古志金沢ズーム句会(2020年7月19日)
第一句座
・鬼川こまち選
【特選】
梅雨空に高層ビルの刺さりをり 高橋慧
達谷忌熱沙をつかむ鶴の爪 篠原隆子
白山の水の味なり水ようかん 趙栄順
地引網夏の浜辺の玉手箱 山本桃潤
白山の大暑や虹をしたがへて 泉早苗
海はピアノ遥かより寄す土用波 山本桃潤
涼しさや石つたひ来る人の声 安藤久美
さみしさの余りて開くききやうかな 齋藤嘉子
梅雨空をこぼれて来たる白帆かな 玉置陽子
蝉の穴深く閑かな夢の跡 佐々木まき
【入選】
鮒鮓や湖狭めゆく夕日影 花井淳
蛍を蚊帳に放ちし日の遥か 高橋慧
梶の葉や恋の句二つ遠ざけて 宮田勝
白山をよぎるも白し梅雨の雲 佐々木まき
虹七色その水色のお菓子かな 長谷川櫂
重力にあらがふごとく梅雨の月 安藤久美
ふるさとは胸に住居り立葵 清水薫
茄子漬やほんに大和の色なりき 高橋慧
マスクにも世にも馴染まず蟇 稲垣雄二
四方より黴の視線の書斎かな 稲垣雄二
千枚田能登の岬に青々と 佐々木まき
冷し酒一合ほどをかわたれと 山本桃潤
梅雨深し角には酢屋の濃き匂ひ 密田妖子
七月の逃ぐる他なき輩よ 松川まさみ
幼虫の何かになれる夏休み 中野徹
風起こせ厄追ひ払へ奈良団扇 趙栄順
一村の灯を引き裂くや出水川 安藤久美
観音の水瓶あふる滝の音 松川まさみ
硯洗ひ心涼しくなりにけり 齋藤嘉子
白山の尾根と大暑とせめぎあふ 泉早苗
・長谷川櫂選
【特選】
うすずみの色はみよしの葛桜 安藤久美
白山の水の味なり水ようかん 趙栄順
菜刻む音は谺せよ夏厨 趙栄順
海はピアノ遥かより寄す土用波 山本桃潤
のたうつて梅雨も苦しむ地球かな 松川まさみ
四方より黴のみてゐる書斎かな 稲垣雄二
馴れてゆくこころあやふし冷奴 松川まさみ
蝉の穴深く閑かに夢の跡 佐々木まき
運のよさ中くらいなり冷奴 梅田恵美子
【入選】
営業のノルマ重たき土用かな 氷室茉胡
白山の大暑や虹をしたがへて 泉早苗
天も地も箍外れたり梅雨出水 酒井きよみ
被災地へせめて氷室の雪一塊 泉早苗
白南風や仕掛けの魚籠に大鰻 氷室茉胡
涼しさや石つたひ来る人の声 安藤久美
梅雨出水大字小字泥地獄 稲垣雄二
心中の鬼を見てきし昼寝覚 梅田恵美子
南国は月桃で編む円座かな 篠原隆子
茄子漬やほんに大和の色なりき 高橋慧
マスクにも世にも馴染まず蟇 稲垣雄二
月読に焦がるる花か烏瓜 齋藤嘉子
干梅の頽廃色に仕上がりぬ 佐々木まき
冷し瓜生涯ひとりを嘆く人 玉置陽子
美しき筋肉動く夏祭 趙栄順
風起こせ厄追ひ払へ奈良団扇 趙栄順
ひかりあらばこそソーダ—水はきれい 中野徹
絹張りの扇少しづつ開く 佐々木まき
なぎの実のころがる小道梅雨の杜 梅田恵美子
第二句座
・鬼川こまち選
【特選】
馥郁と吾も熟せよ梅酒かな 高橋慧
【入選】
桃源の瓶の微睡梅酒かな 玉置陽子
梅酒造り夫に任せて二十年 氷室茉胡
戦争を逃げ回りたる梅酒かな 稲垣雄二
ひとりカクテル一人ロックの梅酒かな 花井淳
恐ろしや開かずの梅酒ひとつある 趙栄順
・長谷川櫂選
【特選】
雨降れば梅酒の瓶のなほしづか 安藤久美
戦争を逃げ回りたる梅酒かな 稲垣雄二
夫婦久し厨の梅酒また久し 佐々木まき
恐ろしや開かずの梅酒ひとつある 趙栄順
【入選】
夫と漬けし梅酒は今や黄金色 齋藤嘉子
飲むよりは飲まさせられゐる加賀梅酒 中野徹
また作る古りし梅酒を眺めつつ 梅田恵美子
馥郁と吾も熟せよ梅酒かな 高橋慧