『広島・長崎・沖縄からの永遠平和詩歌集』(コールサック社)が刊行されました。戦争と平和を詠む詩人、歌人、俳人269人の作品集です。八月の本棚の一冊に。
KAI
第1回「東北大学 紅葉の賀 高校生俳句賞」作品募集
東北大学文学部は、本年より「東北大学 紅葉の賀 高校生俳句賞」を募集します。
応募資格は高校もしくは高専(1〜3年)在学中の方です。1人2句まで投句できます。締切は9月30日、所定の応募フォームから、オンラインで投句してください。発表は11月3日です。
選者は渡辺誠一郎氏(宮城県現代俳句協会会長)と長谷川冬虹です。お知り合いの高校生に是非ご応募を呼びかけください。
投句先含め、詳細は、以下をご覧ください。(長谷川冬虹)
https://www.sal.tohoku.ac.jp/jp/collaboration/momiji_hs.html
《故郷の肖像》「海の国の物語」③
7月11日(木)の熊日新聞に連載「故郷の肖像」第1章「海の国の物語」③が掲載されました。青木繁「わだつみのいろこの宮」、「火の国」の名前の由来をめぐって。
次回は8月8日(木)の予定です。毎月第2木曜日に掲載されます。
7月6日(土)きごさい+ 雨宮弥太郎さん「硯がひらく世界」
さまざまなジャンルから講師をお迎えして季節や文化に関わるお話をお聞きする「きごさい+」、今回の講師は、甲斐雨端硯本舗13代目硯匠 雨宮弥太郎さんです。どうぞぜひご参加ください。講演の後、句会もあります。
日 時 : 2024年7月6日(土) 13:30~16:00
演 題 : 硯がひらく世界
講 師 : 雨宮 弥太郎 (あめみや・やたろう)
*プロフィール
甲斐雨端硯本舗13代目硯匠。1961年、山梨県鰍沢元禄3年(1690年)より硯制作に携わる弥兵衛家に生まれる。子供時代より芸術への憧れが強く東京藝術大学彫刻科に入学。1989年 同大学院を修了。1990年より日本伝統工芸展に出品をはじめ、現在日本工芸会正会員。硯を現代彫刻として制作している。2013年米国フロリダ州森上博物館「Contemporary KOGEI Styles in Japan」、2017年奈良薬師寺「平成の至寶八十三選」展、日本橋三越にて個展など出品している。
*講師からのひと言
硯は墨を摩るための道具にとどまらず 硯に向かい墨を摩るうちに 心を鎮め自分の内面と向き合うための道具であると考えています。いわば〝精神の器〟として現代の造形としての可能性を感じています。悠久の時間を経てきた原石を削り磨くというシンプルな制作過程の中に自分の培ってきたものが形に宿ると考えています。硯に向き合うことで自分を開放し宇宙のリズムと共鳴する。私には俳句も季語という魔法の鍵の助けを借りて自分の内面に大自然をかたちづくるというイメージがあります。硯について語りながら〝創造=想像すること〟について考える事ができたらと思っております。
*2024年7月6日(土)13:30~16:00(13:15~ Zoom入室開始)
13:30~14:45 講演
14:50~15:20 句会(選句発表)
15:20~16:00 西川遊歩(きごさい編集委員)との対談、質疑応答
*申込み案内
1) 参加申し込み 6/27(木)まで: ここを<span style=”color: #ff0000;”><a style=”color: #ff0000;” href=”https://kigosai.sub.jp/bs/?page_id=30633″><strong>クリック</strong></a></span>して申込みフォームからお申込みください。
2)参加費:きごさい会員:1,000円 会員外:2,000円 会費の振込先は自動確認メールでお知らせします。–>
ズームのURL、句会の入力フォームのURLは、申込みをされた方に7/2頃までにメールで配信致します。かならずご確認ください。
句会:当期雑詠5句 前日投句です。選者:雨宮弥太郎、西川遊歩、長谷川櫂
3)前日7/5(金) 17時までに所定のフォームから投句。ただし句会の参加は自由です。
4)ズームを使ったオンライン講演会です。6/27(木)までに参加申し込みをして、7/2頃メールで配信するズーム入室URLなどの案内をご確認いただかないと、当日視聴できません。よろしくお願いいたします。
ネット投句(2024年4月30日)特選
常節をあはびの子だと笑ふ人 | 神奈川 | 片山ひろし |
うららかに伸びする猫の長さかな | 石川 | 松川まさみ |
小綬鶏のちよつとこいとや木下闇 | 静岡 | 湯浅菊子 |
母の息いつぱい詰めて紙風船 | 愛知 | 稲垣雄二 |
鯉幟吹きあまる尾に力あり | 大阪 | 安藤久美 |
牛蛙恋句またもやボツとなり | 大阪 | 木下洋子 |
ほぐれつつ火柱となる牡丹かな | 和歌山 | 玉置陽子 |
*入選は「ネット投句」をごらんください。
《500句》夏井通江
『長谷川櫂自選五〇〇句』を読んで初期の句の繊細さにうたれた。季語の取り合わせの新鮮さや俳句形式を熟知した言葉選びに感心させられた。
家中の硝子戸の鳴る椿かな 『天球』
夏めくやひそかなものに鹿の足 『天球』
