伊賀市と芭蕉翁憲章会は芭蕉翁献詠俳句を募集しています。応募方法は次のとおりです。
・7月31日(日)必着。
・一般の部とテーマの部(今回は「晴」)
・はがきの表に住所、氏名、電話番号を明記
・はがきの裏に希望選者を明記のうえ、2句を書く。
・各部門10句まで(はがき5枚まで)。
・送り先は〒518ー0873 伊賀市上野丸の内117−13 芭蕉翁献詠俳句係
選者など詳しくは芭蕉翁顕彰会のホームページをごらんください。
伊賀市と芭蕉翁憲章会は芭蕉翁献詠俳句を募集しています。応募方法は次のとおりです。
・7月31日(日)必着。
・一般の部とテーマの部(今回は「晴」)
・はがきの表に住所、氏名、電話番号を明記
・はがきの裏に希望選者を明記のうえ、2句を書く。
・各部門10句まで(はがき5枚まで)。
・送り先は〒518ー0873 伊賀市上野丸の内117−13 芭蕉翁献詠俳句係
選者など詳しくは芭蕉翁顕彰会のホームページをごらんください。
【特選】
青空の麦秋戻れウクライナ 北海道 柳一斉
砂に寝てこころは空へ春の海 北海道 柳一斉
花冷えや脳裡きざまる逃避行 東京 長尾貴代
・脳裏にきざむ
入学のこころ忘れて卒業す 神奈川 三玉一郎
東京駅奥の奥まで春愁 新潟 安藤文
花便り連山丈を争はず 長野 大島一馬
体より働く音す春の昼 岐阜 夏井通江
・から?
この島は湾の真ん中白子干す 愛知 宗石みずえ
山桜全山神の供花とせむ 奈良 喜田りえこ
三月の天使舞ひ降りコブシ咲く 大阪 内山薫
今日よりはキーウと呼ばん花の冷 大阪 木下洋子
一瞬で戦場となる春の宵 大阪 澤田美那子
暁暗に音なく発てる遍路かな 香川 曽根崇
花冷の地球ふるはす戦車かな 長崎 川辺酸模
あの日より悲しと思ふ三月来 長崎 川辺酸模
人としてのこころ育てよ飴山忌 大分 山本桃潤
・ロシアによるウクライナ侵略の句あまた。
・スローガンにならないようにご注意ください。
・ウクライナの歴史と国民性については
シェフチェンコ詩集『ゴブザール』(群像社)をお読みください。
シェフチェンコは19世紀の人、ウクライナの国民的詩人です。
・旧かな、きちんと。
・てにをは、推敲を。
【特選】
山の匂ひ海の匂ひ北窓開く 北海道 芳賀匙子
・の、必要。
菜の花の熱気の中を歩みゆく 千葉 谷口正人
・けり
機嫌よくサーファーを待つ春の海 神奈川 三浦イシ子
我が終の歳時記なりや春届く 石川 松川まさみ
世界戦聞くだに寒き春の日々 長野 金田伸一
初蝶来ウクライナの野遥けしや 岐阜 三好政子
以下同文の卒業証書戴きぬ 岐阜 辻雅宏
万作の笑ひころげる深空かな 岐阜 梅田恵美子
退院の服のゆるさや春の風 愛知 宗石みずえ
十一年彷徨ひつづけ流し雛 愛知 青沼尾燈子
子猫来る悔い多き子育ての後 京都 吉田千恵子
