす花の水 上田忠雄
すいすいと登るや花に誘はれて 東一爽
記念樹のバケツの苗木花吹雪 岩井善子
花びらの水面を一羽ゆく鴨よ 葛西美津子
ふるさとの花の自慢よ桜餅 田村史生
糸桜この家とともに古りにけり 臼杵政治
暁の雪と思へば初桜 玉置陽子
貼り合はす千代紙の箱桜菓子 澤田美那子
この葉つぱ少し小さいぞ桜餅 斎藤嘉子
花見舟鞆に舳先に花浴びて 上田雅子
疫の世をさくらさくらと酔うてけり 松川まさみ
花を見て西行の妻想ふ寺 青沼尾燈子
一片の落花の悼むこころかな 三玉一郎
子の宝混じる瓦礫や山ざくら 宮本みさ子
花の山十年晒し置く瓦礫 宮本みさ子
花冷の今宵天魚は骨酒に 葛西美津子
誰もまだ起きてこぬ朝花の雨 田中益美
花一輪花にまぎれずありにけり 三玉一郎
きみとゐる花の一日の眩しさよ 川辺酸摸
金貸して吾も文無し夕桜 臼杵政治
花の山ま白き龍の眠りけり 上田雅子
さみしさの底吹きわたれ花吹雪 岩井善子
泡一つ抱きて開く桜漬 稲垣雄二
捌かれて白き花びら桜鯛 上田悦子
来し方の蹉跌指折る桜かな 青沼尾燈子
四阿の暗がりにひと初ざくら おほずひろし
残生の二人にふぶく桜かな 川辺酸摸
桜湯や吉野の冷えもなつかしく 澤田美那子
第二句座
長谷川櫂選
【特選】
花も葉もしだれて春の月の下 葛西美津子
寂しさや桜花壇といふ暮春 上田忠雄
月おぼろ遊び疲れし花びらも 葛西美津子
【入選】
木を植ゑて三年のちは花見かな 稲垣雄二
黒潮に舟の揉まるる桜かな 北側松太
満開の花のまなかに鹿の子立つ 上田悦子
寝返りて冷たき花の枕かな 飛岡光枝
なまな手で鱗はとれず桜鯛 澤田美那子
老木のわけても白し花の冷え 玉置陽子
渡し待つ向うの岸も桜かな 上田雅子
縫ひあげて白き産着や花の昼 斉藤真知子
花守に時折猫の来て遊ぶ イーブン美奈子
花びらを帽子で掬ふ子供かな 岩井善子
白川郷へ吾も辿りし山桜 花井淳
弁当はむすび一つや花の山 斉藤真知子
今朝一片花の奈落へ散りゆけり 上田雅子
川上に月の生まるる桜かな 北側松太
好きな人を見てゐしことも花疲れ イーブン美奈子
焚き付けの杉の葉拾ふ花の下 稲垣雄二
人おらぬ上野の森を花あらし おほずひろし
ひとひらの花の塵なり一句かな 上田雅子
みよしのや太閤様へ飛花落花 田村史生