『蓬莱』になると、視線を長く風景を大きく捉える傾向がでてきた。
淡海といふ大いなる雪間あり 『蓬莱』
『虚空』になると、死を見つめた句や苦しみを軽やかに捉える句がでてくる。またスパンの長い句が並ぶ。
みなし子に妻はなりけり鳳仙花 『虚空』
悲しみの底踏み抜いて昼寝かな 『虚空』
そして『震災句集』になると新境地が現れる。「俳句はなんでも書けなければならない」という信念のもと、例えば虚子の「戦争で俳句は何も変わらなかった」と言うような言葉とは対極をなす、現実の苦しみに切り込んでいく句を発表された。今、時を経てみてみると櫂先生の一大特色をなしている。俳句界も豊かにしたことが良くわかる。
『沖縄』でも、沖縄という地に想像力を駆使し、透徹した句境を示された。
『太陽の門』でも、死や被災地の記憶を人々の心になって表現し得ておられる。
初盆や帰る家なき魂幾万 『震災句集』
玉砕の女らはみな千鳥かな 『沖縄』
子の髑髏母の髑髏と草茂る 『太陽の門』
長く読み返し続けたい本であった。
朝カル講座「長谷川櫂 自選500句を語る」
東京新宿の朝日カルチャーセンターで7月15日(月・海の日)、50周年記念講座「長谷川櫂 自選500句を語る」が開かれます。
今回は新宿の教室で話しますが、ズームでも参加できます。詳細はリンク先のホームページをごらんください。
https://www.asahiculture.com/asahiculture/asp-webapp/web/WWebKozaShosaiNyuryoku.do?kozaId=7244115
《500句》海のはらわた 松川まさみ
『自選五〇〇句』において、俳句に何が開かれたかを明らかにしたい。今年の『古志』三、四月号の長谷川先生の鮟鱇の句をきっかけに解りかけてきたことがある。
鮟鱇は己が重さにぐつたりと
鮟鱇は口のみとなり笑ひけり
笑ひつつ鮟鱇煮ゆる鍋の中
鮟鱇は海のはらわた煮ゆるなり
この中で「海のはらわた」が異質である。
日常生活や体験、あるいは眼前の景を鮮しい言葉で詠むという俳句ではない。むしろそこから離れ抜け出たときに、ふっと感じる何か、すっとよぎる気配。まだ言葉にならない感覚ーそれを内面化させ、きちんと自覚して言語化する。そして詠む。「海のはらわた」にはそういう流れがみえる。
多分それは、見たことも聞いたこともない、独自の言葉。それでいて読み手が深く頷く俳句。つまり読み手の中にも言語化されていないその感覚があって、俳句を読むことによって呼び起こされるということ。『自選五〇〇句』には、そういう俳句が打ち立てられる過程が示されている。
はじめからそれはあった。
春の水とは濡れてゐるみづのこと
深山蝶飛ぶは空気の燃ゆるなり
それが『五〇〇句』の「現在」になると、色調もとりどりに濃密に現れてくる。
さまざまの月みてきしがけふの月
という独白、嘆息にはもちろん、
大宇宙の沈黙をきく冬木あり
天地微動一輪の梅ひらくとき
という叙景句とみえる句にも「海のはらわた」が示されている。
青空のはるかに夏の墓標たつ
夏空の天使ピカリと炸裂す
暗闇の目がみな生きて夜の秋
紅や炎天深く裂けゐたり
培った想像力と言語量が土台にあると知れば、私はこれまでの怠慢を又も恥じ入るばかり。『五〇〇句』(読み手として力不足を感じる句が並ぶ。それは楽しいこと)を手に、私なりに歩むより他はない。
《500句》「長谷川櫂」との対話 猪口布子
私が長谷川櫂を読み出したのは昨年(2023年)の秋からで、最初に読んだ句集は『太陽の門』。詠む素材の幅の広さ、自然詠の句柄の大きさ、卓抜な比喩、透徹した把握・・、驚きに満ちており、夢中で読んだ。
次に『九月』を読み、『震災句集』を読んだ。この時点で、句集を遡るのではなく、第一句集から順を追って読むことを計画した。その理由は、最初からこんなに風に詠めたのか、こんなに幅広く、自由自在だったのか、ということを探りたかったから。『古志』を読み、『天球』を読もうというところで、『長谷川櫂 自選500句』の刊行となった。
自選句を先に読もうかとも思ったが、各句集を読み、私の好きな句・感銘を受けた句を選び、その後にその句集のパートを読むことにした。やはり第一句集から読んでいくという計画は私には大事であり、その遂行を有意義なものにするためには、極力先入観を持たずに一つ一つの句集に当たっていきたいと思ったからだ。
現時点で読んでいるのは『古志』『太陽の門』のパートだが、自選と私の選を比べるのはたいへん楽しい。選が重なればなんとなく嬉しく、異なっていれば改めて読み、考える。著者と対話しているような気になる。
春の水とは濡れてゐるみづのこと 『古志』
いつぽんの冬木に待たれゐると思へ 『古志』
鷹消えて破れしままの雪の空 『古志』
雪の夜の新妻といふ一大事 『古志』
山一つ篩にかけて花ふぶき 『太陽の門』
アメリカの男根そびゆキノコ雲 『太陽の門』
炎天や死者の点呼のはじまりぬ 『太陽の門』
滅びゆく日本の挽歌「アステイオン」100号
サントリー文化財団編集の雑誌「アステイオン」が創刊100号を迎えました。
今の時代の断面図ともいうべき1冊です。「滅びゆく日本のレクイエム」の趣きがあります。