新婚のごときはなやぎ春キャベツ 大阪 安藤久美
ミモザ咲く大学やめて戦場へ 大阪 木下洋子
空爆のなき空選べ帰る雁 大阪 澤田美那子
たくあんに演歌聞かせる日永かな 和歌山 玉置陽子
第一句座
・矢野京子選
【特選】
その先に戦場がある春の雲 石塚純子
一匹の心の鬼と花見せん 高橋真樹子
今生の花に埋もれて塵となる 城山邦紀
戦争がぬつと顔出す朧かな 安藤文
【入選】
ひと息に剝ぐ花鳥賊のうすごろも 神戸秀子
ひやひやと袖とほしたり花衣 長谷川櫂
花よりも花や乙女の花衣 ストーン睦美
幾万の涙と思ふ飛花落花 ももたなおよ
雁高く羽ばたけど帰る故郷なし 岡村美紗子
空へ身を投げ出して飛ぶ雀の子 夏井通江
空色の春風が吹く十六階 夏井通江
春泥を踏めばどこまで沈む靴 岡村美紗子
初燕ふるさとの山めじるしに 菅谷和子
食べられし穴のありけり桜貝 飛岡光枝
身ごもれる埴輪の女目借時 大場梅子
眠たげな春の筍掘りにけり 斉藤真知子
無残なり何もかもけふ春らしく 長谷川櫂
眩しさに目を閉じ入学写真かな 神戸秀子
・長谷川櫂選
【特選】
そこここに立てる十字架春野かな 米山瑠衣
一匹の心の鬼と花見せん 高橋真樹子
空へ身を投げ出して飛ぶ雀の子 夏井通江
空色の春風が吹く十六階 夏井通江
【入選】
蒲公英も十字架も踏み潰しゆく 米山瑠衣
甘茶寺きぶしの花のその奥に 神戸秀子
春の潮鳴つてヴィーナスうまれけり 菅谷和子
春泥を踏めばどこまで沈む靴 岡村美紗子
大国が小国呑みて行く春ぞ 大平佳余子
亡きひとの座を真ん中に花筵 ももたなおよ
眠たげな春の筍掘りにけり 斉藤真知子
木切れ二本十字に結はへ戦地の春 原京子
第二句座(席題:紫木蓮、燕)
・矢野京子選
【特選】
つばくらやここから「大和」見たと母 河本秀也
胸中に炎たちたり紫木蓮 大平佳余子
紫木蓮厨に今日は父が立ち 安藤文
初燕来りてわが空あらたまる 矢田民也
【入選】
たちまちに少女は老いぬ紫木蓮 菅谷和子
魚さばく手元鮮やか紫木蓮 飛岡光枝
紺碧の空に点あり初燕 ストーン睦美
大空を切り裂いて来る初燕 城山邦紀
朝練の少女見上げる初燕 菅谷和子
亡き母の齢を越えし紫木蓮 斉藤真知子
夕燕母待つ家のいまはなく 大場梅子
・長谷川櫂選
【特選】
あけぼのの空にちからや紫木蓮 高橋真樹子
生き生きて先の見えずや紫木蓮 上松美智子
戦場となりしをしらず燕くる 大平佳余子
【入選】
激流のしぶきかすむる燕かな 石塚純子
玄関を出るに燕の糞跨ぎ 斉藤真知子
莟めれば朝な夕なの紫木蓮 矢田民也
【相談】
かなり前から、近所の垣根越しに大きな夏蜜柑が垂れ下がっています。こんなに大きくなって夏まで保つのかな、とはらはらしています。歳時記には夏の季語とされていますが、冬あるいは春の季語にもなるような気がします。歳時記に従わなければなりませんか?
