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俳句的生活

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カテゴリーアーカイブ: 「四季」から

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読売新聞「四季」から75

俳句的生活 投稿日:2017年5月1日 作成者: dvx223272017年5月31日

象に乗るインドの聖 はるばるとゆく者はみな急がず行けり  小島ゆかり

日永とは春の日がなかなか暮れないこと。夏になるともっと日は永くなるが、あっという間に日暮れてしまう冬が去って春を迎えた喜びが、この言葉を生んだ。歌は永き日に心に浮かんだ遠い国の幻。『エトピリカ』

読売新聞「四季」から74

俳句的生活 投稿日:2017年3月2日 作成者: KAI2017年3月23日

花をのみまつらんひとに山ざとの雪まの草のはるをみせばや  藤原家隆

桜の花だけを待つ人に雪間に萌え出た若草をみせてあげたい。「新古今集」時代の歌だが、四百年後の千利休が侘び茶の心を伝えるのに使った。華やかなだけが美しいのではない。雪間の草の緑が抹茶の緑にも通じる。『後京極摂政家百首』

読売新聞「四季」から73

俳句的生活 投稿日:2017年2月23日 作成者: KAI2017年3月2日

モンローの伝記下訳五万円  丸谷才一
 どさりと落ちる軒の残雪  大岡信

 連衆四人で巻いた歌仙「新酒の巻」から。マリリン・モンローの伝記の下訳なんぞやっている駆け出しの文士。その軒の残雪が大音響を立てて落ちた。柔らかなバターのような美女の幻を打ち払う一喝。『歌仙』

読売新聞「四季」から72

俳句的生活 投稿日:2017年2月12日 作成者: KAI2017年2月23日

ほぐれんとして傾ける物芽かな  中村汀女

 春に萌え出るもろもろの草や木の芽がものの芽。そこから一枚の葉がほぐれようとして傾いている。コマ落としで撮影すれば、どの芽も右へ左へ身を揺らしながら空へ伸びてゆくのがわかるはずだ。芽をほどくという小さな命の一大事。『汀女句集』

読売新聞「四季」から71

俳句的生活 投稿日:2017年2月4日 作成者: KAI2017年2月12日

何事もなくて春たつあした哉  士朗

 節分の夜は冬と春のつなぎ目。季節の隙間につけこんで悪さを働く鬼たちを豆で追い払って一夜明ければ春。立春は春の生まれる日である。士朗は名古屋城下で名高い産科医。「何事もなくて」とはその人の、無事誕生した春をことほぐ句。『枇杷園句集』

読売新聞「四季」から70

俳句的生活 投稿日:2017年2月4日 作成者: KAI2017年2月7日

水仙の束とくや花ふるへつゝ  渡辺水巴

 水仙は冬の終わりの花。その花束を解くと、長い茎の先の花や莟がさわさわと音をたてて震えた。「ふるへつゝ」にまだ冷え冷えとした空気の感触がある。一方、「束とく」からは春を迎える喜びがこぼれそうだ。春を待つ花でもある。『白日』

読売新聞「四季」から69

俳句的生活 投稿日:2017年1月10日 作成者: KAI2017年1月24日

日の障子太鼓の如し福寿草  松本たかし

淑気という言葉がある。和やかで清らかな新春の空気をいう。たかしの句、床の間に福寿草の盆が据えてあるのだろうか。日の当たる障子が打てば鳴る太鼓のように張り詰めている。黄金色の花が真っ白な障子に映えて、まさに淑気の句。『野守』

読売新聞「四季」から68

俳句的生活 投稿日:2016年12月31日 作成者: KAI2017年1月14日

猫に来る賀状や猫のくすしより  久保より江

 年賀状の中に猫の医者から猫に来たのが一枚。「久保様方、猫野ミケ子さま」とでもあるのだろうか。掛かりつけの医者がいるくらいだから猫とはいえ下にも置かず大事にされている深窓の猫。作者は現在の九大医学部の教授夫人だった人。『久保より江句集』

読売新聞「四季」から67

俳句的生活 投稿日:2016年12月13日 作成者: KAI2016年12月31日

著ぶくれて浮世の義理に出かけけり  富安風生

「浮世の義理」とは味のある言葉だ。冠婚葬祭も忘年会もパーティもしがらみといえばしがらみ。この男、一見億劫そうにみえるが、そうばかりでもないらしい。浮世の義理を密かに楽しむ風が着ぶくれの懐からちょっとのぞいている。『朴落葉』

