古志金沢ズーム句会(2021年3月21日)
第一句座(兼題:飴山忌、または当季雑詠)
・鬼川こまち選
【特選】
小糠雨やまぬ能登路や飴山忌 中野徹
飴山忌はるけきものに麹菌 泉早苗
花も葉も濡れてゐるなり桜餅 長谷川櫂
泥の子の蝌蚪の国より戻りけり 田村史生
大揺れの花が花打つ白木蓮 稲垣雄二
俤を追ふその弟子や飴山忌 泉早苗
人あはれ鯥のあはれを追ひにけり 趙栄順
蕗味噌のほろりと苦き飴山忌 佐々木まき
近江では近江の酒を實の忌 花井淳
白山を望むバス停飴山忌 佐々木まき
加賀の空うるみ初めたり實の忌 趙栄順
くわんおんの湖国は朧飴山忌 泉早苗
【入選】
蜥蜴出て泡立ち初めしこの世かな 梅田恵美子
雛愛づる男ありけり飴山忌 安藤久美
金沢の茶房の二階飴山忌 高橋慧
葦の根へ諸子寄るころ飴山忌 玉置陽子
實忌やほこほこほぐす土づくり 酒井きよみ
淡海はなごりの雪よ飴山忌 安藤久美
父母に逢ふて見たきや喜寿の春 山本桃潤
洗面の袖をもつ妻飴山忌 山本桃潤
モンローの頬のほくろや春爛漫 間宮伸子
根わけして水に映さん花あやめ 酒井きよみ
蕨採る今年も漬けん樽一斗 稲垣雄二
馥郁とかをる酵母や飴山忌 篠原隆子
田の神に団子を供へ實の忌 近藤沙羅
山越えてひびく汽笛よ飴山忌 篠原隆子
白山のぐんぐん溶けて行くや春 清水薫
白山の雪解はじまる飴山忌 梅田恵美子
菌の棲む梁や長押や飴山忌 密田妖子
けふ初花あすは飴山實の忌 長谷川櫂
飴山忌うぶな心が大事かな 趙栄順
鶴引くや瓢湖の空は瑠璃色か 田中紫春
けさ掻きて海すするごと石蓴汁 酒井きよみ
飴山忌あす夕顔の種蒔かん 間宮伸子
・長谷川櫂選
【特選】
葦の根へ諸子寄るころ飴山忌 玉置陽子
實忌に供へん能登の波の花 篠原隆子
白山のぐんぐん溶けて行く春よ 清水薫
笊に取る菜の花の青實の忌 花井淳
二人から始める家族桜餅 玉置陽子
【入選】
裏山の花をコップに實の忌 稲垣雄二
實忌やほこほこほぐす土づくり 酒井きよみ
父母に逢うて見たしや喜寿の春 山本桃潤
水の琴白山鳴らす雪解水 梅田恵美子
野に群れてわが牛たちの原発忌 鬼川こまち
蕨採る今年も漬けん樽一斗 稲垣雄二
大揺れの花が花打つ白木蓮 稲垣雄二
青竹を深く打ち込み垣繕ふ 酒井きよみ
おりいぶを一本植ゑむ飴山忌 高橋慧
屋根を葺く人日輪に立ちにけり 稲垣雄二
蕗味噌のほろろと苦し飴山忌 佐々木まき
千枚田水をゆたかに飴山忌 佐々木まき
客来ると庭の木の芽を木の芽和 酒井きよみ
白山の雪解はじまる飴山忌 梅田恵美子
酵母棲む梁や長押や飴山忌 密田妖子
水を押す春の力や池の鯉 密田妖子
飴山忌能登に優しき雨が降る 氷室茉胡
飴山忌うぶな心を大事かな 趙栄順
春霰の撥ねてあをあを展宏碑 泉早苗
お軸から毬の跳ねくる実の忌 鬼川こまち
能登は飴山忌いま芽起こしのころ 篠原隆子
實忌の盃満たせ手取川 密田妖子
白山のゆきげ風吹く飴山忌 篠原隆子
加賀の空うるみ初めたり實の忌 趙栄順
飴山忌あす夕顔の種蒔かん 間宮伸子
第二句座(席題:寄居虫、春塵)
・鬼川こまち選
【特選】
寄居虫のふたつ寄り添ふ忘れ潮 玉置陽子
白山の影は何処に春の塵 清水薫
人といふ大愚の器春の塵 玉置陽子
宿居虫は魚の夢をみてをらん 近藤沙羅
寄居虫の脱ぎし殻の上越えてゆく 安藤久美
宿借りの宿をとらるる怖さかな 趙栄順
やどかりも命一つや貝の殻 長谷川櫂
【入選】
やどかりの歩み行く先太平洋 清水薫
やどかりのやどなく走る大干潟 篠原隆子
春塵を一気に抜けてエレベーター 安藤久美
春塵に母は離さぬ傘一つ 佐々木まき
微苦笑の大仏様や春の塵 宮田勝
春塵や湯へムーミンの袋下げ 花井淳
春塵の傍若無人嘆く塗師 泉早苗
やどかりや社宅転々移り住み 密田妖子
寄居虫やこの身一つで嫁ぎ行く 氷室茉胡
春塵や月には風の吹かぬらし 田村史生
・長谷川櫂選
【特選】
やどかりの歩み行く先太平洋 清水薫
【入選】
丁寧に春の塵拭く形見の書 氷室茉胡
やどかりを獲りて秋刀魚の空き缶に 花井淳
春の塵雪くろぐろと覆ひたり 高橋慧
春塵の傍若無人嘆く塗師 泉早苗
寄居虫は寄居虫の殻越えてゆく 安藤久美