【回答】
たしかにそうですね。この問題を考える大前提として、まず次のことを念頭に置いてください。
科学的事実は文学とは異なること。科学と文学の間にいつも一線を引いておいてください。いいかえれば文学は科学的事実に縛られない。自由な文学においてはつねに創造力(想像力)こそ大事です。科学と文学は日本的リアリズムいわゆる写生を基本に置いてきた明治以降の俳句ではしばしば混同されがちですが、俳句も文学ですから科学的事実に縛られません。
歳時記にある季語についても同じことがいえます。科学に従うのであれば、亀鳴く、雪女などの季語はそもそもあってはならない。また朝顔は梅雨ごろから咲いているので夏の季語かというと秋の季語です。これが文学です。
問題の夏蜜柑は翌年の初夏に熟するので、そう呼ばれています。夏の蜜柑が珍しいからでもあり、その酸味が初夏にこそふさわしいからでもあります。温州蜜柑などふつうの蜜柑は秋から食べられますが、秋ではなく冬の季語にしているのと同じです。そもそも夏蜜柑と呼びながら冬や春の季語というのは変ではありませんか。
夏蜜柑の花も初夏の季語です。白い花と黄色の実がいっしょに木にある、これが夏蜜柑という季語の風景です。
早稲田大学生を中心にした劇団あはひから4月に「流れる」と「Letter」を東京芸術劇場シアターイースト(池袋)で上演しますというお知らせが届きました。
このうち「流れる」(作、演出=大塚健太郎)は能「隅田川」を題材に『おくのほそ道』や「鉄腕アトム」を大胆に融合させ、CoRich舞台芸術まつり!2019春で学生団体で初めてグランプリを受賞した作品の再演です。今回は東京芸術劇場が若手演劇団体を推薦する「芸劇eyes」での上演です。
劇作において『100分de名著 松尾芭蕉 おくのほそ道』、『古池に蛙は飛びこんだか』、『「奥の細道」をよむ』をはじめとする著書を参考にしたとあります。
劇団あはひは2018年、早稲田大学在学中のメンバーを中心に結成、能やシェイクスピア劇といった東西の古典をリミックスし、現代の新たな演劇として呈示しつづけています。2020年には演劇のメッカ下北沢の本多劇場で「史上最年少公演」をしました。
<公演概要>
劇団あはひレパートリー上演「流れる」と「Letters」
日程:2022年4月3日(日)〜10日(日)
会場:東京芸術劇場シアターイースト(〒171-0021 東京都豊島区西池袋1-8-1)
「流れる」
原案:松尾芭蕉「おくのほそ道」
作・演出:大塚健太郎
出演:上村聡 中村亮太 鶴田理紗 踊り子あり 古瀬リナオ
そこは隅田川のほとり。
松尾芭蕉が、弟子を伴ってまさに旅に出立しようとしている。のちに「おくのほそ道」と題され、紀行文学の傑作として語り継がれることになるその旅は、舟の出航の遅れによって未だ始まっていない。
舟を待つ芭蕉たちが出会うのは、ロボットの少年や、正体不明の女。彼女らと過ごすうちにやがて立ち現れるのは、ある哀しい真実でー。
「Letters」
作・演出:大塚健太郎
出演:古瀬リナオ 安光隆太郎 渋谷采郁 松尾敢太郎
公演日程:2022年4月3日(日)〜10日(日)
3日 18:00『流れる』
4日 19:00『流れる』
6日 19:00『Letters』
7日 19:00『流れる』
8日 19:00『Letters』
9日 14:00『流れる』/ 19:00『Letters』
10日 14:00『Letters』
全席自由(整理番号付き)
1作品料金 一般:4,000円 U25:2,500円 高校生以下:1,000円
2作品セット券:6,000円
飯田蛇笏、龍太ゆかりの山廬では第8回碑前祭の俳句を募集しています。山廬文化振興会主催、山梨県共催。
