ネット投句(2020年12月31日)選句と選評
・新年明けましておめでとうござます。
【特選】
微動だにせぬ閑かさや大嚔 07_福島 渡辺遊太
だんだんに遺言めきて日記果つ 11_埼玉 園田靖彦
数ページむしりとりたる古日記 11_埼玉 園田靖彦
ぬめぬめと滑る昆布を結びけり 11_埼玉 上田雅子
宇宙ごみ闇に漂ふ寒さかな 12_千葉 池田祥子
・闇を
ぎこちなく六尺離れて年の礼 13_東京 横山直典
・離れ
東京が頭を垂れる除夜の鐘 13_東京 岡田定
怪物のひととせやつと歩み去る 13_東京 西川遊歩
・一年
冬の水しづかに冬を映しけり 14_神奈川 三玉一郎
書初の大書は墨の枯るるまで 14_神奈川 片山ひろし
人の息大地の息や寒造 17_石川 花井淳
しわしわの命も命初笑ひ 23_愛知 稲垣雄二
すつぽんと大根抜くごと年新た 23_愛知 稲垣雄二
蓮枯れて名残の骨の幾許ぞ 26_京都 佐々木まき
授かりし男女の双子竜の玉 26_京都 氷室茉胡
鏡餅単純にして静かなる 27_大阪 澤田美那子
静けさに神宿るらん鏡餅 27_大阪 澤田美那子
はや誰か参りし後のけさの春 28_兵庫 千堂富子
初茜大屋根小屋根わかちあふ 29_奈良 喜田りえこ
碧落や潜んでをるは冬将軍 37_香川 丸亀葉七子
・碧落に
人類の大転換や注連飾る 44_大分 土谷眞理子
・人類は大転換へ。動きを。
【入選】
故郷の旧町名に正月来 01_北海道 高橋真樹子
・へ
ががいもの種髪に見惚れ十二月 01_北海道 芳賀匙子
やどりぎのぼんぼりほのか初御空 01_北海道 芳賀匙子
・ほのか、ダメ。
自意識だ?犬にでもやれ枯野行く 01_北海道 柳一斉
宴果てて港に降れる雪を見に 01_北海道 柳一斉
雪折や任にあらざる新総理 04_宮城 長谷川冬虹
煤逃げて山幸句集三読す 04_宮城 長谷川冬虹
・句集山幸
繭玉やくるくる回る女の子 05_秋田 佐藤一郎
・繭玉と?
初雪や面影橋を僧ひとり 05_秋田 佐藤一郎
・ひとりゆく。坊さんでなくてよろし。
冬菫雪の中より目覚めけり 11_埼玉 上田雅子
華やぎも無きまま屠蘇を祝ひけり 11_埼玉 上田雅子
冬川に水輪ときおり何棲むや 11_埼玉 藤倉桂
・ときをり。自分でなされたし。
コロナ禍や大根炊き上ぐ飴色に 11_埼玉 藤倉桂
・飴の色
聞きなれし声に振り向く除夜詣 12_千葉 若土裕子
初夢の仄とうれしき名残かな 12_千葉 若土裕子
疫年のとどのつまりや除夜の鐘 12_千葉 谷口正人
片づきしことなき今年除夜の鐘 12_千葉 谷口正人
・こと何もなし
軽トラに青竹匂ふ年用意 12_千葉 池田祥子
北に向かふ蝶の危ふし冬の海 12_千葉 麻生十三
耳遠き犬とながむる冬の虹 13_東京 岡田栄美
雪の町かすかに夕日ありにけり 13_東京 岡惠
葛湯吹く花の匂ひと言はれしが 13_東京 岡惠
庭先に年酒冷やす亭主かな 13_東京 市村さよみ
・年酒を。庭先に、あいまい。庭に出し?
