広島ズーム句会(2020年12月6日)
第一句座
・矢野京子選
【特選】
煤払つばめの巣にもかるく触れ 神戸秀子
秋の野の日差しも鍋に草木染 百田直代
別れけりかさと枯葉の手を重ね 飛岡光枝
今少し生きてくれぬか枯蟷螂 高橋真樹子
初鏡命の果てを写すべく 長谷川櫂
【入選】
木枯やじぐざぐじぐざぐ自転車こぐ 夏井通江
役名で呼ばれてゐる子クリスマス 長井亜紀
炊きあがる飯に芯ある開戦日 斉藤真知子
一年の嘘ころげゆく空つ風 石塚純子
白鳥来水面に銀の影おとし 飛岡光枝
五千万病みし地球や冬重し 原京子
手探りに何やらつかむ炬燵かな 石塚純子
蹴り出され冷ゆるしかなき湯婆かな 斉藤真知子
牡蛎育つ月のしづくを吞み込んで 大場梅子
初氷伊賀は紐組む音に覚め 神戸秀子
・長谷川櫂選
【特選】
煤払つばめの巣にもかるく触れ 神戸秀子
老人のおでこに口に冬の蠅 上松美智子
一斉にざぼんぽんかんわが狭庭 岡村美沙子
【入選】
新年や異国の友へズームイン 林弘美
ビニール傘透けて顔ある時雨かな 飛岡光枝
空の青掴まんとする冬芽かな 城山邦紀
ふくろふや首まで浸かる槙の風呂 神戸秀子
心から生まるる言葉霜の花 菅谷和子
白鳥来水面に銀の影おとし 飛岡光枝
抜きたての大根の葉の裏は棘 夏井通江
午後からは薄日さし入る風邪心 矢野京子
超音波検査の闇は冬の海 ストーン睦美
冬の蠅殺気感じてとびたちぬ 上松美智子
凩にさらはれさうな心かな 斉藤真知子
秋の野の日差しを鍋に草木染 百田直代
洛北の旅の馳走の炭火かな 石塚純子
一筋の緑を翅に枯蟷螂 城山邦紀
第二句座(席題=ずわい蟹、数へ日)
・矢野京子選
【特選】
ずわい蟹食ふに作法もあるものか 百田直代
数へ日の車窓ひと時白き富士 石塚純子
数へ日や次なる夢をぬくめつつ 大場梅子
【入選】
ずわい蟹雪降る海の王者たれ 長谷川櫂
城崎に直哉をたどる松葉蟹 大場梅子
数へ日やおもちや片づくのはいつか 城山邦紀
数へ日やひと日松籟聞くことも 神戸秀子
数へ日の雑巾固く絞りけり 石塚純子
数へ日や増ゆる買い物メモばかり 百田直代
・長谷川櫂選
【特選】
ずわい蟹食ふに作法もあるものか 百田直代
越前の蟹あかあかと外は雪 矢野京子
香箱蟹甲羅の酒の波打てる 飛岡光枝
殺気立つ市場にどかと松葉蟹 大場梅子
数へ日の車窓ひと時白き富士 石塚純子
数へ日や次なる夢をぬくめつつ 大場梅子
ずわい蟹夫に不慣れでありしころ 高橋真樹子
【入選】
籠一杯越前ガニの売られゆく 林弘美
到来のズワイガニなり甲羅焼く 林弘美
ズワイガニ旅の夕餉の湯気のなか 夏井通江
ずわい蟹ばりと脚もぐ雪のなか 飛岡光枝
ずわい蟹荒海に雪降りつづく 長井亜紀
ずわい蟹雪をかむりて糶られけり 斉藤真知子
どす黒き能登の波浪や松葉蟹 河本秀也
まつば蟹脚の一本もげにけり 米山瑠衣
越前の海は大時化ずわい蟹 米山瑠衣
金沢の市場にぎやかずわいがに 伊藤靖子
城崎の荒海育ちずわい蟹 菅谷和子
湯に入れて阿鼻叫喚のずわい蟹 斉藤真知子