・B5用紙に2句(自作未発表)を書いて、6月30日(木)必着で碑前祭事務局へお送りください。郵便番号、住所、氏名、電話番号を明記。
・選者=井上康明、黒田杏子、瀧澤和治、長谷川櫂、飯田秀實
・投句料=1000円。郵便振替、現金書留、定額小為替。
・発表=10月2日(日)碑前祭
・投句の送り先、問い合わせなど、詳しくは山廬のホームページを。
・意味不明の句多すぎ。
・第一にわかる句であること。
・第三者の目で見直すこと。そこから推敲がはじまる。
・ただし説明にならないように。
・俳句は詩(文学)であることをお忘れなく。
・旧かな、めちゃくちゃ、自分で。
【特選】
九十余歳母に半膳菜飯かな 宮城 長谷川冬虹
・歳、不要。
春昼や画面の向うから戦車 茨城 馬場小零
花いつさい捨てて静かな椿かな 東京 神谷宣行
・椿の木
縄文のひとみな裸足春の泥 東京 長井亜紀
一頁目の一行目一文字春 東京 長井亜紀
春の雪ほどの重さを納骨す 神奈川 三玉一郎
春寒し言はれた通り拾ふ骨 神奈川 三玉一郎
村一つ飲み込む雪崩あと静寂 新潟 高橋慧
なにがなしあはれ二月の昼の雪 長野 金田伸一
鳥獣供花を手に手に涅槃像 京都 佐々木まき
戦争へ続く空あり白木蓮 和歌山 玉置陽子
君を知る前の渚へ朝寝かな 和歌山 玉置陽子
涅槃図や花の涙の溢れをり 和歌山 玉置陽子
第一句座
・矢野京子選
【特選】
ほんたうに鬼はゐたんだ涅槃雪 飛岡光枝
愚かさに春暗転の世界かな 斉藤真知子
戦争と平和のはざま雛流る 大平佳余子
大渦潮海をゑぐりて動くかな 長谷川櫂
【入選】
からつぽの蛤骨の音したり 長井亜紀
きさらぎや熨斗書くための手をぬくめ 神戸秀子
げんげ田に遊び百年過ぎにけり 石塚純子
ほんたうは見たこともなき松露掘る 斉藤真知子
マスクして皆んなで歌ふ卒業歌 安藤文
渦潮といふ大いなる静寂かな 長谷川櫂
空と麦の国は戦場春嵐 ストーン睦美
国境へ春まだ痛き川渡る 飛岡光枝
妻の読む本盗み見る春炬燵 河本秀也
春の水光をすくひ顔洗ふ 夏井通江
雛納めこの世の塵を払ひつつ 飛岡光枝
大根の穴ばかりなる畑を打つ 米山瑠衣
逃げられぬやふにつつかん蕨餅 高橋真樹子
俳諧に卒業はなし骸まで 大場梅子
母追つて風となりゆく仔馬かな 菅谷和子
木道とんとん弾み子が行く春の山 石塚純子
目貼り剥ぐこの世の戦禍見据ゑんと 菅谷和子
連翹の枝にびしばし打たれけり 飛岡光枝
・長谷川櫂選
【特選】
くたびれし弁当箱と卒業す 矢野京子
ミサイルの飛ぶ大空を燕ゆく 安藤文
空と麦の国は戦場春嵐 ストーン睦美
戦争と平和のはざま雛流る 大平佳余子
龍天に昇り憤怒のトルストイ ももたなおよ
【入選】
げんげ田に遊び百年過ぎにけり 石塚純子
ひな祭り戦車は侵攻し続けり 夏井通江
ビニールの袋くもれる春子かな 神戸秀子
マスクして皆んなで歌ふ卒業歌 安藤文
大根の穴ばかりなる畑を打つ 米山瑠衣
流氷の軋む嘆きを凍の中 城山邦紀
第二句座(席題:残雪、梅の花)
・矢野京子選
【特選】
行く道の氷るとも雪残るとも 長谷川櫂
森閑と心の奥に残る雪 長谷川櫂
白梅のごとき人とはなれぬまま 斉藤真知子
【入選】
マスク取り胸いっぱいに梅の香を 城山邦紀
残雪の汚れ踏みゆく山開き 石塚純子
残雪を集めて夢中幼き子 林弘美
雪残る山を仰ぎつ出帆す 飛岡光枝
雪残る名前を知らぬ山ばかり 斉藤真知子
梅いちりん咲いて梅子と名づけられ 大場梅子
梅園のなかにちひさき天満宮 矢田民也
梅三分開きてのちのはやさかな 石塚純子
母の忌や母の紅梅いま見頃 ももたなおよ
・長谷川櫂選
【特選】
胴ぶるひせしや古木の梅の散る 神戸秀子
梅いちりん咲いて梅子と名づけられ 大場梅子