読売新聞「四季」から66

俳句的生活 投稿日:2016年12月1日 作成者: KAI2016年12月13日

何に此師走の市にゆくからす  芭蕉

何でこの忙しい師走の町へ烏は飛んでゆくのだろうか。琵琶湖の南端膳所での吟。烏を詠んでいるようにみえて、芭蕉はここで自分を烏になぞらえた。俗世間を離れた身でありながら、なぜお前は浮世の巷へ出かけてゆくのだという自問。『花摘』

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読売新聞「四季」から

海までは枯野ばかりや鳥のみち    丸谷才一

 枯れ果てた草地の彼方に冴え冴えと青い海がある。淡い青と薄茶のあわせ方の洒落ていること。この句は、その風景を鳥の目で眺める。小さなヒコーキに乗って低く飛んでゆくような感じがするのはそのせいだろう。作者は現代の小説家。『七十句』

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    『「おくのほそ道」を読む 決定版』
    ちくま文庫
    1,000円+税
    2025年5月刊行


    『四季のうた ウクライナの琴』
    中公文庫
    800円+税
    2025年1月刊行


    『長谷川櫂 自選五〇〇句』
    朔出版
    2200円+税
    2024年4月刊行


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    中公文庫
    800円+税
    2024年1月刊行


    『小林一茶』
    河出文庫
    800円+税
    2024年1月刊行


    『ふじさわびと』vol.26
    株式会社ふじさわびと
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    2023年1月発行


    『四季のうた 雨ニモマケズ』
    中公文庫
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    『和の思想』
    岩波新書
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    『俳句と人間』(3刷)
    岩波新書
    860円+税
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    100分de名著『おくのほそ道』(10刷)
    NHK出版
    1,000円+税
    2014年10月刊行


    『四季のうた 美しい日々』
    中公文庫
    800円+税
    2022年1月刊行


    句集『太陽の門』
    青磁社
    2200円+税
    2021年8月刊行


    『四季のうた 天女の雪蹴り』
    中公文庫
    800円+税
    2021年1月刊行


    大岡信『折々のうた』選 俳句(二)
    長谷川櫂 編
    岩波新書
    780円+税
    2019年12月刊行


    『四季のうた 普段着のこころ』
    中公文庫
    800円+税
    2019年12月刊行


    大岡信『折々のうた』選 俳句(一)
    長谷川櫂 編
    岩波新書
    780円+税
    2019年11月刊行


    『歌仙一永遠の一瞬』
    岡野弘彦、三浦雅士、長谷川櫂
    思潮社
    2200円+税
    2019年1月刊行


    『歌仙はすごい』
    辻原登、永田和宏、長谷川櫂
    中公新書
    880円+税
    2019年1月刊行


    『四季のうた 至福の時間』
    中公文庫
    700円+税
    2018年12月刊行


    『九月』
    青磁社
    1800円+税
    2018年8月刊行


    『Okinawa』
    Red Moon Press
    $15
    俳句 長谷川櫂
    英訳 デイヴィッド・バーレイ&田中喜美代(紫春)
    2018年5月刊行


    『俳句の誕生』(4刷)
    筑摩書房
    2300円+税
    2018年3月刊行


    『四季のうた 想像力という翼』
    中公文庫
    700円+税
    2017年12月刊行


    『芭蕉さん』
    俳句・芭蕉 絵・丸山誠司
    選句解説・長谷川櫂
    講談社
    1500円+税
    2017年3月刊行


    『震災歌集 震災句集』
    青磁社
    2000円+税
    2017年3月刊行


    『四季のうた 文字のかなたの声』
    中公文庫
    600円+税
    2016年12月刊行


    藤英樹著『長谷川櫂 200句鑑賞』
    花神社
    2500円+税
    2016年10月刊行


    『文学部で読む日本国憲法』
    ちくまプリマー新書
    780円+税
    2016年8月刊行


    『日本文学全集12』松尾芭蕉、与謝蕪村、小林一茶
    松浦寿輝、辻原登、長谷川櫂選
    河出書房新社
    2,600円+税
    2016年6月刊行


    『四季のうた 微笑む宇宙』
    中公文庫
    700円+税
    2016年3月刊行


    『芭蕉の風雅 あるいは虚と実について』
    筑摩選書
    1,500円+税
    2015年10月刊行


    『沖縄』
    青磁社
    1,600円+税
    2015年9月刊行


    『入門 松尾芭蕉』
    長谷川櫂 監修
    別冊宝島
    680円+税
    2015年8月刊行


    『歌仙一滴の宇宙』
    岡野弘彦、三浦雅士、長谷川櫂
    思潮社
    2000円+税
    2015年2月刊行


    『吉野』
    青磁社
    1,800円+税
    2014年4月刊行
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