古志仙台ズーム句会(2020年8月23日)
第一句座
・長谷川冬虹選
【特選】
恋人を閉じ込めてゐる花氷 川村杳平
爆弾のやうな西瓜を真つ二つ 武藤主明
みちのくの闇の奥なる桃太る 佐藤和子
終戦日藁をつめたる敷き布団 宮本みさ子
ゲルニカのふたたび八月十五日 鈴木伊豆山
【入選】
身と心疾うに熔けたる残暑かな 青沼尾燈子
沙羅の花夢に呼ばれて覚めにけり 甲田雅子
日盛りや首振って耐え牛蒡の葉 石原夏生
コロナ禍や途切れ途切れて大文字 辻奈央子
ひるがへる鯉と目が遇ふ昼寝覚 川村杳平
出来加減ためつすがめつ菊師かな 石川桃瑪
返事待つことも仕事やアイスティー 森凜柚
辞世の句挙げて存ふ生身魂 石原夏生
川の字の崩れて海に熱帯夜 辻奈央子
飛行兵の剥落無言館涼し 鈴木伊豆山
・長谷川櫂選
【特選】
ささやかれゐて秋の蚊を殺しけり 那珂侑子
恋人を閉じ込めてゐる花氷 川村杳平
ひるがへる鯉と目が遇ふ昼寝覚 川村杳平
みちのくの闇の奥なる桃太る 佐藤和子
蟬落ちて蟻を払ふや羽と脚 青沼尾燈子
川の字の崩れて海に熱帯夜 辻奈央子
【入選】
潮浴びす十年前の大津波 佐伯律子
かなかなや人影もなき爆心地 川辺酸模
戦争を母は語らず白団扇 長谷川冬虹
精霊の思ひあかあか大文字 辻奈央子
見てる間に蚯蚓乾びる炎暑かな 川辺酸模
青蚊帳のよろよろと立つ仏間かな 石原夏生
溜池はぬるま湯のやう牛洗ふ 上俊一
スーパーのなかを一巡盆用意 那珂侑子
終戦日藁をつめたる敷き布団 宮本みさ子
ぎんどろの句集ひらくや夏の蝶 長谷川冬虹
一日で少年となる夏休み 佐伯律子
返事待つことも仕事やアイスティー 森凜柚
炎天の静かな街に爆心地 川辺酸模
主婦楽し玉蜀黍を皮ごとチン 那珂侑子
稲の花朝起きてまづ髪束ね 及川由美子
敗戦日風船ガムのほろ苦し 川辺酸模
第二句座(席題=赤のまま、色鳥、干し梅)
・長谷川冬虹選
【特選】
天の星一つこぼれて干梅に 辻奈央子
赤のまま未完の城を埋め尽くす 武藤主明
句敵は肥後もつこすや赤まんま 川辺酸模
一生に食べきれぬほど梅を干す 及川由美子
犬蓼をしごくや被曝する地球 宮本みさ子
【入選】
小鳥来てぎんどろ銀の葉を落とす 鈴木伊豆山
干し梅の日ごと似てくる祖母の顔 上俊一
赤のままホームの果てに一人立ち 伊藤寛
干梅の筵外れて二つ三つ 甲田雅子
・長谷川櫂選
【特選】
小鳥来てぎんどろ銀の葉を落とす 鈴木伊豆山
梅筵月の光に乾きゆく 鈴木伊豆山
一生に食べきれぬほど梅を干す 及川由美子
犬蓼をしごくや被曝する地球 宮本みさ子
干梅の筵外れて二つ三つ 甲田雅子
【入選】
一周忌形見の甕に梅漬る 川村杳平
梅を干す明日は舅の遠忌にて 青沼尾燈子
天の星一つこぼれて干梅に 辻奈央子
大笊を年に一度や梅を干す 石川桃瑪
目覚むれば色鳥こぼる狭庭かな 川辺酸模
色鳥の声は醜しオアフ島 川村杳平
ふるさとは梅実る国梅筵 長谷川冬虹
戦争の終はりのあの日赤のまま 甲田雅子
笊わらだ有るたけ出して梅を干す 佐伯律子
白髪の増えし女房梅を干す 川辺酸模
遠き日や梅干し弁当ひつそりと 甲田雅子
干し梅の日ごと似てくる祖母の顔 上俊一
梅を干す母の使ひし大き笊 阿部けいこ
休日の娘は日がな梅を干す 青沼尾燈子
梅干して天下の風を呼びにけり 宮本みさ子
色鳥や忘れしころに鳴る時計 及川由美子
太陽の子供のやうな梅を干す 武藤主明
過ぎてゆく時の酸つぱさソーダ水 森凜柚