飛梅のけさ大空へ吹雪けり 飛岡光枝
【入選】
黒く深く戦車の轍残る雪 河本秀也
残雪の象のごとくや横たわり 高橋真樹子
梅の花また一人来て立ち止まり 矢野京子
雪残る名前を知らぬ山ばかり 斉藤真知子
苔むしてなほも咲きつぐ臥竜梅 大場梅子
梅三分開きてのちのはやさかな 石塚純子
第一句座
・長谷川冬虹選
【特選】
春の声エレベーターに吸ひ込まる 武藤主明
見つめられ背筋を伸ばす雛かな 辻奈央子
春の雪そのただ中へ出棺す 三玉一郎
雛には聞かせたくなき話かな 辻奈央子
【入選】
三代でやんややんやと雛飾る 辻奈央子
春の雪掃けば除染の土現るる 宮本みさ子
生き死にの一書読み了ふ梅真白 上村幸三
パンの耳残す言ひ訳寒施行 武藤主明
大いなる春に呼ばれて父逝けり 三玉一郎
とんがつた彼女のヒール春めける 伊藤 寛
原発の嘘で固めし凍土壁 武藤主明
つまんなささうにしてゐる鶯餅 長谷川櫂
地虫出てミサイルの雨見たりけり 川辺酸模
春光を丸呑みせんと大欠伸 谷村和華子
・長谷川櫂選
【特選】
突然の雪に埋もれて蕗の臺 阿部けいこ
雪の音立てて人来る忌中かな 三玉一郎
聖火消えにはかに砲火春嵐 長谷川冬虹
地虫出てミサイルの雨見たりけり 川辺酸模
太々と残りし骨の余寒かな 三玉一郎
すみれ咲くたばしる牛の尿浴びて 齋藤嘉子
いくたびのゲルニカいくたびも三月十日 鈴木伊豆山
【入選】
三メートルの雪にことばもなかりけり 那珂侑子
この十年泣いて笑うて雛あられ 長谷川冬虹
春の雪掃けば除染の土現るる 宮本みさ子
生き死にの一書読み了ふ梅真白 上村幸三
淡雪やぬくき骨壺葬れり 佐伯律子
大いなる春に呼ばれて父逝けり 三玉一郎
春の日を父を亡くした妻とゐる 三玉一郎
原発の嘘で固めし凍土壁 武藤主明
雛段へ遅れて来たる牛車かな 武藤主明
予備役兵妻に挿頭ししすみれ草 齋藤嘉子
春の雪そのただ中へ出棺す 三玉一郎
寒雷や年輪緊る檜葉大樹 及川由美子
春光を丸呑みせんと大欠伸 谷村和華子
天空へ雪の轍の交はらず 武藤主明
マンホールの蓋の花柄雪間かな 及川由美子
仰け反りてなほ日を欲りて片栗は 鈴木伊豆山
春雷や闇壊れ闇静もりぬ 上村幸三
雑木山つかまる枝も芽吹きかな 伊藤 寛
妻の雛一段一段買ひ足せり 長谷川冬虹
龍太忌を修す山々春の声 上村幸三
弟に部屋明け渡し卒業す 佐藤和子
第二句座(席題:落とし角、菜飯、万作)
・長谷川冬虹選
【特選】
さつきまで脈打ちたるか忘れ角 及川由美子
万作や越後へ続く塩の道 武藤主明
万作や試験終へたる子らの声 川辺酸模
【入選】
なかなか取れぬ心の角や落し角 森 凛柚
落し角吹かれて笛となりにけり 石川桃瑪
人の手の入らぬ山や落し角 川辺酸模
ややありて鹿跳ねまはる落し角 伊藤 寛
角落とし翁のやうになりし鹿 上 俊一
まんさくや二軒減りたる隣組 伊藤 寛
波洗ひ月が磨きし鹿の角 齋藤嘉子
・長谷川櫂選
【特選】
さお鹿の落ちたる角に眼もくれず 上村幸三
戦争や母のつくりし菜飯くふ 上村幸三
さつきまで脈打ちたるか忘れ角 及川由美子
けだるさや左の角はまだ落ちず 齋藤嘉子
菜飯食ふ何の葉つぱかわからねど 辻奈央子
【入選】
遠き日の戦の匂ひ菜飯かな 甲田雅子
うち振るや大鹿の角いま落ちん 上村幸三
落し角吹かれて笛となりにけり 石川桃瑪
鹿は角落として人を離れけり 宮本みさ子
人の手の入らぬ山や落し角 川辺酸模
鮮やかな緑が馳走菜飯かな 佐藤和子
万作を焼いて丸めて樏に 武藤主明
茎立を摘まんできては菜飯かな 齋藤嘉子
まんさくの花を喜ぶ小川かな 平尾 福
弁当へ小さくにぎる菜飯かな 阿部けいこ
杣人の小屋に並ぶる落し角 阿部けいこ
菜飯さへ食へざる頃の懐かしき 石原夏生