古志金沢ズーム句会(2020年8月16日)
第一句座
・鬼川こまち選
【特選】
ゆらゆらと市電が通る原爆忌 酒井きよみ
父母の山河八月十五日 泉早苗
大いなる雲の奥より秋来たる 齋藤嘉子
大拙の世界は柳ちるころか 長谷川櫂
水底の豆腐をすくふ晩夏かな 泉早苗
虻はらふ馬のしつぽの大回転 梅田恵美子
草木に焦土の記憶原爆忌 泉早苗
生身魂汝の八月を語られよ 篠原隆子
水求む人の列あり蟻の塔 泉早苗
とどろきて瀧となりたる行者かな 安藤久美
【入選】
打たれても虻悠々と馬の尻 梅田恵美子
逃げ水を追ふかのごとき明日かな 清水薫
父母乗せむ二頭立てなる茄子の馬 氷室茉胡
秋蝶のすがたを見せぬ暑さかな 近藤沙羅
たたまれて一本の棒白日傘 稲垣雄二
踏まるるな風にころがる蝉のから 梅田恵美子
秋の夜の一枚板の古机 松川まさみ
祷りつつ細りつつ八月は逝く 泉早苗
終戦日明けて平和のはじめたれ 松川まさみ
百ほどもルールあるらし蟻の列 清水薫
凌霄花女もときに啖呵切る 酒井きよみ
憎らしやまだ元気なる生見魂 山本桃潤
民草の涙が茂るガジュマルぞ 齋藤嘉子
八月や人もマスクも使ひ捨て 稲垣雄二
大蟻を潰し南無阿弥陀仏とは 密田妖子
鳴かば声美しからん赤蜻蛉 趙栄順
恐ろしや弾の降りくる蟻の列 谷眞理子
梅干の落ち着くところ握り飯 清水薫
・長谷川櫂選
【特選】
青春は恥の時代よ爽やかに 趙栄順
水底の豆腐をすくふ晩夏かな 泉早苗
憎らしやまだ元気なる生見魂 山本桃潤
大灘は波で波ゆふ星まつり 篠原隆子
鳴かば声美しからん赤蜻蛉 趙栄順
恐ろしや弾の降りくる蟻の列 谷眞理子
【入選】
向日葵の背中に燃ゆる残暑かな 稲垣雄二
父母乗せむ二頭立てなる茄子の馬 氷室茉胡
海風に切子を灯す漁師かな 花井淳
この地球あをあをとあれ蚯蚓鳴く 酒井きよみ
たたまれて一本の棒白日傘 稲垣雄二
少年の明日の背丈や立葵 中野徹
この盆は三日三晩を水入らず 酒井きよみ
墓訪へばゑのころぐさのほしいまま 佐々木まき
父母の山河八月十五日 泉早苗
虻はらふ馬のしつぽの大回転 梅田恵美子
風鈴や機嫌よろしきけふの風 清水薫
草木に焦土の記憶原爆忌 泉早苗
秋の夜の一枚板の古机 松川まさみ
生身魂汝が八月を語られよ 篠原隆子
白雲のかがやく空や秋暑し 近藤沙羅
その中の種は血の色ゴーヤかな 玉置陽子
ふりむかぬ思ひの滲む秋日傘 松川まさみ
木洩れ日は花びらである葡萄棚 趙栄順
くれなゐの願の糸よ清瀬村 篠原隆子
民草の涙が茂るガジュマルぞ 齋藤嘉子
木賊刈る木賊の影を負ひながら 篠原隆子
浮雲の解けては結ぶ今朝の秋 玉置陽子
投了や向かひて涼しき顔と顔 齋藤嘉子
大樹から去りゆく蝉やまた一つ 花井淳
遠き日の記憶正確生身魂 氷室茉胡
蒲焼の泥鰌を抱へ盆の月 宮田勝
八月や人もマスクも使ひ捨て 稲垣雄二
汝が胸が我がふるさとぞ生身魂 趙栄順
早稲の香や百万石の大日和 佐々木まき
盆の月かぼちや煮たがを二の膳に 花井淳
羽根のみを残して蝉は消えにけり 密田妖子
握り飯のへそに梅干落ち着きぬ 清水薫
第二句座 席題「鵙」、「落し水」
・鬼川こまち選
【特選】
鵙の贄低いぞ雪は少ないぞ 密田妖子
ジンジャーの花ぽろぽろと鵙日和 玉置陽子
水落ちて日に日に加賀はかぐはしき 長谷川櫂
鳴く声に濃淡のあり鵙日和 趙栄順
奔放な後ろ姿よ落し水 山本桃潤
日輪を底に沈めて落し水 玉置陽子
落し水噴き出す泥を鷲掴み 宮田勝
いそいそと田の水落つる星の空 佐々木まき
【入選】
石一つで変はる運命落し水 山本桃潤
鵙一声あとは閑かな奥卯辰 泉早苗
影長き人来て田水落しけり 安藤久美
願わくば我に実りを落とし水 松川まさみ
人は誰も涙こらへぬ鵙の贄 松川まさみ
大事件ありたるらしく鵙なけり 酒井きよみ
免許証持たぬ俳人百舌の影 清水薫
落し水いよいよ空は広くなる 齋藤嘉子
誰がために差し上げられし鵙の贄 谷眞理子
鵙のにへ干からびてもう枝となり 梅田恵美子
・長谷川櫂選
【特選】
影長き人来て田水落しけり 安藤久美
秋津洲海へ傾け水落す 中野徹
生きながら鵙の贄とぞなりにける 趙栄順
友禅の糊置進む落し水 花井淳
かさこそと葉陰に触るる鵙の贄 佐々木まき
モズ吉と名付けて鵙を待ってをり 近藤沙羅
行く道に蒼空広し鵙日和 宮田勝
【入選】
鵙一声あとは閑かな卯辰山 泉早苗
まつすぐに空突き抜けて鵙の声 梅田恵美子
よりにより目の高さなる鵙の贄 酒井きよみ
日輪を底に沈めて落し水 玉置陽子
落し水女房をのせ耕運機 密田妖子
まるで花咲くやうにあり鵙の贄 齋藤嘉子
いそいそと田の水落つる星の空 佐々木まき