古志金沢ズーム句会(2021年1月17日)
第一句座
・鬼川こまち選
【特選】
石膏の歯形を削る寒夜かな 酒井きよみ
白山の峰の白さや蕪酢 梅田恵美子
大蕪さつくと白き水を切る 山本桃潤
早番の凍つる足音遠ざかる 酒井きよみ
子らがどんと突く天地や初稽古 佐々木まき
二三人隠れてゐたる炬燵かな 田村史生
美しき鬼を抱きて山眠る 玉置陽子
一月や眠れぬ山の獣思ふ 中野徹
アネモネのまだ眠たげな莟かな 長谷川櫂
羽二重と名付けし加賀の凍豆腐 花井淳
【入選】
ひとつゐて語りかけたき寒雀 趙栄順
独楽のごと跳ねて少年独楽を打つ 趙栄順
スコーンに狼の口春隣 玉置陽子
花びら餅ほのかに春の透けてをり 稲垣雄二
雪掻くや蒼き閃光ほとばしる 宮田勝
父と子の凧は一つや空高く 佐々木まき
暁光の突き抜けて来る氷柱かな 清水薫
影あをみ大拙の庭雪深し 密田妖子
大雪を搔くや地の色草の色 花井淳
金閣の金の鳳凰雪に舞ふ 氷室茉胡
外に出よと檄の届きぬ雪つぶて 宮田勝
悴まず着ぶくれもせず詩心あれ 田村史生
白山の森に千年寒の水 清水薫
良き運と信じ始めし七日かな 中野徹
寒蜆夜のしじまのひとり言 梅田恵美子
一献や新郎にして年男 安藤久美
りんりんと蕾は空へ寒紅梅 梅田恵美子
滝凍る白き炎をあげながら 趙栄順
おでん屋の湯気に十色の香りかな 清水薫
つがひ鴨かはるがはるに目を覚ます 近藤沙羅
打ち寄せてこの国洗へ波の花 松川まさみ
はくれんの天人五衰はじまりぬ 長谷川櫂
・長谷川櫂選
【特選】
白山の白く輝く御慶かな 山本桃潤
箔を打つ音しづかなり雪へ雪 篠原隆子
打ち寄せてこの国洗へ波の花 松川まさみ
拾得の夢のなかより初箒 篠原隆子
雪を着て闇より浮かぶ柳かな 密田妖子
【入選】
石膏の歯形を削る寒夜かな 酒井きよみ
草やめだか一匹孵りたる 篠原隆子
花びら餅ほのかに春の透けてをり 稲垣雄二
寒稽古湯のもうもうと沸きゐたり 篠原隆子
大蕪さつくと白し水を切る 山本桃潤
少しづつ福持ち寄らん初句会 田村史生
白山の森に万年寒の水 清水薫
一献や新郎にして年男 安藤久美
大皿ははや春の景蟹を食ふ 稲垣雄二
りんりんと蕾を空へ寒紅梅 梅田恵美子
寒雷や能登ゆすぶり加賀あおだかす 花井淳
滝凍る白き炎をあげながら 趙栄順
老人と猫の居場所や日向ぼこ 佐々木まき
第二句座(席題=手袋、冬芽)
・鬼川こまち選
【特選】
手袋を外して妻の手の固さ 山本桃潤
今日ぐんと力つけたる冬芽かな 松川まさみ
手袋や手持無沙汰の年は過ぎ 中野徹
今日は富士近くに見ゆる冬樹の芽 間宮伸子
濤音は太鼓のごとし冬木の芽 篠原隆子
【入選】
青空の風の中なる冬芽かな 長谷川櫂
棄てられぬ皮の手袋作業用 密田妖子
潮満ちて潟かがやける冬芽かな 篠原隆子
冬木の芽山は毎日柔らかに 山本桃潤
朝の日のまだ届かざる冬木の芽 安藤久美
あかあかと薔薇の冬芽の幼気な 佐々木まき
揺れながら光は空へ冬木の芽 趙栄順
信濃いま山の力の冬芽かな 長谷川櫂
手袋を脱ぎむづかしき話かな 松川まさみ
一本の一直線の冬木の芽 趙栄順
・長谷川櫂選
【特選】
潮引いて潟かがやける冬芽かな 篠原隆子
黄昏のバス待つ赤き手袋よ 高橋慧
最果の夕陽こまやか冬木の芽 鬼川こまち
【入選】
手袋を外し妻の手やはらかき 山本桃潤
この道をまどはず行けと冬木の芽 清水薫
今日ぐんと力つけたる冬芽かな 松川まさみ
冬木の芽ほころびてきし花瓶かな 梅田恵美子
冬木の芽全山を埋め尽くしをり 稲垣雄二
日の光雫とこぼす冬芽かな 佐々木まき
あかあかと薔薇の冬芽の幼気な 佐々木まき
揺れながら光となりぬ冬木の芽 趙栄順
手袋を脱ぎむづかしき話かな 松川まさみ