ネット投句(2020年7月15日)選句と選評
・何よりも心を打つ句を。そのためには心の据えどころが肝心。方法、文法など瑣末な問題はすべてそのあとをついてくる。
・旧かなの場合、特別の本を読む必要はありませんが、怪しいと思ったら必ず辞書を引いてください。小さく旧かなが書いてありまあす。ネットの辞書にはありません。
【特選】
ウポポイや言祝ぐやうに樺の花 01_北海道 高橋真樹子
深閑と留守か居留守か蟻地獄 07_福島 渡辺遊太
家といふものの儚く出水かな 12_千葉 麻生十三
大降りを喜ぶ蓮の広葉かな 14_神奈川 金澤道子
草取りて空つぽになる頭かな 14_神奈川 原田みる
滑り台すべる子鴉末恐ろし 14_神奈川 那珂侑子
花野行くわれは学生大雪山 14_神奈川 伊藤靖子
昼寝覚やつと我が家に辿り着く 14_神奈川 那珂侑子
雨戸開く音を覚えし目高かな 14_神奈川 那珂侑子
存外に不愛想なる目高飼ふ 17_石川 岩本展乎
呼ぶ声のまだ遠かりし昼寝覚 23_愛知 野口優子
草原を過ぎる揚羽の思ふこと 27_大阪 山中紅萼
雷や鴟尾の隔つる西東 29_奈良 喜田りえこ
炎天へ腹かつさばく鰯かな 29_奈良 喜田りえこ
今生の紅来世の白蓮花 29_奈良 喜田りえこ
ひきこもる一人暮らしに咲く風蘭 34_広島 三好芳枝
鯉の背を目高の群の流れゆく 37_香川 曽根崇
したたかに生きてしわしわソーダ水 42_長崎 百田直代
【入選】
廃坑にかの世のこゑや青嵐 01_北海道 高橋真樹子
あを鳩の阿呆阿呆と囃しよる 01_北海道 芳賀匙子
水無月の水輪奏づるシンフォニー 01_北海道 柳一斉
・水無月(今の七月)の語感、確認を。
音のなく雲移りゆく植田かな 01_北海道 柳一斉
オンライン授業を加へ夏期講座 03_岩手 川村杳平
・ご報告で終わらないように。とくにほかの2句。
手の中で逝く鳥哀れ走り梅雨 04_宮城 大内美保
読書てふ果てなき旅路雲の峰 04_宮城 長谷川冬虹
タワービル崩るるごとく昼寝覚 07_福島 渡辺遊太
犬死せり我が手に暑き尿置いて 07_福島 渡辺遊太
・熱き
決断は秘してもらさず心太 11_埼玉 園田靖彦
・何か不明。
新しき読み手現われ一茶の忌 11_埼玉 佐藤森恵
・現はれ
荒梅雨や画面流るる泥の川 11_埼玉 上田雅子
巻貝は波の形見よ夏の雲 11_埼玉 上田雅子
てふてふと見紛ふ産着麻の花 12_千葉 菊地原弘美
・麻の花、余計。
はやばやと父母の座にゐる霊迎 12_千葉 若土裕子
・座にあり
生き延びし特攻の叔父海紅豆 12_千葉 池田祥子
・海紅紅、ありきたり。
亡き姉の泰山木や花咲けり 13_東京 永井奈緒
警備員赤子のやうな昼寝かな 13_東京 岡田栄美
入院の荷に加へたし竹婦人 13_東京 長井亜紀
夕立や土をたたゐて日の匂 13_東京 楠原正光
今朝の卓友の梅ジャム加はりて 13_東京 堀越としの
・加へけり。主体として生きているかの問題。
新茶汲む味や香りや口々に 13_東京 堀越としの
これがまあ首都の選挙か梅雨ぢめり 13_東京 櫻井滋
・じ
コロナ禍や扇とじたり広げたり 13_東京 櫻井滋
・ぢ
向日葵は蕾そろひて待つ炎天 14_神奈川 伊藤靖子
受診待つ緑に雨の降る見つつ 14_神奈川 伊藤靖子
とりあえず待てぬ男に冷奴 14_神奈川 遠藤初惠
・あへず
梅雨寒や午後に少しの眠りぐせ 14_神奈川 遠藤初惠
首里城は焼け落ちしまま花梯梧 14_神奈川 金澤道子
・花梯梧、付きすぎでしょう。
我もまた訝しきもの鴉の子 14_神奈川 金澤道子
もう秋の声しかしない喉仏 14_神奈川 三玉一郎
夏帽子去年の夏が箱の中 14_神奈川 三玉一郎
向日葵や引き潮に道あらはるる 14_神奈川 松井恭子
蟹の背に蟹重なりて蟹転ぶ 14_神奈川 水篠けいこ
半夏生草咲く仮の世にゐるような 14_神奈川 中丸佳音
河鹿啼き夕餉が迫る山の宿 14_神奈川 土屋春樹
捨て畑に地力みなぎる竹煮草 14_神奈川 湯浅菊子