味薄き今年のごまめまなこ澄む 13_東京 市村さよみ
今日よりは今年よりはと年の暮れ 13_東京 森徳典
新植のブナの木眠る山眠る 13_東京 森徳典
ここらみなわが庭柚子の風呂に入る 13_東京 神谷宣行
年行くや羽ばたきさうな金閣寺 13_東京 西川遊歩
クリスマステネシーワルツ独りうたう 13_東京 長尾貴代
・ふ
伊勢海老を網から外す手際かな 13_東京 楠原正光
ビル街にスケート場の灯りかな 13_東京 楠原正光
・ビル街の、灯りけり
日記買ふまず命日と誕生日 13_東京 堀越としの
遺しゆく日々いとほしや除夜の鐘 13_東京 堀越としの
リハビリに花を咲かせんお屠蘇くむ 13_東京 櫻井滋
老い二人命百まで屠蘇祝ふ 13_東京 櫻井滋
ブラインド一枚ずつ拭く年の暮れ 14_神奈川 伊藤靖子
・づつ。自分で。
青森の雪の町より来し林檎 14_神奈川 伊藤靖子
年の湯や母しづかにて子もしづか 14_神奈川 越智淳子
冬夕焼早め早めの厨ごと 14_神奈川 遠藤初惠
処方薬まず受けとりに年用意 14_神奈川 遠藤初惠
・まづ。自分で。
ユーミンの歌にさくさく年用意 14_神奈川 原田みる
枯草を抜けば豊けき大地の香 14_神奈川 原田みる
・豊かな。ふつうに。
舟一隻茫々として冬に入る 14_神奈川 三浦イシ子
・たるや
まづ緊急外来番号年用意 14_神奈川 松井恭子
天地のすみに菜園注連飾る 14_神奈川 松井恭子
付句にて繋りし年惜みけり 14_神奈川 松井恭子
綿虫や誰か来そうで誰も来ず 14_神奈川 水篠けいこ
ゴム草履冷たき朝の厠かな 14_神奈川 水篠けいこ
胸ひろげ帰帆のごとく白鳥来 14_神奈川 中丸佳音
白光に白菜ゆだね静かなり 14_神奈川 湯浅菊子
鴛鴦のどれが夫婦か花鳥園 14_神奈川 那珂侑子
破魔矢受く誰を射るではなけれども 14_神奈川 片山ひろし
初富士を夫婦で仰ぐ露天風呂 14_神奈川 片山ひろし
朝霜や魚板一打にて動く 17_石川 花井淳
一束として大根の白きかな 17_石川 岩本展乎
・にして
人の死を山と数へし年越へん 17_石川 松川まさみ
尾白鷲人間界の病み覗く 19_山梨 小泉雅恵
・病深く
梟のブックエンドにわが句集 20_長野 金田伸一
・梟や
荘厳にオルガン抜ける寒気かな 20_長野 大島一馬
・荘厳の、とほる
順に山やま眠るつもり「生得の位」 20_長野 柚木紀子
やすらかな心となりぬ毛糸編み 21_岐阜 夏井通江
・む
冬雲の遊ぶらし照り翳る部屋 21_岐阜 三好政子
・照り翳る部屋冬雲の遊ぶらし
後ろざまに身を投げて打つ除夜の鐘 21_岐阜 三好政子
・後ろへと
野に畑に人いなくなる初景色 22_静岡 池ヶ谷章吾
・誰もをらざる
初席の撥ねてこの店鴨蒸籠 23_愛知 臼杵政治
扉開け去年と今年を入れ替へる 23_愛知 服部紀子
薪足して言葉少なく冬籠り 23_愛知 野口優子
搗き立てのあんころ餅や小晦日 23_愛知 野口優子
冬木立山の子細のあらはなる 26_京都 佐々木まき
年惜しむ母と面会出来ぬまま 26_京都 氷室茉胡
かたくなに開かぬ抽斗年の暮 27_大阪 安藤久美
柚子風呂や借りものの身を労はらん 27_大阪 安藤久美
蓬莱へ船乗り継がむ年の暮れ 27_大阪 古味瑳楓
冬日向残してゆづるベンチかな 27_大阪 高角みつこ
初雪のはやも闇夜を横降りに 27_大阪 高角みつこ
心細しと文が届きぬクリスマス 27_大阪 内山薫
・手紙届きぬ
新しき年の力や豆の餅 27_大阪 木下洋子
・常套
無頼にはなれぬ父居る炬燵かな 27_大阪 齊藤遼風
雪積むややさしきものの形して 28_兵庫 加藤百合子
ゆく年やコロナの傷の満身に 28_兵庫 天野ミチ
・を
初夢や覚むればテレビ鳴っており 28_兵庫 髙見正樹
・つ。自分で。
暁闇の厨の灯し大晦日 29_奈良 喜田りえこ
・灯る
鰹節揃へ安心年の暮 29_奈良 田原春
招きくるる息子家族やクリスマス 29_奈良 田原春
疫よ去れこの寒梅を盾とせん 33_岡山 齋藤嘉子
・疫病へ梅一輪を
もう少し生きてゐたしや福寿草 37_香川 曽根崇
天狗岳の風来て柿の熟るるなり 38_愛媛 古志溢子
雪見酒夫唯今別世界 42_長崎 ももたなおよ
煤逃げと大きテレビに入りゆく 42_長崎 ももたなおよ
ひやひやと刺さる視線や大嚔 42_長崎 川辺酸模
煤逃げの男ら集ふコンペかな 42_長崎 川辺酸模
与願印の御手重からん煤払 44_大分 竹中南行
初めてや夫と二人の年越よ 44_大分 土谷眞理子
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