万緑といへども緑とりどりに 14_神奈川 服部尚子
・季語の解説、しなくていい。
東京をつつむ憂鬱朔太郎忌 15_新潟 安藤文
・朔太郎忌、付きすぎ。
流されしマスクぽつんと出水かな 15_新潟 安藤文
・ぽつんと、マスクの感じしない。
五月雨に甲斐は遠けれ道祖神 17_石川 花井淳
・五月雨の甲斐は遠しと
梔子の香や音立てて夕刊来 17_石川 花井淳
情熱の嵐再び冷奴 17_石川 花井淳
・再び、中途半端。
荒梅雨や山川すべて膨潤す 20_長野 大島一馬
・季語の解説、不要。
兄貴ら「内向の世代」啼けぶつぽふそう 20_長野 柚木 紀子
収穫せし辣韮ひとつづつ洗ふ 21_岐阜 夏井通江
夫つくりし辣韮漬けなり配りけり 21_岐阜 夏井通江
濁流の削る崖烏瓜の花 21_岐阜 古田之子
金蛇の清き姿や山がれ地 21_岐阜 古田之子
大出水人新世を我等生く 21_岐阜 三好政子
恋心閉じ込めてあり花氷 21_岐阜 梅田恵美子
風景画ところどころに木下闇 22_静岡 池ケ谷章吾
・ところどころ、無駄。
脳味噌を開きにしたや梅雨晴間 22_静岡 池ケ谷章吾
梅雨出水のすべてを呑んで海静か 23_愛知 稲垣雄二
・上五、理屈。
出水後蝶の水飲む泥地獄 23_愛知 稲垣雄二
・同然。
ごきぶりもウィルスもゐて地球かな 23_愛知 臼杵政治
気立てよし化粧やゝ濃し花カンナ 23_愛知 宗石みずえ
夏草は死者を悼みて戦ぎをり 23_愛知 青沼尾燈子
寝床にて昔を思ふ梅雨の音 23_愛知 青沼尾燈子
咲く花と落ちる花あり白木槿 24_三重 乾 薫
雨あがり白き木槿に蜂来る 24_三重 乾 薫
晩学も時には蓮の浮葉かな 26_京都 佐々木まき
兄の夢弟の夢熱帯魚 26_京都 佐々木まき
これこれと母に団扇で叱られし 26_京都 佐々木まき
戻りたくなき現世や昼寝覚 26_京都 氷室茉胡
うねりつつ黒潮さし来夏茶碗 27_大阪 安藤久美
検温で始まる朝や濃紫陽花 27_大阪 高角みつこ
荒梅雨といふよりこれは狂ひ梅雨 27_大阪 高角みつこ
愕然と祇園囃子のなき年よ 27_大阪 高角みつこ
夜光虫波間に私の骨光る 27_大阪 山中紅萼
老犬や梅雨の晴れ間を引かれ行く 27_大阪 内山薫
避けられて気づくやマスク忘れしを 27_大阪 内山薫
梅雨出水いつもの川がおそろしき 27_大阪 木下洋子
白髪や洗へば黒く濡れてをり 27_大阪 澤田美那子
俳諧の志あり蛞蝓 27_大阪 齊藤遼風
己が角振り回してやなめくじら 27_大阪 齊藤遼風
梅雨寒や人を隔てて人を恋ひ 28_兵庫 加藤百合子
・ふ
この夏はことに愉しき鳥の声 28_兵庫 加藤百合子
遠雷や心の奥の閑かなる 28_兵庫 加藤百合子
白百合の膨らみかけて供花に剪る 28_兵庫 千堂 富子
上潮に波立つ河口晩夏光 28_兵庫 髙見正樹
中空に青き半月秋近し 28_兵庫 髙見正樹
大木に満つる花合歓池の端 29_奈良 田原春
黒揚羽はばたきながら蜜を吸ふ 29_奈良 田原春
ふるさとの山河よ桃のかぐはしく 33_岡山 齋藤嘉子
・桃はかぐはしき
わが一生原爆忌ありコロナ禍あり 34_広島 三好芳枝
夜濯のマスク満ち欠けしたる月 37_香川 丸亀葉七子
夏薊杖忘れ来しこと忘れ 37_香川 丸亀葉七子
梅雨入穴遠回りして遍路寺へ 37_香川 丸亀葉七子
丈ながき 大和撫子 いただきぬ 37_香川 元屋 奈那子
偶々の生をながらへ星祭 40_福岡 北井乃峰子
捨てられてマスク汚物と化す夏野 40_福岡 北井乃峰子
夏草の沖からこつと戦闘機 42_長崎 川辺酸模
まくなぎの吶喊止まぬ夕べかな 42_長崎 川辺酸模
師を選び我ら炎天歩みける 44_大分 山本桃潤
・ゆく
これからも不器用ならん蟇 44_大分 竹中南行
膝小僧アカチン丸く裸足の子 46_鹿児島 大西朝子
南風時化や船噛む波もシナの海 99_不明 横山直典
木槿咲く嫁は隣りの娘とや 99_不明 佐藤一郎
梅雨寒やホットコーヒー焙煎で 99_不明 森徳典
草の虫しづかに眠る梅雨滂沱 99_不明 神谷宣行
・眠れ